ずっと一緒に

「こりゃ、放課後は真っ直ぐ帰った方がいいかもな……」
「そうだね……」
 昇降口に並んで、残念そうに2人が外の様子を伺っていると、校門の方から走ってくる黒い大きな傘が見えた。
「うひゃー、すんごい雨! 急に強くなったね、靴死んだなーこれ!」
 やたらと楽しそうに入って来た小柄な姿は、傘が閉じるまですっかりその中に隠れてしまっていて、隣に並んでようやく、それが夕だと気が付くことができた。
 明らかに大きすぎる傘は、あえて選んでいるのだろう。
 足元以外、夕はどこも濡れている場所がないぐらいだった。
「おはよう、夕」
「おはよー。うわうわ2人もすごいことになってるねぇ。ってか皆そんな感じか、さすがに」
 周囲を見回せば、同じように突然の大雨にやられた生徒たちが、口々に悪態をつきながらすっかり水浸しの靴下を絞ったりしていた。
「夕も靴は守れなかった感じか」
「さすがにねー。こんなになるなら長靴とかで来れば良かったな」
「途中までは普通な感じだったのにな」
「ねー。って、俊樹それ」
 夕に指さされて、俊樹はビクリと体を震わせた。
 彼が示す先は二の腕の辺りで、何か、目に見える変化が起きたりしているのかと不安になりながら確認するも、幸い、特に変わった点はなさそうだった。
「カーディガンめっちゃ濡れちゃってるじゃん。脱いで乾かしといたら?」
 実際、俊樹も夕も上半身まで多少以上に濡れてしまっていたが、俊樹としては、カーディガンを脱ぐわけにはいかない事情があった。
「確かに、そのままだと体も冷えちまうし、脱いどけよ」
 陽道にもそう言われたが、笑って誤魔化すことしかできない。
 朝、着替える際に鏡を見て、明確に困ったことが1つあった。
 それは、制服のYシャツ越しに、木肌が透けて見えてしまう、ということだった。
 今までであれば、傷痕は透けて見えたとしても、大して気にならない程度だった。
 しかし、今回はさすがに、誰が見ても違和感が凄まじい。
 色味が人の肌とはまるで違うせいで、露骨に目立つのだ。
 聞かれて誤魔化すのにも限界があるし、見せたり誰かに相談できるようなものなら、真っ先に陽道を頼っている。
 誰にもバレたくない一心で着ているカーディガンだけは、脱ぐわけにはいかなかった。
 しかし、事実、濡れてしまった部分はしっとりと冷たく、このまま着続けるのも良くないとは感じていた。