ずっと一緒に

 しかし、虫取りに関しては彼よりもずっと好きで、よく取った虫が何なのか教えてあげては、得意げになっていた。
 なんという名前の虫か教えてあげると喜ぶ彼の姿を見て、もっと教えてあげよう、と図書館に通ったことさえある。
 元々好きだった虫がもっと好きになった理由の1つだった。
「じゃあ先に行くから、後から来いよ! 上の方に来たら引っ張ってやるから」
 彼はそう言って、すいすいと巨木を登っていってしまう。
 軽やかな身のこなしを、軽い羨望の入り混じった瞳でかつての自分が見つめていた。
 なぜか、彼が平然とやってのける姿を見ていると、自分にもできてしまうような気がした。
 できないかもしれない、という壁を気軽に飛び越えていってしまう彼の姿はいつも格好良くて、見ていると真似てみたい気持ちになるのだった。
 実際のところ、その結果できるようになったこともあれば、自分の不器用さに絶望することもあったが、勇気やきっかけをくれるのは、いつも彼だった。
「おーい!」
 あっさりと登り終え、樹上の太い枝に腰かけた彼が手を振っている。
 手を振り返して、すごい、と改めて感心しながら、かつての自分は巨木を見上げ、幹の出っ張りに手を伸ばした。
 そう、彼ができてしまったから、自分にも、できる気がした。
 彼が呼んでいるから、自分も行かなきゃと躍起になってしまった。
 その考えが大きな間違いだったと気付いたのは、全てが終わった後だった。
 巨木の下に散らばっている木片は、かつてそこに社か何かが立っていた名残のようで、何者かによって破壊されたのかなんなのか、実態は分からないが、折れたり釘が抜けてむき出しになったりしていて、とても危険だと、今であればすぐに気が付けた。
 あんなものが散らばる土地で木登りをして、落ちたりしたら、と思うと気が気でない。
 でも、幼い頃の自分たちにとって、それは背景の1部でしかなく、気にすることさえなかった。
 今からでも、止めるべきだろうか。
 そんなことを思っても、体は動かない。
 あくまでもこれは過去の記憶の再生であって、変えられるようなものではないのだと理解する。
 しかし同時に、止めるべきではない、とも俊樹は思う。
 だって、あれがあったから、彼は今も――
「……」
 俯きかけた俊樹が何者かの視線を感じて顔を上げると、いつの間にか、目の前に小柄な少年が立っていた。
 真っ白で、ずいぶんと細身の少年だった。