ずっと一緒に

 しかしやはり、自分の好きなことを、思う存分語れる時間というのもまた、大切なものなのだと、俊樹は改めて実感していた。
 専門的な知識が必要なものだったり、同じ趣味の人間同士だからこそ分かるような話をできるというのは、とても楽しいものだ。
 互いに知識の再確認をしているだけだったり、相手がどれぐらいのことを知っているのか探り合うというだけでも、あっと言う間に時間が溶けてしまう。
 そして、語れる相手、と分かった途端、両者の間にあった壁のようなものは、簡単に取っ払われてしまうのだ。
「明日も話したいな、いろいろ」
 俊樹は今からすでにわくわくしていた。
 何の話をしようか、何か話題になるようなもの、それこそ図鑑とか、昔取った虫のこととか、話してみようか。
 あれこれと明日のことを考える俊樹の横で、陽道は静かに、嬉しそうな俊樹の横顔を眺めていた。
 ビニール傘が反射する街灯の光でその目は俊樹からは見えていなかったが、そもそもとして、考え事に夢中の俊樹は、意味深な視線を向けられているなどとは露ほども思っていなかった。
「……朝はあんな、興味なさそうにしてたのにな」
 陽道にからかうように言われ、俊樹は少し赤くなりながら、笑って誤魔化した。
「あはは、だって、こんなことになるとは思ってなかったんだもん。逆にさ、最初からこうなったらいい、って思ってたらだいぶ変でしょ?」
「はは、そりゃそうだけどさ。クラスに来た時も俺に「話しかけに行かないの?」とか言ってたぐらいだったろ」
「それも、そうだけど……」
 返事をしながら、俊樹は少しだけ、前のめりになってしまっている自分を恥じた。
 確かに陽道の言う通り、急に浮かれ過ぎている部分はあるように思う。
 元々、気にしていないような態度を取っていたのに、同じ虫好きだと知って、テンションが上がり過ぎてしまった。
 しかしこれには、夕のフレンドリーさも大いに影響しているような気がした。
 気軽に接してほしい、という気持ちの現れなのかもしれないが、彼と話していると、前から何度も話したことがあるかのような錯覚すら抱いてしまいそうだった。
 初めて会ったような気がしないというか、数年前から友達だったかのよう、というか。
 もっとも、そう感じるのは、同じ趣味で気が合ったからなのかもしれないが、だとしても、俊樹としては不思議な感覚だった。
 友達を作るのが苦手だと思っていたのが嘘のように、彼とは、気楽に接することができたのだ。