ずっと一緒に

「自分で作ったのか、これ?」
「うん。昆虫標本キットみたいなのが100均に売っててさ。その時住んでた場所が山近くで、よく虫取りに行ってたんだよね。で、夏休みにこういうのやってみたいと思って、実際やってみたんだよ」
「すげぇな……」
 身体のどこも欠けていない、美しく整列したカブトムシやクワガタたち。
 カナブンやカミキリムシなど甲虫がほとんどだったが、男心をくすぐるようなラインナップに、俊樹だけでなく、陽道もテンションが上がっている様子だった。
「この辺もそこそこ森とかあるっぽいし、そのうちまた昆虫採集とかしたいな」
 そう言って笑う夕に、俊樹はパッと、表情を明るくさせた。
 高校生ともなると、さすがに虫取りに行くような人間は限られてくる。
 野山を駆け巡るのも、自然と触れ合うのも、小学生の頃まではずいぶんと普通のことだったが、中学、高校と学年が上がっていくにつれて、進んでそういった遊びをする人間は少なくなっていった。
 俊樹としても、怪我やあの日の事故の件がある以上、あまり危険なことはしないよう心掛けているものの、それでも、天気が良い日などにはよく近所に出向いて、生物観察に勤しんでいる。
 しかし当然ながら、一緒に行く人間はまずいなかった。
 そもそもとして、俊樹には友人がほとんどいない。
 小学生の頃などは仲良くしていた相手もそれなりにいたが、これも学年が上がるにつれて少しずつ減っていき、今では陽道ぐらいしか残っていない。
 そして、その陽道はと言えば、
「昆虫採集かー、昔はそれこそカブトムシとか、カマキリとか、平気で触ったりできたけどなぁ」
「今は無理?」
「見るのはいけても触るのは無理。他の虫はもっとダメ寄りだ」
 この通り、すっかり虫嫌いになってしまった。
 小さい頃はよく一緒に近所の森に入って虫取りをしたり、田んぼ周りの水路でザリガニ釣りをしたものだったが、もはや見る影もない。
 昔のように一緒に遊びたいとは思うものの、そうは言っても苦手なものを無理強いしたいわけでもないため、俊樹はここ数年、ずっと我慢していたところがあった。
 しかし今、そんな遊びに誘えそうな相手が現れた。
 これは俊樹にとって、あまりにも、衝撃的なことだった。
 もし本当に虫取りに行ったりしたいのなら、どうやって誘おうか。
 いや、まだ分からない。ただの社交辞令を言っているだけの可能性もある。