ずっと一緒に



「うっし、飯食い行こうぜ!」
 運動部の連中がデカい声と共に立ち上がり、食堂へと消えて行く。
 毎日見る光景だったが、習慣とは恐ろしいもので、今ではそれを聞かないと昼休みに入ったような感じがしなかった。
 すっかり人がまばらになった教室で弁当箱の包みを取り出していると、前の椅子を引いて座りながら、陽道がコンビニの袋を机の上に置いた。
「今日は何にしたの?」
「カツサンドと、コロッケパンと、ハムカツパン」
「揚げ物挟んだパンしかないことある……?」
 俊樹が思わずツッコむと、それを待っていましたとばかりに陽道はにやりと笑った。
「安心しろ、おかずもちゃんと揚げ物だ」
「何が安心なの?」
 唐揚げがいくつか入ったタッパーを取り出す陽道に、俊樹は我慢できず噴き出してしまった。
 妙にツボに入ってしまい、笑い声をあげる俊樹を見て、陽道はとても嬉しそうだった。
「よし、昨日のうちに仕込んできたかいがあったぜ」
「わ、わざわざこのボケのために唐揚げ作ったの……?」
「いや、夕飯に作っててさ。残りは昼に持って来ようとか考えてたら思いついたんだよ。で、夜中のコンビニにわざわざ走ったってわけ」
 妙な労力のかけ方に、俊樹はさらに笑いがこみ上げてきてしまった。
 笑い転げる俊樹を見て、陽道は満足げな表情でパンの袋を開けていた。
 相変わらず雨は降り続け、教室内は電燈をつけているというのにも関わらす、どことなく、暗く重たい雰囲気があった。
 そんな空気を振り払うような楽しげな俊樹の笑い声に、自然と、他の生徒たちの話し声もトーンが上がったように思えた。
 そんな中、ふと、2人の隣にやってきた人物がいた。
「ねえ、ボクも一緒に食べていい?」
 ひとしきり笑って、ようやく弁当の包みを開いた俊樹が顔を上げると、声の主は弁当の包みを見せてきた。
 座っている自分たちと、目線の高さがあまり変わらない。
 女子と比べてもずっと小さい姿はあまりにも違和感があり、俊樹は少し上に向けた視線を申し訳なく思いながら下げた。
「いいぜー。金木くん、だよな」
「夕でいいよ。ちなみに2人の名前、教えてもらってもいい? 名簿とか一覧表は見たけど、さすがにそれだけだと分かんなくてさ」
「俺が須賀陽道、んでこっちが」
「若月俊樹です、よろしくお願いします」
 丁寧に頭を下げる俊樹に対し、夕は「あはは」と笑い声をあげた。
「別に畏まらないでいいよ、ただのクラスメイトだし。まあ気持ちは分かるけど。初対面って、なんか同い年だって分かってても敬語使っちゃったりするよねぇ」
 机の横に椅子を持ってきて座ると、夕は笑いながら自分の弁当を開け始めた。
 明らかに運動部の人間が食べるような巨大な弁当箱が現れ、俊樹たちは目を丸くする。
「すげぇ食べるんだな」
「いやー、お腹空いちゃうんだよね。成長期だよ、成長期」