例えば、2人がまだ小学生だった頃。
俊樹が捕まえたカブトムシを、学校に持って来たことがあった。
虫籠に入れて得意げにクラスメイトたちに自慢するのはとても楽しく、クラスの男子たちがこぞって、そして女子の一部も一緒になって、赤褐色の甲虫を夢中で眺めた。
朝の時点でたくさんの生徒が集まり、普段目立つことのない俊樹は自分が人気者になったような気がして、とても嬉しくなったものだった。
授業中はさすがに机の上に置いておくわけにもいかず、先生の提案もあって、他のクラスの子たちも見れるようにと、カブトムシは虫籠ごと廊下に置いておくことになった。
しかし、それがいけなかったと当時を思い返して、俊樹は思う。
せめて、すぐに目のつく教室内に置かせてもらえれば、と。
朝の会が終わって、最初の授業が始まるまでの間、廊下に出るとたくさんの生徒が俊樹のカブトムシを見に集まっていた。
たくさんの生徒で賑わう様子を嬉しく思っている俊樹だったが、そのうちの誰かが唐突に叫んだ。
「あっ、逃げた!」
廊下に集まるたくさんの生徒たちで、籠の様子は俊樹にも分からなかった。
当時からすでに背の低かった俊樹からすれば、たくさんいる他の生徒たちは壁のようであり、彼らを掻き分けて中心に向かうことは難しかった。
「ど、どうしたの!?」
震える声で俊樹は生徒たちに声をかけるも、大半の子たちは状況を分かっていないようで、首を傾げるばかりだった。
慌てて皆を掻き分けて中心に向かおうとするも、彼らは自主的に退いたりはしてくれず、むしろ、何人かの生徒は涙目の俊樹を見て、いじわるな笑みを浮かべて通せんぼした。
「通してよ!」
叫ぶ俊樹に対して、目の前に立ちはだかった男子はにたにたと笑い、両手を広げて邪魔をする。
横を抜けようとしても、他の男子たちも悪ノリを始め、気付けば前に行きたい俊樹とその邪魔をする男子たちを、他の生徒たちが囲んで眺めるような形になっていた。
その間にも、俊樹は先ほど聞こえた声が気がかりで、辺りをきょろきょろと見回しては、カブトムシがどこかにいないか探し回っていた。
実際にはまだ籠の中にいるかもしれないし、誰かの手に渡っているかもしれない。
どうあったとしても、俊樹にとっては一大事だ。
前にも進めず、状況確認もできず、目の前に立ちはだかるのは自分よりずっと背の高い男子ばかり。
耐えきれず、俊樹の目から涙がこぼれそうになったその時、
「お、いたいた!」
俊樹が捕まえたカブトムシを、学校に持って来たことがあった。
虫籠に入れて得意げにクラスメイトたちに自慢するのはとても楽しく、クラスの男子たちがこぞって、そして女子の一部も一緒になって、赤褐色の甲虫を夢中で眺めた。
朝の時点でたくさんの生徒が集まり、普段目立つことのない俊樹は自分が人気者になったような気がして、とても嬉しくなったものだった。
授業中はさすがに机の上に置いておくわけにもいかず、先生の提案もあって、他のクラスの子たちも見れるようにと、カブトムシは虫籠ごと廊下に置いておくことになった。
しかし、それがいけなかったと当時を思い返して、俊樹は思う。
せめて、すぐに目のつく教室内に置かせてもらえれば、と。
朝の会が終わって、最初の授業が始まるまでの間、廊下に出るとたくさんの生徒が俊樹のカブトムシを見に集まっていた。
たくさんの生徒で賑わう様子を嬉しく思っている俊樹だったが、そのうちの誰かが唐突に叫んだ。
「あっ、逃げた!」
廊下に集まるたくさんの生徒たちで、籠の様子は俊樹にも分からなかった。
当時からすでに背の低かった俊樹からすれば、たくさんいる他の生徒たちは壁のようであり、彼らを掻き分けて中心に向かうことは難しかった。
「ど、どうしたの!?」
震える声で俊樹は生徒たちに声をかけるも、大半の子たちは状況を分かっていないようで、首を傾げるばかりだった。
慌てて皆を掻き分けて中心に向かおうとするも、彼らは自主的に退いたりはしてくれず、むしろ、何人かの生徒は涙目の俊樹を見て、いじわるな笑みを浮かべて通せんぼした。
「通してよ!」
叫ぶ俊樹に対して、目の前に立ちはだかった男子はにたにたと笑い、両手を広げて邪魔をする。
横を抜けようとしても、他の男子たちも悪ノリを始め、気付けば前に行きたい俊樹とその邪魔をする男子たちを、他の生徒たちが囲んで眺めるような形になっていた。
その間にも、俊樹は先ほど聞こえた声が気がかりで、辺りをきょろきょろと見回しては、カブトムシがどこかにいないか探し回っていた。
実際にはまだ籠の中にいるかもしれないし、誰かの手に渡っているかもしれない。
どうあったとしても、俊樹にとっては一大事だ。
前にも進めず、状況確認もできず、目の前に立ちはだかるのは自分よりずっと背の高い男子ばかり。
耐えきれず、俊樹の目から涙がこぼれそうになったその時、
「お、いたいた!」
