「遠巻きにされるよりかはいいんじゃないかな。すぐにクラスにも馴染めそうだし」
「そうだな、しばらくは騒がしくなりそうだけど」
ちら、と陽道が廊下の方を見ると、扉の辺りに他クラスの生徒がちらほら、様子を見に来ているようだった。
やはり誰でも、転校生というものには興味を持つものらしい。
「陽道も声かけてきたら?」
今朝、転校生の話題を出してきた辺り、当然彼のことが気になっているだろうと話を振ってみたが、どういうわけか、陽道の反応は鈍いものだった。
「うーん、俺はいいかな」
「どうして?」
「あの調子だと、順番待ちでもしなきゃ話せそうにないし、同じクラスのやつと話すのに順番待ちするなんてのも変だろ」
「まあ、それはそうかもだけど」
「数日もすれば自然と話せる機会も来るだろうし、その時でいいって」
やたらと淡白な陽道の反応に、なるほど、と俊樹は納得した。
朝の時点で気にしていたのも、今こうして心配がなくなったからほっといているのも、結局のところ、陽道なりの気遣いなのだ。
陽道は昔から、こうやってクラスを俯瞰して見て、友人同士の関係性を取り持つようなところがあった。
小学生の頃からずっと一緒にいるおかげで、俊樹はそんな姿を何度も見ている。
クラスで孤立しそうな人がいれば積極的に声をかけ、喧嘩が起きそうなら割って入ってでも場をとりなし、いじめが起きそうになると首謀者の興味を上手いこと逸らす。
俊樹は昔から大して目立たないタイプだったが、逆に、そのせいで目を付けられることも少なくなかった。
小学生の頃なんかは、大半の生徒が刺激に飢えているせいで、より顕著だったように思う。
比較的何もない、かと言って、遊び場が無限にあるわけでもない、俊樹たちの暮らす地域は田舎と都会の狭間にあった。
だからこそ、刺激に乏しい生活の中で楽しみを見出そうとした子供たちは、ドラマや映画の中で見たことがあるイベントを自主的に引き起こそうとした。
自発的な邪悪さから始まるいじめなんてものは、実はそんなに存在しない。
誰かがやっていたから、こんな話を動画サイトで見たから、アニメや漫画でやっているのを真似してみたくなったから……そんな軽い理由で、子供たちはいとも簡単に残酷なことをしてしまう。
後から過ちに気付くこともあれば、成長してから顧みることで自らの行いに苦悩する人もいるが、小さな頃にその間違いを認識できる人は少ない。
その点で言えば、陽道は昔から聡く、周りが良く見えている人間だった。
「そうだな、しばらくは騒がしくなりそうだけど」
ちら、と陽道が廊下の方を見ると、扉の辺りに他クラスの生徒がちらほら、様子を見に来ているようだった。
やはり誰でも、転校生というものには興味を持つものらしい。
「陽道も声かけてきたら?」
今朝、転校生の話題を出してきた辺り、当然彼のことが気になっているだろうと話を振ってみたが、どういうわけか、陽道の反応は鈍いものだった。
「うーん、俺はいいかな」
「どうして?」
「あの調子だと、順番待ちでもしなきゃ話せそうにないし、同じクラスのやつと話すのに順番待ちするなんてのも変だろ」
「まあ、それはそうかもだけど」
「数日もすれば自然と話せる機会も来るだろうし、その時でいいって」
やたらと淡白な陽道の反応に、なるほど、と俊樹は納得した。
朝の時点で気にしていたのも、今こうして心配がなくなったからほっといているのも、結局のところ、陽道なりの気遣いなのだ。
陽道は昔から、こうやってクラスを俯瞰して見て、友人同士の関係性を取り持つようなところがあった。
小学生の頃からずっと一緒にいるおかげで、俊樹はそんな姿を何度も見ている。
クラスで孤立しそうな人がいれば積極的に声をかけ、喧嘩が起きそうなら割って入ってでも場をとりなし、いじめが起きそうになると首謀者の興味を上手いこと逸らす。
俊樹は昔から大して目立たないタイプだったが、逆に、そのせいで目を付けられることも少なくなかった。
小学生の頃なんかは、大半の生徒が刺激に飢えているせいで、より顕著だったように思う。
比較的何もない、かと言って、遊び場が無限にあるわけでもない、俊樹たちの暮らす地域は田舎と都会の狭間にあった。
だからこそ、刺激に乏しい生活の中で楽しみを見出そうとした子供たちは、ドラマや映画の中で見たことがあるイベントを自主的に引き起こそうとした。
自発的な邪悪さから始まるいじめなんてものは、実はそんなに存在しない。
誰かがやっていたから、こんな話を動画サイトで見たから、アニメや漫画でやっているのを真似してみたくなったから……そんな軽い理由で、子供たちはいとも簡単に残酷なことをしてしまう。
後から過ちに気付くこともあれば、成長してから顧みることで自らの行いに苦悩する人もいるが、小さな頃にその間違いを認識できる人は少ない。
その点で言えば、陽道は昔から聡く、周りが良く見えている人間だった。
