「陽道、おはよう!」
「おう、はよー」
教室に入るなり、陽道は声をかけてきた男子の方に行ってしまった。
俊樹は特にそちらには反応せず、自分の席へと向かう。
特別に嫌われている、というわけではない。
いじめられている、というわけでもない。
クラスメイトとの仲は別に良くもないが悪いわけでもない。
ただただ関係が薄く、俊樹側にも交流を深めようという気がまるでないだけだ。
浮いている、といえば浮いているが、腫物の様に扱われている、というわけでもない。
ただ1人でいることが多いやつ、それがクラス内における俊樹の扱いだった。
そこに寂しさがないかと問われれば、俊樹としては、どうだろう、という気持ちだ。
1人でいる分には、別に寂しいとも思わない。
ぼんやり過ごすのも、寝て過ごすのも、動画を見たり、図鑑を眺めるなり本を読むなりして過ごすのも、どれも嫌ではない。
ただ、陽道と一緒にいられないのは、寂しいと思う。
そんなことを言ってしまえば陽道はとても気に掛けてくれるだろうし、他に友達ができるように根回しをしてくれたり、彼らとの遊びに混ぜてもらえるよう誘ってくれたりすることだろう。
しかし俊樹は、そんなことは全く望んでいなかった。
誰かと遊びに行くのも別に嫌なわけではないが、もし遊びに行くのであれば、俊樹はできれば、陽道と2人で遊びたかった。
2人で過ごせるのであれば、どんなことでもいい。
街に出て買い物をするのでも、カラオケに行くのでも、昔のように昆虫採集を一緒にするのでも、なんでも。
と、思うことはできても、当然、口に出すことはできない。
そんなこと、言ったところで困らせるだけだ。
陽道には陽道の日常があって、それを勝手な気持ちで縛り付けるようなことは、あってはならない。
……ただでさえ、彼の人生を縛り付けているような自分なのだから、なおさらだ。
俊樹は自分を戒めるように唇をきゅっと閉めて、窓の外を見た。
雨が止む気配はなく、相変わらず空はどんよりと曇っている。
「いっ、つぅ……」
腕の引き攣りが不意に強まり、俊樹は小さく声を上げてしまった。
