眩暈がしそうなぐらいの蝉の声が、あちこちから聞こえていた。
湿った空気が肌に張り付くようで、日差しを遮る無数の枝葉が作った影が、肌寒ささえ感じさせた。
濡れた土と、濃い草木の香りが、軽く息を吸っただけで胸いっぱいに広がる、薄暗い空間。
若月俊樹(わかつきとしき)は、気付くとそんな場所に1人で立っていた。
ここには、見覚えがある。
周囲を見回して、俊樹はとても懐かしい気持ちになった。
10年近く前、俊樹はここで毎日のように遊んでいた。
周囲一帯を取り囲む鬱蒼とした雑木林はまるで手入れなどされておらず、広場のようになっているこの場所に来るまでの道は、すっかり雑草に飲み込まれている。
小学生だからこその無鉄砲、躊躇いのなさが、この空間に辿り着く鍵だった。
なぜか下草もほとんど生えていないこの場所は、いつでも日陰で、いつでも湿った空気で満たされていて、時折吹く風が木々を揺らし、その度差し込む光の眩しさに目を細める、そんな場所だった。
かつては人がいたらしい痕跡が多少なり残るこの場所は、俊樹たちにとって絶好の遊び場だった。
大人から見つからない、秘密の場所。
残っているものもまばらに落ちているボロボロの木片ぐらいで、人が足を踏み入れなくなってから長い年月が経っているのは容易に想像できた。
人が寄り付いていないということは、誰にも邪魔されず、好きに遊べる、ということ。
子供の思考は単純で、愚かで、真っ直ぐに楽しみへと向かって行く。
そこに伴うリスクや危険について、考えないわけではないけど、それを簡単に楽しさが上回ってしまうのだ。
今であれば、勝手に誰のものかも分からない土地に入ったりしてはいけない、なんて簡単に分かることだ。
そもそも雑草と雑木林に囲まれている以上、まともに入るための道なんてないのだから、こんな場所に立ち入ろうとすら思わない。
大人が立ち寄らないのは、入れないからなどではなく、入る意味もなければ、入ったところで何もないと分かっているからだ。
そんなことを考えたところで、俊樹はようやく、自分の置かれている状況を理解した。
これは、夢だ。
懐かしい場所を夢に見ているだけ。
実際、視点が妙に低いのは、おそらく俊樹がかつて体験した記憶のままに見えているからなのだろう。
子供が駆け回ってもまったく問題ない広さの空間の奥、ボロボロになった木材の破片が無数に落ちている、さらに奥に、巨大な木が生えていた。
湿った空気が肌に張り付くようで、日差しを遮る無数の枝葉が作った影が、肌寒ささえ感じさせた。
濡れた土と、濃い草木の香りが、軽く息を吸っただけで胸いっぱいに広がる、薄暗い空間。
若月俊樹(わかつきとしき)は、気付くとそんな場所に1人で立っていた。
ここには、見覚えがある。
周囲を見回して、俊樹はとても懐かしい気持ちになった。
10年近く前、俊樹はここで毎日のように遊んでいた。
周囲一帯を取り囲む鬱蒼とした雑木林はまるで手入れなどされておらず、広場のようになっているこの場所に来るまでの道は、すっかり雑草に飲み込まれている。
小学生だからこその無鉄砲、躊躇いのなさが、この空間に辿り着く鍵だった。
なぜか下草もほとんど生えていないこの場所は、いつでも日陰で、いつでも湿った空気で満たされていて、時折吹く風が木々を揺らし、その度差し込む光の眩しさに目を細める、そんな場所だった。
かつては人がいたらしい痕跡が多少なり残るこの場所は、俊樹たちにとって絶好の遊び場だった。
大人から見つからない、秘密の場所。
残っているものもまばらに落ちているボロボロの木片ぐらいで、人が足を踏み入れなくなってから長い年月が経っているのは容易に想像できた。
人が寄り付いていないということは、誰にも邪魔されず、好きに遊べる、ということ。
子供の思考は単純で、愚かで、真っ直ぐに楽しみへと向かって行く。
そこに伴うリスクや危険について、考えないわけではないけど、それを簡単に楽しさが上回ってしまうのだ。
今であれば、勝手に誰のものかも分からない土地に入ったりしてはいけない、なんて簡単に分かることだ。
そもそも雑草と雑木林に囲まれている以上、まともに入るための道なんてないのだから、こんな場所に立ち入ろうとすら思わない。
大人が立ち寄らないのは、入れないからなどではなく、入る意味もなければ、入ったところで何もないと分かっているからだ。
そんなことを考えたところで、俊樹はようやく、自分の置かれている状況を理解した。
これは、夢だ。
懐かしい場所を夢に見ているだけ。
実際、視点が妙に低いのは、おそらく俊樹がかつて体験した記憶のままに見えているからなのだろう。
子供が駆け回ってもまったく問題ない広さの空間の奥、ボロボロになった木材の破片が無数に落ちている、さらに奥に、巨大な木が生えていた。
