一瞬で相思相愛って怪異すぎるだろ!!

【桜木朔也】

 二学期の修業式が終わった。
 ブッシと帰ろうとした矢先、ブッシが下級生の女子に数人に拉致られていった。
「玄関で待ってるぞ」
 連れ去られるブッシに手を振って、俺は玄関に向かった。
 どうせ、これから告白タイムだろう。
 告白してもムダなのにな。
 ブッシがイメチェン&青い目を解禁した途端、女子たちが獲物を狙う猛獣のように群がった。今までブッシをオタク扱いしてたヤツまでブッシに色目を使うのには笑った。
 そして、世の中は見た目が重視なんだって、改めて思い知った。
 今の明友を見てると、俺、普通の顔に生まれて良かったと思うよ。
 玄関に辿りつき、靴を履き替える。
「マジでキモイんだよ。ブッシ君と別れてよ!」
 後ろから女子のキツイ声がして振り返れば、同学年で結構可愛いと有名な髪がロングのヤツと、その連れのショートカットなヤツが俺を睨んでいた。
 だが、すぐにロングの方が「ホモの自覚あるじゃん。こっち見んなよ。マジでウザッ」と吐き捨てると、二人でギャハハハハッと笑って靴を履き替え、去っていった。
 俺、恋愛対象は女子なんだけどなあ。
 このままだと、女性恐怖症になりそうだよ。
 明友と一緒にいることが多い俺は、一部の女子から目の敵にされていた。
 お前らの大好きなブッシは、放課後は毎日ド健全なおウチデートで、土日祝日も出来るかぎりデートだって、知ったら驚くだろうな。
「お待たせ」
 やっとやってきたブッシは、顔を険しくさせていた。
 一秒でも早く朔良に会いたいのに邪魔されたんだ。そうなるよな。
「朔良が楽しみにしてるから、早く帰って、一緒に栞を作成したいのに」
 ブッシが愚痴りながら靴を履き替える。
 朔良への仏像は、朔良の物だけと蓮顕さんが預かることになり、今、ここにない。
 後日、蓮顕さんからブッシに「明友さんの鬼子母神像を見て、ぜひ会いたいという仏師の方がいますので、春にみんなで遊びに来ませんか?」と誘いの連絡があった。
 そんなわけで、まだ修学旅行をしたことがない朔良を連れて、楽しめなかった修学旅行やり直し計画が始まった。
 もちろん、俺もついていく。
 母さんが欲しがってた桜と同じヌイグルミを買うためだ。
 サブタイトルをつけるなら、『夜行バスで行く激安修学旅行』だ。
 蓮顕さんの自宅と、蓮顕さんの師匠の寺と、仏師のところに泊まる旅。
 未だにブッシがコンタクトに拘っていたら、企画すら上がらなかった旅だ。
 朔良も明友も、互いにちゃんとした告白をしていないから、両想いに限りなく近い両片思いだ。
 それは、メチャクチャ甘くて尊くて、特等席で常に見守りたい中毒性がある。
 二人が両想いになった時、一番に二人から報告される人でありたい。
 それが、今の俺のささやかな夢なんだ。