「なんか幽霊っぽいんだよね、俺」
目の前の男は、なんでもないことのように、とんでもないことを言った。
この男は、やはり渚なのかもしれない。あり得ないと思いつつ、そんな思考が巡る。こんな時でも慌てふためいたりしないのが、怖いくらいに渚らしいのだ。
「……っぽいんだよねって」
「でもまだ死んではないみたい。かろうじて体は生きてるよ。さっき病院で見た」
「生き霊ってことか……?」
「あぁ、うん。それだ」
「じゃあ本当に渚なのか?」
「え、俺以外の可能性あるの? 兄弟とかいないけど」
「……まぁ、うん。そうなんだけどよ」
思わず深いため息が溢れる。渚がいつも通りすぎて、なんだかこちらまで冷静になってきた。どう考えてもおかしい状況なのに。そもそもこれは現実なのか、そこから考えなければならないのに。
夢なのか、はたまた俺の妄想なのか。
「燈、大丈夫? 顔色悪いよ」
「……こんな状況で元気な方がおかしいだろ。お前、死にかけてんだぞ? わかってんのか?」
「うん。まぁでも燈とは話せてるわけだし、そんなに支障ないよ。元々他の人とは話さないし」
「……そういう問題じゃないだろ」
あぁ、この話が通じない感じ。頭が痛くなってきた。
渚のマイペースさには何度も苦労してきた。言葉をオブラートに包むという術を知らない渚に、怒り心頭の友人を宥めたことは数えきれない。
渚は大人に怒られても全く怯まない。持ち前の頭の良さを活かし、正論パンチを繰り出す。しかし、正論というものは時に人をより逆上させる。顔を真っ赤にした教師と顔色ひとつ変えない渚。その間に入り、場を収めたことは何度もある。
割とどんな相手にでも上手く立ち回ることができるようになったのは、渚のおかげ、いや渚のせいなのかもしれない。
が、しかし、今回ばかりは次元が違う。さすがの俺にも対処法がわからない。とりあえず現状把握をしようと、じっと渚を見つめる。
(……見た目はなんも変わんないんだよな。制服も綺麗なままだし、怪我した様子もないし)
「なに、なんかついてる?」
「あぁ。整ったパーツが顔にばっちりついてるよ」
「なにそれ。変なの」
「……本当に幽霊なのか? さっき俺に触ったよな?」
「あ、そういえば。燈には触れるんだった」
思い出したかのようにそう呟いた渚は、ベッドに座っていた俺の隣に腰掛ける。両手で肩を押されれば、布団に吸い込まれるように体が倒れた。ばふんっと布団が音を立てる。
渚は俺を抱き枕のように抱え、寝転がる。
「……なにすんだよ。2人で寝るには狭いっていつも言ってんだろ」
「そんなこと言って、いつもすやすや寝てるじゃん。燈、顔色悪いよ。一回何も考えずに寝ようよ。俺も眠いし」
「幽霊にも眠気とかあるんだ」
「うん。なんか生きてる時とあんまり変わんないよ。燈以外の人には見えないし、触れないみたいだけど」
「ふーん……。不思議だな」
「愛の力じゃない?」
「ふっ……バカかよ……」
いつものようなくだらないやり取りに思わず笑顔が溢れる。体の力がだんだんと抜けていく。悔しいけれど、渚の言う通りで、この時間が1番落ち着いて、1番よく眠れるのだ。
何一つ解決していないのに、気づくと俺は眠りの世界に誘われていた。
目の前の男は、なんでもないことのように、とんでもないことを言った。
この男は、やはり渚なのかもしれない。あり得ないと思いつつ、そんな思考が巡る。こんな時でも慌てふためいたりしないのが、怖いくらいに渚らしいのだ。
「……っぽいんだよねって」
「でもまだ死んではないみたい。かろうじて体は生きてるよ。さっき病院で見た」
「生き霊ってことか……?」
「あぁ、うん。それだ」
「じゃあ本当に渚なのか?」
「え、俺以外の可能性あるの? 兄弟とかいないけど」
「……まぁ、うん。そうなんだけどよ」
思わず深いため息が溢れる。渚がいつも通りすぎて、なんだかこちらまで冷静になってきた。どう考えてもおかしい状況なのに。そもそもこれは現実なのか、そこから考えなければならないのに。
夢なのか、はたまた俺の妄想なのか。
「燈、大丈夫? 顔色悪いよ」
「……こんな状況で元気な方がおかしいだろ。お前、死にかけてんだぞ? わかってんのか?」
「うん。まぁでも燈とは話せてるわけだし、そんなに支障ないよ。元々他の人とは話さないし」
「……そういう問題じゃないだろ」
あぁ、この話が通じない感じ。頭が痛くなってきた。
渚のマイペースさには何度も苦労してきた。言葉をオブラートに包むという術を知らない渚に、怒り心頭の友人を宥めたことは数えきれない。
渚は大人に怒られても全く怯まない。持ち前の頭の良さを活かし、正論パンチを繰り出す。しかし、正論というものは時に人をより逆上させる。顔を真っ赤にした教師と顔色ひとつ変えない渚。その間に入り、場を収めたことは何度もある。
割とどんな相手にでも上手く立ち回ることができるようになったのは、渚のおかげ、いや渚のせいなのかもしれない。
が、しかし、今回ばかりは次元が違う。さすがの俺にも対処法がわからない。とりあえず現状把握をしようと、じっと渚を見つめる。
(……見た目はなんも変わんないんだよな。制服も綺麗なままだし、怪我した様子もないし)
「なに、なんかついてる?」
「あぁ。整ったパーツが顔にばっちりついてるよ」
「なにそれ。変なの」
「……本当に幽霊なのか? さっき俺に触ったよな?」
「あ、そういえば。燈には触れるんだった」
思い出したかのようにそう呟いた渚は、ベッドに座っていた俺の隣に腰掛ける。両手で肩を押されれば、布団に吸い込まれるように体が倒れた。ばふんっと布団が音を立てる。
渚は俺を抱き枕のように抱え、寝転がる。
「……なにすんだよ。2人で寝るには狭いっていつも言ってんだろ」
「そんなこと言って、いつもすやすや寝てるじゃん。燈、顔色悪いよ。一回何も考えずに寝ようよ。俺も眠いし」
「幽霊にも眠気とかあるんだ」
「うん。なんか生きてる時とあんまり変わんないよ。燈以外の人には見えないし、触れないみたいだけど」
「ふーん……。不思議だな」
「愛の力じゃない?」
「ふっ……バカかよ……」
いつものようなくだらないやり取りに思わず笑顔が溢れる。体の力がだんだんと抜けていく。悔しいけれど、渚の言う通りで、この時間が1番落ち着いて、1番よく眠れるのだ。
何一つ解決していないのに、気づくと俺は眠りの世界に誘われていた。

