愛しい君は、生き霊になっても俺を離さない。

 目を開ける。
 見慣れたカーテンの隙間から夕陽が差し込んでいた。隔てるのはガラス1枚だけ。それなのに、果てしなく遠いような気がした。
 寝転んだまま、薄目で渚を見る。俺が起きたことには気づいていないのか、黙々と、また例のパズルをやっている。
 渚がパズルのピースを手に取る。
 黒い。黒いピース。
 何もわからないまま、ハマる場所を探し続けるしかないパズル。
 それは、なんだか今の状況と、少し似ているような気がした。
 扉が開かなかったこと、外に出られなかったこと。思い出すと、全てが恐ろしいことのように感じる。
 心臓が早鐘を打ち、今すぐここから出た方が良いのかもしれないと思う。
 でも、ここから出ること、それもまた酷く恐ろしいことのように感じた。
 あの奥には外がある。俺と渚以外の世界が。
 しかし、その世界に渚はいない。
 いるのは、包帯だらけで生死の境を彷徨う、現実の渚。
 だったら──。
 次第に別の感情が頭をもたげてくる。
 外に出なくていい。死にかけている渚の姿を見なくてもいい。
 渚には俺がいればいい。
 2人でずっとこの部屋にいればいい。
 そんな弱い自分を心底軽蔑すると同時に、仕方がないとも思った。
 俺は渚とずっと一緒にいると決めたのだから。  
 ふと、あの日の記憶が蘇る。
 冷たい風が吹く公園。隣で何も言わずに座っていてくれる渚。
 あの日、俺は決めたのだ。
 何があっても、渚の味方でいると、そばに居ると──。