揺らぐ月に君は凪ぐ

月を見ると、特に三日月を見ると明人のことを思い出す。彼と三日月を結びつける記憶は不思議なあの一週間しかなかった。大学生になっても、就職活動をしていても、社会人になってあくせく働いていても、一か月に一回は明人のことを思い出せた。月命日ではなく三日月が綺麗な夜に。今振り返れば、あの一週間はきっと、明人を失ったショックによって引き起こされた幻覚だったんじゃないかとさえ思ってしまう。都合のいい夢だったんじゃないか、夢の中で俺は学校をさまよっていたんじゃないかとも。それでも、月が揺らめいているのを見るたびに、明人の体を透けて月が歪んでいたのを思い出して、頬に水滴が流れるのだった。