「これ、学校の中に入っちゃえば勝ち?」「そう。勝ち」「勝ったな」明人と二人でグーパンチ。明人は得意げな顔で、「七不思議のことよりもこのセキュリティについて調べるほうが大変だったんだから。」とこぼした。「とりあえず、凪にはお参りをして欲しいんだよ。」「祠ね。」明人についていくと、祠が見える。特に何の変哲もないただの祠。近所にあるものと何一つ変わらない。怖くも、気味悪くもない。その前にしゃがんで、小さな扉を開ける。木のきしんだ音がやけに大きく響いたような気がして、思わず背後を振り返った。扉の中には、大体、俺の顔くらいの大きさのお狐さんが左右に一匹ずつ。真ん中にご神体なのだろうか、赤い布に包まれた何かがあり、明らかに触れてはいけなさそうだった。「お参りって具体的に何するの?」明人は俺の後ろから祠をのぞき込んでいたが、手遊びをしながら、「大体、お参りをするとしか書いてないからなぁ。一つ、お参りするときに、挨拶して要件を述べるって書いてあったからまあそれやればいいんじゃない?」と答えた。わかんないな。ここにいるのは本当に神なのか、それとも怪異なのか、この世あらざる者であることはどちらでも変わりはしないが、ここは大きな違いだ。手を合わせ、目を瞑る。小さな声で「大野凪です。七不思議に逢いに来ました」と呟いた。
コン!狐の鳴き声がして驚いて目を開ける。焼き物のキツネは先ほどまで、下を向いてこちらを上目遣いで見つめていたのに、今は首を伸ばして上を向いている。鳴き声の残響が校舎に跳ね返り、吸収されて夜の闇に溶け込んだ時、彼らはすうっと元の形に戻って、何もなかったかのように固まった。「おお……」人は驚くと、逆に冷静になるらしい。というのは、明人と再会した時も感じたことなのだが。気が付くと膝をついていた地面は桜の花びらでいっぱいになっている。花弁が絨毯のように敷き詰められていて美しい。頬に花弁が当たって、俺のほほをそのまま透ける。見上げると、先ほどまで紅葉した赤と黄色の葉をつけていた桜が、花弁を一枚一枚ひらひらと落としているのがわかった。綺麗。この世のものだとは思えないほどきれいだ。そのままじっと見ていると、自分まで桜に魂を抜かれるような感じがして、怖くなる。桜から自分を切り離すように、ふうっと息をつき。目の前に視線を戻す。その瞬間、祠が血にまみれたように赤く染まった。俺が祠を見るのを待ち構えていたみたいだ。「うわ。」俺は腰を抜かす。どんなに不可解なことが起こってもまだ耐えられる。もう今更驚いて腰が引けることはない。でもやっぱり、血みどろは怖すぎる。「腰抜けてんじゃん。」不思議なことの連続で、自分が一人じゃないことを忘れていたが、そうだ、俺は今、明人と二人なのだ。「怖すぎだろ」なんとか笑いながら振り返ると明人は目の前にいた。桜が花弁を散らし、祠が血にまみれ、校舎が薄明りをまとっているように、明人の姿もまた変わっていた。「どう?これ、見えるようになった?」明人の全身には赤い糸が結わえられていて、左の薬指に巻き付いている赤い糸はこの祠につながっていた。糸は明人の細いきれいな薬指にしっかりと結わえ付けられていて、薬指の先は鬱血しているようにも見える。他にも、お腹に巻き付いているもの、腕に絡みついているもの、手首に枷のようにリボン結びされているもの、首に何重にも巻き付いているもの。真っ赤というよりも少し赤黒い色のその糸たちは、それが明人から流れる血であると錯覚してしまう。今まで俺が見えていなかっただけで、明人はずっとこの状態だったのだ。少し血の気が引いて、よろめいた。「ちょっと怖いよね」明人は困ったように眉を下げて笑う。「いや、大丈夫、」てのひらをひらひらと振ってアピールした。確かに、絵面のインパクトはすごいし、よく見たら糸だけどぱっと見はどう考えても血だ。グロい。だけど大丈夫、怖くはない。「お前だから。」「やっぱり血まみれでも最高にキュートか!」「おい、血なんだとしたら話は変わってくる」「すみません、本当に糸です。」
コン!狐の鳴き声がして驚いて目を開ける。焼き物のキツネは先ほどまで、下を向いてこちらを上目遣いで見つめていたのに、今は首を伸ばして上を向いている。鳴き声の残響が校舎に跳ね返り、吸収されて夜の闇に溶け込んだ時、彼らはすうっと元の形に戻って、何もなかったかのように固まった。「おお……」人は驚くと、逆に冷静になるらしい。というのは、明人と再会した時も感じたことなのだが。気が付くと膝をついていた地面は桜の花びらでいっぱいになっている。花弁が絨毯のように敷き詰められていて美しい。頬に花弁が当たって、俺のほほをそのまま透ける。見上げると、先ほどまで紅葉した赤と黄色の葉をつけていた桜が、花弁を一枚一枚ひらひらと落としているのがわかった。綺麗。この世のものだとは思えないほどきれいだ。そのままじっと見ていると、自分まで桜に魂を抜かれるような感じがして、怖くなる。桜から自分を切り離すように、ふうっと息をつき。目の前に視線を戻す。その瞬間、祠が血にまみれたように赤く染まった。俺が祠を見るのを待ち構えていたみたいだ。「うわ。」俺は腰を抜かす。どんなに不可解なことが起こってもまだ耐えられる。もう今更驚いて腰が引けることはない。でもやっぱり、血みどろは怖すぎる。「腰抜けてんじゃん。」不思議なことの連続で、自分が一人じゃないことを忘れていたが、そうだ、俺は今、明人と二人なのだ。「怖すぎだろ」なんとか笑いながら振り返ると明人は目の前にいた。桜が花弁を散らし、祠が血にまみれ、校舎が薄明りをまとっているように、明人の姿もまた変わっていた。「どう?これ、見えるようになった?」明人の全身には赤い糸が結わえられていて、左の薬指に巻き付いている赤い糸はこの祠につながっていた。糸は明人の細いきれいな薬指にしっかりと結わえ付けられていて、薬指の先は鬱血しているようにも見える。他にも、お腹に巻き付いているもの、腕に絡みついているもの、手首に枷のようにリボン結びされているもの、首に何重にも巻き付いているもの。真っ赤というよりも少し赤黒い色のその糸たちは、それが明人から流れる血であると錯覚してしまう。今まで俺が見えていなかっただけで、明人はずっとこの状態だったのだ。少し血の気が引いて、よろめいた。「ちょっと怖いよね」明人は困ったように眉を下げて笑う。「いや、大丈夫、」てのひらをひらひらと振ってアピールした。確かに、絵面のインパクトはすごいし、よく見たら糸だけどぱっと見はどう考えても血だ。グロい。だけど大丈夫、怖くはない。「お前だから。」「やっぱり血まみれでも最高にキュートか!」「おい、血なんだとしたら話は変わってくる」「すみません、本当に糸です。」
