昼間は晴れていたのに夕方になると冷たい風が吹いてきた。おや、と思って空を見上げる。振り仰いだ空は真っ赤に燃えるような夕焼けではなく、今にも雨粒が落ちてきそうな暗い雲で覆われていた。
手に持った白いチョークをズボンのポケットにしまう。アスファルトの路上には幼い筆致で林檎や犬の絵が描かれていた。雨が降ればこれらすべてが消えてしまうかもしれないと思うと、少し悔しくなる。
もう少しだけ絵を描き足して、それから家の中に入ろう。ポケットにしまったチョークを再び取り出し、地面に線を引く。
次の瞬間、薄暗くなり始めていた視界が急に明るくなった。雷でも落ちたのかと錯覚するほどの目映い光が目をくらませる。続いて、パアーッと甲高い音が鳴り響いた。
鼓膜をつんざくその音の正体が自動車のクラクションであることに気が付いた時にはもう、小さな体が宙を舞っていた。


