四季神家の【五】女は年下夢魔軍神に溺愛される

 夜中。
 家に帰ってきた冬姫は、荒れた。
 物という物を壁に投げつけ、鏡を割り、タンスの中身をぶちまけた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 それから、寝ている女中たちを叩き起こした。

「ねぇ、部屋が散らかっていて寝られないの。今すぐ片付けて」

 部屋の惨状を見た女中たちが、呆然となる。

「早くして。早くしなさいよっ」
「お、恐れながらお嬢様、これ、ご自分でなさったのでは……?」
「だったら何? 伍だったら文句も言わずに片付けたはずだけれど」
「ですが、これはいくらなんでも……」
「なぁに、口答え?」
「い、いえ、そういうわけでは……」
「あぁもう、面倒くさい。【洗脳】!」

 ――ぶわっ

 白い霧が立ち込め、女中たちの鼻や口に吸い込まれていった。
 とたん、女中たちが虚ろな顔で片付けを始める。

「あぁもう、どいつもこいつも本当に愚図なんだからっ」




「……なるほど。そうやって【洗脳】し続けてきたわけか」




 振り返ると、憤怒の表情の父が立っていた。

「お、お父様……」
「そうして、自分の母親を――雪華をも【洗脳】し、死に至らしめた」
「アタシ、殺してなんかいないわよっ。愛するお母様を、アタシが殺すはずないじゃないっ」
「だが、【洗脳】はしたのだろう?」
「…………。ちょっと力加減を間違っちゃっただけよ」
「力加減を……間違った?」
「違うっ、アタシは何も間違ってなんかいない! お母様が悪いのよ。お母様ったら、アタシが何度『お願い』しても伍の肩を持つんですもの。だから……」
「…………。来い」

 父が冬姫の腕を引っ張った。

「な、何? どこへ行くの?」
「蔵だ。お前は危険過ぎる。野放しにはしておけない」
「い、嫌よっ。どうしてアタシが折檻みたいなことをされないといけないの!?」

 ――ぶわっ

 冬姫は全力の【洗脳】を使った。
 だが、

()ッ!」

 父の一喝によって、霧は吹き飛ばされた。

「貴様、この期に及んで……っ!」
「ご、誤解よっ」
「何が誤解なものか、この痴れ者がっ。お前はもうしゃべるな」

 父が冬姫を引きずっていく。
 冬姫が全力で抵抗するが、父は苦もなく冬姫の腕をねじ上げ、肩を極めた。
 そのまま、蔵に向かって歩かされる。

「ここで頭を冷やしていろ!」

 父が、冬姫を蔵の中へ投げ込んだ。

「……いや、冷やす頭があるのかも疑わしい。二度とここから出られないと思え」

 父が素早く扉を閉め、錠を下ろしてしまった。

 ――カサカサ
   ――カサカサ
     ――カサカサ

 蔵の奥に、何かがいる。
 虫か、鼠か。

「ひっ……嫌っ、嫌ぁっ! 出してっ、出してっ、出してぇえええっ!」

 冬姫は狂ったように扉を叩いた。
 何分も、
   何十分も、
     何時間も叩き続けた。
 だが、やがて体力の限界が訪れて、気絶するように眠った。




   ◆   ◇   ◆   ◇