四季神家の【五】女は年下夢魔軍神に溺愛される

「坊っちゃん、お手紙です。……四季(しき)(じん)冬姫(ふゆき)からの」

 阿ノ九多羅邸に戻ると、千代子が一階で待っていた。
 ものすごく嫌そうな顔で、デウスに手紙とペーパーナイフを手渡す。

(冬姫お姉様からのお手紙……?)

 伍はものすごく嫌な予感がした。
 案の定、手紙を読みはじめるやいなや、デウスが眉をひそめた。

「あ、あの……旦那様、姉は何と?」
「…………。夜会への招待と、金の無心だ」
「えっ」
「『四季神家主催の夜会に招待してやるから、ありがたく思え。ついては、そのための金をよこせ』とのことだ」
「わ、わ、わたくしの家族が、とんだご迷惑を……ッ!」

 伍は全力で頭を下げる。そのまま平伏しようとした伍を、

「だっ、大丈夫だ、伍。気にするな」

 デウスが立たせてくれた。

「俺は、伍と四季神家のことは分けて考えている。というか、あの女は異常だ」
「…………。それで、参加するのですか?」
「正直、無視したい。が、そうすると口さがない連中に攻撃材料を与えてしまうからな」




『そのウワサは、俺の政敵が流している悪質なプロパガンダさ』




「旦那様の……政敵? という方々のことでしょうか?」
「そのとおりだ。伍は頭がいいな」

 デウスが伍の頭をなでてくれる。
 伍は心地よい。

「第ゼロ師団における、我ら第七旅団『以外』の旅団の長たちさ。第七旅団とは予算を奪い合う関係にあるから、どうしてもな」
「な、なるほど?」
「ほら、ここに書いてある。『第六旅団長の六九六(むくろ)アインスも招待する』、とな。こいつが他の旅団長たちを煽って、しょっちゅう突っかかってくるんだ。こいつが参加しているのに、伍をもらい受けたばかりの立場の俺が参加しないとなると、角が立つ。あることないこと言われまくるに決まってる」
「難しいのですね」
「だが」

 デウスがニヤリと微笑んだ。

「今回ばかりは、俺はこの夜会が楽しみで仕方ない。なぁ、千代子?」
「あらあらまぁまぁ。坊っちゃんもお人が悪い」

 千代子もまた、ニヤリと微笑む。

「くくっ、どの口が。夜会まで日がない。金に糸目はつけないでいいから、最上級の物を用意しろ」
「まずはドレス。伍様にはどんなドレスが似合うでしょうね? それに、アクセサリ。主なのは例の紅玉のイヤリングでよいとして、指輪……は今からでは間に合いませんから、その分、思いっきり贅沢なネックレスを着けましょうね」

 千代子が伍の肩をつかみ、鼻息荒く力説する。

「えっ、えっ、えっ。デウス様、千代子様? 何のお話で?」
「目一杯美しく着飾って、四季神冬姫の度肝を抜いてやろうって話さ」




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