四季神家の【五】女は年下夢魔軍神に溺愛される

「【永遠に尽きることなく――AMEN】!」

 光の槍が、デビルの残党を消し飛ばした。

「ようやく終わりか」
「今日も多いですね」

 夜の襲撃を乗り切ったデウスが、電柱の上から飛び降りた。
 袴姿の(いつつ)をおんぶする、いつものスタイルだ。
 この『おんぶ戦法』は、『阿ノ九多羅(あのくたら)家最強夫婦の名物戦法』として第七旅団内ですっかり定着した。

「ハロウィンが近いからな」
「はろ……何ですか?」
「ハロウィン。西洋の、悪魔悪霊を礼賛するお祭りだ。ほら、居留地のそこかしこに南瓜が飾られているだろう?」
「悪魔礼賛って……デビルが強くなっちゃうじゃないですかっ」

 伍の吐息が、デウスの耳をくすぐる。それが、デウスは心地よい。
 伍が降りたそうに身をよじる。が、デウスは気づいていないフリをして、スタスタと街の明かりのほうへ歩いていく。

「伍もだいぶ、理解が早くなってきたな。そのとおりだ。だが、事は宗教行事だ。下手に禁止して地下に潜られるくらいなら、こうして神戸港公認の行事として管理してしまったほうがいい」
「大変なのですね。ところで……」

 伍が再び、身をよじる。

「一人で歩けるのですが」
「知ってる」
「旦那様は意地悪です」
「ふふっ、悪かったよ」

 デウスは伍を優しく下ろした。
 その様子を、戦後処理中の若手旅団員たちがはやし立てた。

 ――ひゅーひゅーっ、今日もお熱いですなぁ!
 ――最強の夫婦だ。神戸港は安泰だな。

 真っ赤になった伍が、デウスの背中に隠れる。

 ――伍様は女神様だ。俺たちのアイドルだ!
 ――神々しい……
 ――俺も霊力譲渡してもらいたいなぁ。

 危うい方向へ盛り上がりはじめる若手たち。
 そんな彼らを、デウスが凍てつく目で一瞥した。

 ――し、ししし失礼しましたぁ!
 ――仕事に戻るのでありますっ。

 若手たちが退散していく。

「まったく、どいつもこいつも」

 伍が、デウスの背中からひょっこりと出てきた。

「慕われているんですね」
「今のはお前が……いや、何でもない」




 実際、伍は驚くほど美しくなった。




 衣食住の充実で、痩けていた頬はふっくらし、目の下の隈も消えた。
 何より、表情が明るい。
 目が合うと、花が咲くように微笑んでくれる。

(これだけ可愛ければ、若い将兵たちが色目を使うのもやむなし、か。いや、だがしかし)

 デウスは伍をぎゅっと抱きしめて、

「誰にも渡さんぞ……」
「旦那様? 何の話ですか?」
「こっちの話だ。それより、霊力の使いすぎで【ヱイジング】が解けそうなんだ」
「まぁ、それは大変」
「だから……」
「はい、喜んで」

 デウスは伍の手を取り、伍を物陰へいざなう。
 老若男女様々な将兵たちが、そんな二人の後ろ姿をそっと見守っている。




   ◆   ◇   ◆   ◇