「伍、もらえるか?」
夕方、伍はデウスの自室に招き入れられた。
十歳児のデウスは、ブカブカの軍服を着ていた。
「夜に備えて、しっかり霊力を蓄えておきたいんだ」
「あ、あの、その……」
伍は、戸惑う。
『もらえるか?』の意味は分かる。
昨晩、レッドドラゴン戦の最中に散々交わしあったからだ。
だが、目の前にいる旦那様は、十歳児の姿だった。
伍はとてつもない背徳感と、道徳的観念における非常に危うい感覚を覚えた。だから、
「だ、駄目ですっ」
と、デウスを拒絶した。
伍としては、デウスを拒絶するのは初めての経験だった。
伍は、内心傷ついた。
が、傷ついたのはデウスも同じのようだった。
それも、伍よりもなお強く。
デウスの顔に、明確に『愕然とした表情』が浮かんだ。
その表情を見て、伍は心を締めつけられた。
「あっ……ち、違うんですっ。旦那様のことが嫌とかそういうのではなくてっ」
だから伍は、大慌てで弁明した。
デウスを傷つけるなど、本意ではなかった。どころか、伍にとっては『絶対にしてはならない禁忌』だった。
だから伍は、十歳児状態のデウスをギュッと抱きしめた。
「た、ただ……旦那様は今現在、十歳児です。そんな旦那様に口づけするのは、道徳上非常によろしくないと申しますか」
「【オン・アハラシャノウ――文殊慧眼】」
デウスが自身の額に触れながら、術式を使った。
デウスの目から、子供っぽさが消える。
「これで、俺は二十歳相当の精神になった。お前よりも年上だ、伍。何を恥じらうことがある?」
「う、うう……っ。だとしても、です。もし今後、わたくしが『お心は二十歳、お体は十歳』の旦那様に口づけすることに慣れてしまったとして……戦闘中などのふとしたときに十歳のお姿の旦那様に口づけしてしまったとして、その様子を一般人に目撃されてしまったとしたら、どうでしょう?」
「…………。…………? ……じ、事件じゃないかっ」
「でしょう? だから、駄目、です」
「うぅ……道理だ、納得した。なら、こうだ」
デウスが背伸びをして、伍を抱きしめ返してきた。
「っ!」
伍は得も言われぬ多幸感に包まれる。
「【吸魔】」
デウスが耳元で囁いた。
伍の丹田が熱くなる。それで、気づいた。
目一杯背伸びをしたデウスは、伍と背丈がほとんど同じだ。この状態で密着すると、互いの臍の下――丹田同士が触れ合う形となる。
「こ、これはこれで非常に駄目な感じが……」
「よし、補給完了」
デウスが体を離した。
「見ていろ。【穢れなき褥・無垢なる共寝・リリートゥの夜――ヱイジング】」
デウスが色欲の魔王直伝の年齢操作魔術を使った。
とたん、デウスの背丈がグングン伸びはじめ、肩幅が広くなり、顔立ちが精悍なそれへと変わっていった。
「す、すごいっ。どこからどう見ても二十歳です」
「今夜も激戦が予想される。追加でもらってもいいか?」
「それはもちろ――んっ!?」
ついっと顎を上げられて、伍は慌てた。
「く、口づけで、ですか!?」
「そうだが?」
「や、やっぱり駄目ですっ。だって旦那様は、いくら術式で二十歳のお姿とお心になったとはいえ、つい先ほどまで十歳のお姿で……」
「だが、今はもう、二十歳の姿と心だ」
伍が一歩下がれば、デウスが一歩進む。
伍がさらに一歩下がれば、デウスがもう一歩進む。
ついに伍は、壁際に追い詰められた。
「駄目か?」
「だ、駄目……」
伍はこれ以上、逃げられない。
◆ ◇ ◆ ◇
夕方、伍はデウスの自室に招き入れられた。
十歳児のデウスは、ブカブカの軍服を着ていた。
「夜に備えて、しっかり霊力を蓄えておきたいんだ」
「あ、あの、その……」
伍は、戸惑う。
『もらえるか?』の意味は分かる。
昨晩、レッドドラゴン戦の最中に散々交わしあったからだ。
だが、目の前にいる旦那様は、十歳児の姿だった。
伍はとてつもない背徳感と、道徳的観念における非常に危うい感覚を覚えた。だから、
「だ、駄目ですっ」
と、デウスを拒絶した。
伍としては、デウスを拒絶するのは初めての経験だった。
伍は、内心傷ついた。
が、傷ついたのはデウスも同じのようだった。
それも、伍よりもなお強く。
デウスの顔に、明確に『愕然とした表情』が浮かんだ。
その表情を見て、伍は心を締めつけられた。
「あっ……ち、違うんですっ。旦那様のことが嫌とかそういうのではなくてっ」
だから伍は、大慌てで弁明した。
デウスを傷つけるなど、本意ではなかった。どころか、伍にとっては『絶対にしてはならない禁忌』だった。
だから伍は、十歳児状態のデウスをギュッと抱きしめた。
「た、ただ……旦那様は今現在、十歳児です。そんな旦那様に口づけするのは、道徳上非常によろしくないと申しますか」
「【オン・アハラシャノウ――文殊慧眼】」
デウスが自身の額に触れながら、術式を使った。
デウスの目から、子供っぽさが消える。
「これで、俺は二十歳相当の精神になった。お前よりも年上だ、伍。何を恥じらうことがある?」
「う、うう……っ。だとしても、です。もし今後、わたくしが『お心は二十歳、お体は十歳』の旦那様に口づけすることに慣れてしまったとして……戦闘中などのふとしたときに十歳のお姿の旦那様に口づけしてしまったとして、その様子を一般人に目撃されてしまったとしたら、どうでしょう?」
「…………。…………? ……じ、事件じゃないかっ」
「でしょう? だから、駄目、です」
「うぅ……道理だ、納得した。なら、こうだ」
デウスが背伸びをして、伍を抱きしめ返してきた。
「っ!」
伍は得も言われぬ多幸感に包まれる。
「【吸魔】」
デウスが耳元で囁いた。
伍の丹田が熱くなる。それで、気づいた。
目一杯背伸びをしたデウスは、伍と背丈がほとんど同じだ。この状態で密着すると、互いの臍の下――丹田同士が触れ合う形となる。
「こ、これはこれで非常に駄目な感じが……」
「よし、補給完了」
デウスが体を離した。
「見ていろ。【穢れなき褥・無垢なる共寝・リリートゥの夜――ヱイジング】」
デウスが色欲の魔王直伝の年齢操作魔術を使った。
とたん、デウスの背丈がグングン伸びはじめ、肩幅が広くなり、顔立ちが精悍なそれへと変わっていった。
「す、すごいっ。どこからどう見ても二十歳です」
「今夜も激戦が予想される。追加でもらってもいいか?」
「それはもちろ――んっ!?」
ついっと顎を上げられて、伍は慌てた。
「く、口づけで、ですか!?」
「そうだが?」
「や、やっぱり駄目ですっ。だって旦那様は、いくら術式で二十歳のお姿とお心になったとはいえ、つい先ほどまで十歳のお姿で……」
「だが、今はもう、二十歳の姿と心だ」
伍が一歩下がれば、デウスが一歩進む。
伍がさらに一歩下がれば、デウスがもう一歩進む。
ついに伍は、壁際に追い詰められた。
「駄目か?」
「だ、駄目……」
伍はこれ以上、逃げられない。
◆ ◇ ◆ ◇



