翌朝、伍はいつになく爽快に目覚めた。
いそいそと身支度し、厨房に降りて朝食の準備を始める。
「伍様、お体は大丈夫なのですか?」
しばらくすると、千代子が現れた。
パタパタと近寄ってきた千代子が伍の熱を測り、顔色を確認し、「ふむ」とうなずいた。
「ずいぶんと調子がよさそうですね。それに、なんだかお顔つきが変わったというか、一皮剥けたと言うか?」
「そうですか? それより、千代子様こそ大丈夫ですか? 一晩中戦っておいででしたのに」
「ふふん。私は元軍人――というより、ほぼ現役軍人ですから。鍛え方が違うのですよ」
「さすがです、千代子様」
「照れますね。でも、本当にすごかったのは坊っちゃんと伍様ですよ! あのレッドドラゴンを一撃ですよ、一撃!」
根っからの武人らしく、千代子は昨日の戦いについて熱心に語る。
語りながらも手は止めず、魔法のような速度で一品、二品と仕上げてしまうのは、さすがの手腕である。
「旦那様、起きてきませんね」
「伍様、それ、いいですね」
「え?」
「だ・ん・な・さ・まっ」
「~~~~っ!」
「鍋の火は私が見ておきますから。坊っちゃんを起こしに行っていただけますか、奥様?」
「もうっ、千代子様ったら」
厨房を出て、寮棟に入り、伍はいそいそと五階へ上がる。
誰かを起こしに行くのがこんなにも心躍るものだとは、伍は知らなかった。
――コン、コンコン
「おはようございます、旦那様。朝食のご用意ができました。……旦那様? まだ眠っていらっしゃるのでしょうか? 中に入りますよ?」
伍がドアノブを回しかけたとき、
「は、入ってくるな!」
と、部屋の中から返事。
だが、妙に声が高い。
「旦那様、もしやお風邪でも召したのですか? 境様にお願いして治癒巫術を――」
――ドンガラガッシャーンッ!
部屋の中から激しい音が聴こえてきた。
「旦那様!?」
伍は慌てて部屋に入る。そして、
「……え?」
言葉を失った。
部屋の中に、デウスではなく、見知らぬ男児がいたからだ。
しかも、その男児がベッドから転げ落ちていたからだ。
「ぼ、僕ちゃん、大丈夫!?」
伍は男児に駆け寄り、抱き起こす。
金髪赤眼のその男児は、背丈は伍より一回り低いくらい。
年は十歳前後だろうか。
「あー……大丈夫だ。大丈夫ではないが」
居心地悪そうな様子で、寝間着姿の男児が言った。
なんだか妙に大人びた口調だ。
「大丈夫なら、よかったです。それにしても、ここはデウス様のお部屋では? デウス様はいずこに?」
「…………。……。……ここだ」
消え入りそうな声で、男児が言った。
「……え?」
「ここだ。俺が、阿ノ九多羅デウスだ」
「えぇえええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
仰天の伍。
どうしてよいか分からず右往左往してから、デウスを名乗る男児を抱っこした。
大した重さは感じなかった。
境が身体強化系の巫術で補助してくれているのかもしれない。
が、今の伍はそれどころではない。
「ちょっ、伍!?」
――ドドドドドッ
恥も外面もかなぐり捨てて、伍は全力で廊下を走った。
階段を駆け下り、本棟一階の厨房へ駆け込む。
「ち、ちちち千代子様! 旦那様が小さくなってしまいました! ど、どうすれば!?」
千代子が固まった。が、それも数秒のこと。
千代子とデウス少年の間で、何やら意味深な視線が交換されたあと、二人同時に、
「「あー……」」
と言った。
千代子は、呆れのこもった声色で。
デウス少年は、あきらめのような感情がこもった声色で。
「だから言ったんですよ、坊っちゃん。さっさと明かしてしまいなさい、って」
「あー、うん……説教はあとにしてもらっていいか?」
どうやら、デウス少年はデウスその人で間違いないらしい。
「はぁっ、はぁっ……はぁぁあ~?」
デウスを抱き上げたまま、伍は首を傾げた。
いそいそと身支度し、厨房に降りて朝食の準備を始める。
「伍様、お体は大丈夫なのですか?」
しばらくすると、千代子が現れた。
パタパタと近寄ってきた千代子が伍の熱を測り、顔色を確認し、「ふむ」とうなずいた。
「ずいぶんと調子がよさそうですね。それに、なんだかお顔つきが変わったというか、一皮剥けたと言うか?」
「そうですか? それより、千代子様こそ大丈夫ですか? 一晩中戦っておいででしたのに」
「ふふん。私は元軍人――というより、ほぼ現役軍人ですから。鍛え方が違うのですよ」
「さすがです、千代子様」
「照れますね。でも、本当にすごかったのは坊っちゃんと伍様ですよ! あのレッドドラゴンを一撃ですよ、一撃!」
根っからの武人らしく、千代子は昨日の戦いについて熱心に語る。
語りながらも手は止めず、魔法のような速度で一品、二品と仕上げてしまうのは、さすがの手腕である。
「旦那様、起きてきませんね」
「伍様、それ、いいですね」
「え?」
「だ・ん・な・さ・まっ」
「~~~~っ!」
「鍋の火は私が見ておきますから。坊っちゃんを起こしに行っていただけますか、奥様?」
「もうっ、千代子様ったら」
厨房を出て、寮棟に入り、伍はいそいそと五階へ上がる。
誰かを起こしに行くのがこんなにも心躍るものだとは、伍は知らなかった。
――コン、コンコン
「おはようございます、旦那様。朝食のご用意ができました。……旦那様? まだ眠っていらっしゃるのでしょうか? 中に入りますよ?」
伍がドアノブを回しかけたとき、
「は、入ってくるな!」
と、部屋の中から返事。
だが、妙に声が高い。
「旦那様、もしやお風邪でも召したのですか? 境様にお願いして治癒巫術を――」
――ドンガラガッシャーンッ!
部屋の中から激しい音が聴こえてきた。
「旦那様!?」
伍は慌てて部屋に入る。そして、
「……え?」
言葉を失った。
部屋の中に、デウスではなく、見知らぬ男児がいたからだ。
しかも、その男児がベッドから転げ落ちていたからだ。
「ぼ、僕ちゃん、大丈夫!?」
伍は男児に駆け寄り、抱き起こす。
金髪赤眼のその男児は、背丈は伍より一回り低いくらい。
年は十歳前後だろうか。
「あー……大丈夫だ。大丈夫ではないが」
居心地悪そうな様子で、寝間着姿の男児が言った。
なんだか妙に大人びた口調だ。
「大丈夫なら、よかったです。それにしても、ここはデウス様のお部屋では? デウス様はいずこに?」
「…………。……。……ここだ」
消え入りそうな声で、男児が言った。
「……え?」
「ここだ。俺が、阿ノ九多羅デウスだ」
「えぇえええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
仰天の伍。
どうしてよいか分からず右往左往してから、デウスを名乗る男児を抱っこした。
大した重さは感じなかった。
境が身体強化系の巫術で補助してくれているのかもしれない。
が、今の伍はそれどころではない。
「ちょっ、伍!?」
――ドドドドドッ
恥も外面もかなぐり捨てて、伍は全力で廊下を走った。
階段を駆け下り、本棟一階の厨房へ駆け込む。
「ち、ちちち千代子様! 旦那様が小さくなってしまいました! ど、どうすれば!?」
千代子が固まった。が、それも数秒のこと。
千代子とデウス少年の間で、何やら意味深な視線が交換されたあと、二人同時に、
「「あー……」」
と言った。
千代子は、呆れのこもった声色で。
デウス少年は、あきらめのような感情がこもった声色で。
「だから言ったんですよ、坊っちゃん。さっさと明かしてしまいなさい、って」
「あー、うん……説教はあとにしてもらっていいか?」
どうやら、デウス少年はデウスその人で間違いないらしい。
「はぁっ、はぁっ……はぁぁあ~?」
デウスを抱き上げたまま、伍は首を傾げた。



