四季神家の【五】女は年下夢魔軍神に溺愛される

「……うれしい」

 伍が、微笑んだ。
 それは惚れ惚れするほどの、
 魅力的で、
   蠱惑的で、
     退廃的で、
       倒錯的で、
         悪魔的な笑顔だった。

 伍のへその下――丹田(たんでん)が輝き出す。
 その輝きが伍の全身を包み込み、デウスは伍を直視できない。

「伍!? この光は――んむっ!?」




 口づけ、された。




「んっ、んんっ――」

 伍の舌で、無理やり口をこじ開けられた。
 ドロリと甘いナニカが、デウスの中に流れ込んでくる。

(これは――霊力!? それも、なんて濃厚なっ)

「ぷはっ。伍、どうした、どうなっているんだ、これは!?」
「分かりません、そんなこと。ただ、わたくしはうれしいのです。デウス様は、これからも末永く、わたくしのことを使ってくださるおつもりなんですよね?」
「使って……というか、支えてくれるとうれしいが――んむっ!?」

 また、暴力的な量の霊力がデウスの中に流し込まれる。
 デウスは頭がクラクラしてきた。
 官能的な口づけ、
   消極的だと思っていた伍の変貌、
     伍の蠱惑的な笑顔――。
 そういった要素の数々がデウスを極度の興奮状態にさせているのもある。
 だが。
 だが、それよりも!

(霊力酔いだ! 霊力飽和で霊体が破裂寸前になったときに起きる症状! この俺が? 毎日毎日、霊力不足に悩まされていた、この俺が!?)

「わたくしは、これからもデウス様のおそばにいさせていただけるのですね? 今さら二言は許しませんよ」
「あぁ、あぁ。お前が納得してくれた以上、二言はない。それより今は――」
「はい。いってらっしゃいませ、旦那様(・・・)。どうぞ、ご存分に」

 デウスは立ち上がり、戦場のほうへ振り返った。
 一歩進み、二歩目で脚に力を入れた。たったそれだけのことで、無詠唱で重力軽減の術式が発動し、三歩目にはデウスは夜空にいた。

(なんて力だ。万能感? 全能感? そんな陳腐な言葉じゃ表現しきれない)

 デウスは夜空を駆ける。
 あっという間に、最前線にまで到達した。

「旅団ちょ――ぼっちゃん!? どうしたんですか、そのとんでもない量の霊力は!?」

 巌が『旅団長』呼びを忘れるほど驚く。

「話はあとだ。すみやかに全軍を遅滞防御させろ」
「ははっ」

 巌の統率で、第七旅団全軍が一糸乱れぬ運動を開始する。
 レッドドラゴンの攻撃を受け流しつつ、デウスと敵の一対一の対決を実現させるべく、レッドドラゴンを誘導する。

 ――ゴォァアァアアアアアアアアアアアッ!

 デウスの目の前に、レッドドラゴンが降り立った。

「【御身の手のうちに・御国と・力と・栄えあり】」

 今やデウスの全身は、彼の極大霊力を注ぎ込まれた村田銃は、夜の居留地を煌々と照らしている。

「【永遠に尽きることなく――AMEN】」

 デウスが引き金を引いた。




 次の瞬間、居留地に太陽が現れた。




 太陽、と見まごうほどの超巨大な光が銃口から射出され、レッドドラゴンを飲み込んだ。
 レッドドラゴンが――デウスたちを数ヵ月来苦しめ続けてきたはずの強敵が、跡形もなく消し飛んだ。
 デウスたちは、勝ったのだ。




   ◆   ◇   ◆   ◇