四季神家の【五】女は年下夢魔軍神に溺愛される

『やいやいやい、てめぇ、阿ノ九多羅(あのくたら)家の小僧が』

 ――ドロンッ

 と、(さかい)が姿を現した。

『生娘の唇を断りもなしに奪うたぁ、いったいぜんたいどういう了見だ!?』

 デウスが目を見開いた。

「驚いた。あなた様が、(いつつ)の霊力の源ということですか」
『伍・さ・ん、だろ? さっそく亭主面か、ああん? 伍を泣かせやがったら、消し炭にしてやるからな』
「さ、境様っ」

 伍は二人の間に割り込む。

「抑えて、抑えて。このお方は、わたくしを助けるために霊力を吸い上げてくださったのですから」
「デウスだ」

 今度はデウスが伍と境の間に割り込んできた。

「え?」
「俺の名前は、デウスだ」
「あ、えっと……阿ノ九多羅家ご当主様?」
「デ・ウ・ス」
「で、デウス様っ」
「よろしい」
『をーいをいをいをい』

 今度は境が二人の間に割り込む。

『神を差し置いて、なぁに勝手にイチャついてやがる?』
「い、イチャついてなんて……!」
『――阿ノ九多羅の小僧』

 境の声が真剣味を帯びた。
 デウスが居住まいを正す。
 釣られて、伍も背筋を伸ばした。横抱きにされているままなので、滑稽な姿勢になってしまったが。

『お前に伍を託して、本当に大丈夫なんだろうな? 伍を粗末にするようなことがあれば、消し炭だからな』
「お任せください、神様」

 デウスが恭しく頭を下げた。

「命懸けで、伍を守ることを誓います。伍を幸せにすることを、誓います」

 境とデウスの視線が交錯する。
 やがて、境が視線を外した。

『ふー……伍、いいか、よく聞け』
「は、はいっ」
『俺様はな、「人は人と交わって生きていくべきだ」と思っている。だから、お前さんがまともな交友関係の中にいる限り、俺様は極力出てこねぇようにする』
「えっ……それって、境様がどこかへ行ってしまわれるということですか!?」
『安心しろ。そばにはいるし、今までどおり霊力操作の補助もしてやる。けど、俺様とばかり話してちゃ、お前さんはいつまで経っても新しい環境に馴染めないだろう?』
「境様……」
『つーわけで、俺様はしばらく寝る。千年眠り続けてたんでな。久々に数日起きてたら、疲れちまった。じゃあな』

 境が姿を消した。

「よい神様だな」
「ええ、ええ、本当に」




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