末永くお鈍いもふしてあげます

 夜の光が、斜めに空を流れている。
 そうだった。色々と上手くいきますようにって、流れ星にもお願いしたんだった。
 今になってなんで思い出したんだろう。
 夜光石──夜の光の話、したからからな。光輝といつかに一緒に見たホタルもキレイだったし、ほら、夜空には、ピカピカ光る、あれ……?
 夜空に光はない。果てしない暗黒が、視界を心までも塗りつぶしていく。
 布団が勢いよく蹴り飛ばされた。純夜は息を切らしながら、自分の夢見の悪さを呪う。
「なんで当日にこんな夢〜!」
 兎神さまにお願いしてしまうというやらかし以外、祭りの当日まで完ぺきな流れで、すべてが上手くいく予感で満ちていたはずなのに。
 不穏な幕開けに、純夜は逸る胸を押さえこんで、弾んだ息を整える。
 隣でいつも一緒に寝ているうさぎのぬいぐるみ、もふこみゅーるを抱き抱える。ふかふかしていて、安心感を覚える。
 しばらくそうしてぬいぐるみを抱えながら、悶々としていた純夜は、代依に「朝ご飯、できたよ」と呼ばれて「ハッ!」と声を上げた。
 しおしおになりながら、朝ご飯を口にする。どれもおいしいはずなのに、悪夢のせいで気が気でなくて、味がしない。
「すみくん、悪い夢でも見たの?」
「う、うん……」
 「ちょっと待ってて」と言いながら、代依は立ち上がって、キッチンに向かう。引き出しを漁って、手に小瓶を持って帰ってきた。
「はい、これ」
 渡されたのは、カラフルな小さいトゲトゲしたものがいくつも入っている、小さな瓶だ。
「これはね、不安なときや怖いなって思ったときに、一つ、口に入れるの」
 代依が瓶のフタを開けて、中身を一つ、手のひらに出した。
「はい、あーん」
 反対の手で摘まんで、代依はその粒を純夜の口に入れた。
「ごめん。つい、子どもの頃の癖で」
「ん! これ、小っちゃいとき、もらってたやつ!」
 懐かしい味がする。思い出した。
 泣いてたとき、不安でどうしようもなかったとき、怖くて震えていたとき。よい兄がいつもこの、魔法の粒を口に入れてくれて、じんわりと甘く染みて、心がほどけていた。
「これ、なんて言うの?」
「ふふ。魔法の粒だよ」
 代依が微笑みながら小瓶を突いた。
「空になったらまた詰めてあげるね」
 純夜に小瓶が差し向けられる。「うん。ありがとう」と手にして、手のひらで、瓶を転がしてみた。
 カラコロと音が鳴って、音が楽しい感じで、見た目も半透明でカラフルでキレイだ。甘いから、たぶん、なにかのお菓子なんだろうけど。
 魔法の粒。おまじないみたいで、ステキな響き。
 本当の名前を聞いたら魔法が解けてしまう、そんな気がして、純夜はあえて聞かないことにして、小瓶を眺めた。