雨男 ✕ 雨女

「ママ、私ね…『変』なのかもしれない…」
 娘の言葉に、私は驚いてしまいます。
「何か学校で有ったの?」
 私の問いにしばらく沈黙していた娘。

 5分ほど沈黙が続いた後、娘は言葉を紡ぎだす。
「あのね、今日…ゆっ君にフラれちゃったの…。」
 私は娘の目を見ながら黙って頷く。
 ゆっ君というのは、娘が幼稚園の時から一緒に遊んでいた、文字通り『幼馴染』の男の子。

「それからね…。」
 娘の顔が急に朱に染まる。
「同じクラスの男の子に告白されたの!」
 私はゆっくり頷いた。
 ああ、この子も私と同じ道を歩もうとしている。

「そしたら、急に身体と顔が熱くなっちゃって…。」
 娘の目が潤む
「お返事を先延ばしした訳ね?」
 私の言葉に娘は頷く

 また、沈黙が流れる。

「貴女はどうしたいの?」
 私は娘に問いかける
「…どうしたらいいか、分からない。
 でもね、急に気になり始めたの。」
 娘は涙目で訴えてくる。
 ひょっとして、恋に落ちはじめているのかもしれない。

「何か気になる事でもあったの?」
 更に質問を続ける。
「ほら、私『雨女』でしょ?
 そんな娘と付き合っても良いこと無いよ!って伝えたら…。」
 娘は視線を自分の膝もとに落とし、人差し指同士を合わせてモジモジしだす。
「『俺も雨男だから大丈夫!』って言うの…」
 不意に娘がこちらに振り向く
「変な事を言う子でしょ?」
「ええ、そうね。」
 娘は、また視線を自分の膝もとに落とす。

「でも、何だか嬉しかった。
 自分は否定されてない、肯定されているって。」
 娘の膝に雫が落ちる。
「そしたら、急に顔と身体が熱くなって…。」
「そのまま逃げ帰って来た訳ね?」
 娘は頷き、そんな娘が愛おしくなって、私は彼女を抱きしめた。

「それは、恋の初まりよ!
 大切にしなさい。」

fin