放課後、体育館____
バレーボール部で、他校と練習試合をすることになっていた。
俺は、昼休みの事を引きずったままで、考えないようにしているのに『気になる人がいる』と言った小笠原を思い出してしまう。
「すみません!!」
「気にすんな!」
さっきから、俺のタイミングの悪さで凡ミスばかりしていた。
何やってんだよ! 集中しなきゃ!
先輩からのトスが上がる____
俺は、タイミングを合わせ、ジャンプしボールめがけて腕を振り下ろした。バシッという音と共に、相手チームのコートへボールが鋭く落ちた。
「よし!」俺は、チームの皆んなとハイタッチをした。
あれって……小笠原____?
体育館の入り口付近に、小笠原を見たような気がしてもう一度、目線をやった。
「西里!」
「あ、はい!」
見に来てる訳ねぇか……
俺は、その後、見事に調子が狂いミス連発。一点差で試合に負けてしまった。
クソ! こんなの初めてだ!
*
試合に負けて悔しい気持ちも、失恋して落ち込んだとしても、食べて、寝たら治る方だったのに寝る事も出来ず、鬱々とした気持ちで登校した。
俺は、下駄箱から上履きを取り出してスニーカーを突っ込んだ。
昇降口から教室へ向かう途中、小笠原と女子が一緒にいるのが見えた。
あれって……気になる人って田辺さんだったのか……そっか……
「あの、西里くん」
「ん……何?」
「これ、小笠原くんに渡して欲しいんだけど」
「ああ、『手作り弁当Seven Days』?」
「……うん、そう」可愛い封筒に、可愛い文字で、小笠原くんへと書いてあった。
小笠原には、気になるやついるみたいっていうべきなのか……それとも……
「分かった。渡しとく」
あんなに怒らせたのに……俺、何やってんだろう……
*
手作り弁当最終日____
こんなに気分が沈んでるのに腹は減る。きっと、頭ん中でぐるぐる考えてるせいで、いつもより早い時間に、弁当を食べたのもそのせいだ。
腹が減ってるのに____何が食べたいのか分からない____
「はぁ……売店行こ」俺は、独りごちて売店へ向かった。
「西里!」小笠原は、弁当を持って駆け寄ってきた。
「弁当……食べよ」
「……なんで?」俺は、田辺さんがいるじゃないかと、いいかけたが、その言葉を飲み込んだ。
「約束だろ?」
「そうそう!そうだったな!」俺は、笑ってみせて、小笠原と家庭科室の校舎裏へ向かった。
何を話せばいいか分からず、いつも小笠原と何を話してたのか、考えだけど思い出せないでいると俺の腹が鳴った。それを聞いた小笠原が笑う。
「……そ、そんな笑う事ないだろ」俺は、恥ずかしくて顔が熱くなった。
「……かわいい。あ、これ」小笠原は、慌てて弁当を差し出した。
ん?? 今かわいいって言ったか?
「おお、いただきます」
俺は、いつもと様子が違う小笠原を横目で見ながら、大好物である鶏の唐揚げを箸で摘んで口へ放り込んだ。美味しい筈なのに味がしない____
さっきからずっと見られてるから……
「……何? そ…そんな見られたら食いづれ……」俺は、大好物のピーマンの肉詰めを箸で摘んで頬張った。
「西里、俺の事好き?」
「ゴホッ! はあ!」
「大丈夫?」小笠原は、俺のことペットボトルの蓋を開け差し出した。俺は、それを奪うように取り飲んだ。
「変な事いうなって! な…なんでそうなんだよ!」
「じゃ、なんで泣いてんの?」
「はあ?泣いてない……泣いてないよ…俺、ピーマン苦手だったけど…好きになれたから…もう食べれないと思うと……」 」俺は、鼻を啜り滲む視界の中、再びピーマンの肉詰めを頬張った。もう限界で、弁当を持ったまま泣いてしまった。
小笠原は、俺の手から弁当を取ると抱きしめた。
「俺は、西里の事好きだよ」
「え!? 田辺さんじゃないのか?」
「なんで田辺が出てくるの?」
「……だって、さっき一緒だったから」
「ああ、手紙の返事してた。弁当食べて欲しい人いるからって」
俺は、それを聞いて、また涙が溢れた。小笠原は、そんな俺を優しく抱き寄せる。
「俺の泣き虫移った?」
「そうだよ! おまえのせい!」俺は、急に恥ずかしくなって、小笠原の胸辺りをバシバシ叩いた。
「好きだよ……」
小笠原から伝わる体温と、鼓動の速さで分かる。
俺……ドキドキし過ぎて口から心臓出そう……
「……お、俺も好き」俺は、大きい小笠原の背中に腕を回しぎゅっと抱きしめた。
