お試し手作り弁当五日目____
小笠原と昨日、田辺さんから小笠原宛の手紙を渡してから、一言も話してない。SHR後、俺が気付いた時、小笠原はすでに教室には居なかっし、部活前に、なんとなく家庭科室を覗いみた。
「小笠原くん、私用で部活休むって」部員の女子が教えてくれた。
そして、今日、小笠原は、いつもより増して上の空で、憂うというより元気がないように見えた。
クラスの女子達に「小笠原くんどうしたの?」と聞かれるし____俺が知りてぇんだが……
ん……マジでどうしたんだろう……見るからに元気なさそうだし……
流石の俺でも話し掛けづらくて、弁当は諦めて売店に行こうとした時「西里、どこ行くの?」小笠原が声を掛けてきた。
「え? ああ、売店に……」
「……弁当食べないの?」小笠原は、少し辛そうな顔をして、いつもの弁当箱を手に持っていた。
「え? 作ってきてくれたんだ! 食べてもいい?」
「……うん、勿論。そういう約束だろ」
「ああ、そ…そうだったな!」俺は、受け取った弁当の蓋を開けた。
小笠原は、俺の好きな物ばかりを作ってくれる。どれも安定の優しい味。ちょっと気になったのが、卵焼きの形がいつもと違う。よく見ると、小笠原の右手に大きな絆創膏が貼ってあった。
「それ、どうした?」
「ああ、ちょっとね……」小笠原は、苦笑しながらその手を隠した。
「……ん?」俺は、俯いた小笠原の顔を覗き込んだ。
「……っ、ごめん……」
「小笠原? おい!」
小笠原は、椅子から立ち上がり教室を出て行ってしまった。
「ちょっと! また!西里が小笠原くん泣かしたの?」遠巻きに見ていた女子達が詰め寄ってきた。
「はぁ? ちげぇし! 」
俺は、残りの弁当を平らげ小笠原を追いかけた。
*
家庭科室の校舎裏。小笠原は、大きい体を縮めて座り込んでいた。
「小笠原……俺、弁当作ってって軽い気持ちで頼んだけど……本当は、嫌だったんじゃないのか?」俺は、小笠原の隣に座った。
「……そうじゃない。実は……卵焼き上手くできなくて、いつも母さんが作ってくれてた。今日は、全部自分で作りたかったのに、上手く出来なくて……」小笠原は、焦るとダメなんだと、絆創膏の貼られた手を強く握った。
俺は、その手に弁当箱を握らせて両手で包んだ。
「小笠原の弁当美味しいって言ったよな? 今日もすっげぇ! 美味しかった! だから泣くな!」俺は、小笠原の頭をポンポン撫でた。
「……うん…ありがとう」小笠原は、持っていたタオルで涙を拭い笑った。
お試し期間、後二日か……俺のこと思ってここまでしてくれてるのに、俺だけのために作って欲しいだなんて____
こんなのおかしいよな……
