20の差は遠くて




 今日も『家庭科部の貴公子』小笠原は、ため息なんか吐いて憂いていた。
 最近、そんな小笠原を心配していた女子達が、話し掛けるより遠目で見守り始めた。『憂う貴公子』もいいと、他クラスの女子達が見に来るくらいだ。

 皆んなが思う程、自信がなくて、自分が作った料理を食べて欲しいと言えない。本当は、努力して料理が上手くなったこと。

 小笠原のそういう部分知らないんだろうな……

 *

 俺の家族は、訳あって、俺と母さんと年の離れた弟と、ばあちゃん家で暮らしてる。
 高校生になる前に『バレーボール部』をやめようと思っていた。今、本当に続けられているのは、母さんが続けなさいっていってくれたからだ。ばあちゃんも、応援してくれて毎朝、弁当を作ってくる。大変なのが分かっているから『足りない』って言えなかった。
 だからあの時、小笠原が誰かに料理食べ欲しいって聞いた時、ラッキーみたいな軽い気持ちで頼んだんだ。

 食いしん坊も程があるだろって……

「あの……西里くん?」
「……ん?」
 日直の田辺さんが、重そうに持っていたクラス全員のノートを俺が代わりに持って、一緒に職員室まで届けに行った。

「ありがとう」
「ああ、いいっていいって!」

 田辺さんやっぱ可愛いな……

「西里くんって小笠原くんと仲いいよね?」
「うん、まぁそうだけど」俺は、なんだか後ろめたい気持ちになった。
「これ、渡してくれる?」と可愛い封筒を俺に差し出した。

 これってもしやラブレターってやつ!?

「えっと、小笠原に?」
「……うん」

 ですよね……田辺さんも小笠原か……ま、俺は、お試しだし田辺さんなら……

「分かった! アイツ絶対喜ぶよ!」俺は、小笠原宛の手紙を受け取った。

 俺推しなんだから小笠原だって喜ぶに違いない!

 と思ってあの日、小笠原の手作り弁当を食べ終えた後「そうそう! 早速、小笠原にって!」田辺さんから頼まれた手紙を机の上に置いた。
「何……これ……」小笠原の顔が、あの時の沈んだ表情になった。
「あの可愛い田辺さんからだぞ! 嬉しくないのかよ!」俺は、念押しするように小声で言った。
「……うん、そうだね。でも、これからは、こういうのいいから」小笠原は、眉間を寄せて苦笑した。


 なんだよ! 喜んでくれると思ったのに……