20の差は遠くて




 お試し手作り弁当二日目____


 俺は、クラスの女子が見守る中、小笠原が作った弁当の蓋を開けた。

「わあ! 美味しそう!」俺が言う前に取り巻きの女子が言った。
「美味しそうじゃなくて、美味しいに決まってるだろ!」

 美味しいのは、俺が一番知ってんだからな!

「大袈裟だな……」小笠原は、恥ずかしいのか猫背を更に縮こませた。
「いただきます! ん! これうっま!」俺は、丸いコロッケを一口食べて驚いた。
「キャベツと挽肉のコロッケ……昨日の残りモノだけど……」
「へぇ……夕食にこれで出来たら最高過ぎる!」俺は、美味し過ぎて次々に、弁当のおかずを箸で摘んで頬張った。あっという間に、弁当の中身がなくなり、切ない気分になりながら「ご馳走様!」と手を合わせた。
「今日もめちゃくちゃ美味しかった!」
「西里がいっぱい食べてくれるから……作ってて楽しい」小笠原は、照れ臭そうに笑った。
 こんなに料理が好きなんだから、お試しの俺じゃなくて、小笠原の料理食べたいって本気で言ってくれる人出来たらいいな。

 ま、食いしん坊の俺としては残念だけど……

 *

 三角巾と家庭科の授業で、作ったエプロンを着用しての家庭科実習。初めてのミシンに苦戦したが、上手く出来たと思う。
 今日は、グラタンとポテトサラダを作る調理実習だ。
 二班で、グラタンを作る係と、ポテトサラダを作る係に分かれて作業開始。
 俺は、グラタン担当で、マカロニを茹でる係を任された。小笠原は、同じくグラタン担当で、食材を切る係担当だ。包丁で、玉ねぎを軽快に切っていて、女子達から驚きの声が上がっていた。
 小笠原は、料理だけじゃなく、ミシンも器用に使いこなしていて、手本並みの出来栄えに先生も驚いていた。

 流石『家庭科部の貴公子』だな……

「これって、水どんくらいなん?」俺は、レシピを見ていたら、同じくグラタン担当の男子が「三リットルって書いてあるよ」と教えてくれた。
「サンキュー! あ! この鍋でいいや!」俺は、メモリのある鍋に三リットルの水を入れて火を点けた。
「西里、沸騰したら塩入れて茹でるだって」さっきの男子が教えてくれた。
「了解! 茹で時間は……九分っと」俺は、お湯が沸くまで暇で、なんとなく小笠原の方へ目線をやった。
「小笠原くん、これも切って」女子達に言われていて、結局、小笠原が食材を全部切っていた。
「おまえらずりぃ!」
「だって、小笠原くんが作った方が美味しいじゃん」と取り巻きの女子達。
「それはそうだけどさ……あ! やべっ! お湯沸いてる!」俺は、塩とマカロニを入れ、タイマーをスタートさせた。
「西里、大丈夫なん?」不安な声が聞こえた。
「大丈夫! 余裕!余裕!」俺は、長い箸を持って鍋の中をぐるぐる掻き回した。
 炒め担当の女子達が「小笠原くん、どれから炒めたらいい?」とか聞いて、小笠原が手際良く炒め、マカロニ入れる段階まで全て作っていた。
「マカロニどう?」小笠原は、茹でてる鍋を覗いた。
「あ! 出来た! 」俺は、タイマーを止めた。洗い物担当に「マカロニ出来た!」というと小笠原がザルを持ってきてくれた。
「サンキュー!」俺は、ザルに勢いよく鍋の中身をひっくり返した。
「熱っ!!」
 その勢いで跳ね返った熱湯が、鍋つかみをしてる手にかかった。
「え!? 大丈夫?」洗い物担当の女子が言った。
 小笠原は、俺の手から鍋つかみを取って手を流水に当てた。
「……大丈夫?」
「え? うん……」俺は、小笠原の対応の速さに驚いた。

 なんか……小笠原と距離が近い……

「あ! ほら! 大丈夫! 続き作ろ!」俺は、小笠原から離れ火傷した手を見せた。
「……本当に?」小笠原は、心配そうな顔をした。
「平気! 平気!」俺は、茹で上がったマカロニをコンロへ持っていき炒め担当に渡した。

 さっきの落ち着かない感じ? あれなんだろう……

 *

 無事に、マカロニグラタンとポテトサラダが出来上がった。

「ポテトサラダのハム切ったの誰? めっちゃ繋がってる」班の男子が言った。
「味は、美味しんだからいいでしょう!」隣の班から抗議する女子。両班から笑いが起こった。
「ん! マカロニグラタンめっちゃ美味しい! 流石! 小笠原くん!」二班の女子達から絶賛の声。
「おい! マカロニ茹でたの俺だかんな!」ドヤ顔の俺。
「西里は、茹でただけじゃない!」
「ほとんど小笠原作らせたくせに!」俺は、炒め担当と、切る担当の女子達に言ってやったら「美味しんだから別にいいじゃない!」としらばっくれやがった。

 どうせ! 小笠原の料理が食いたかったんだろ! 旨いに決まってるじゃないか!

「小笠原、皆んな美味しいって……良かったな!」小声で隣に座る小笠原に言った。

「……そうだね…嬉し」小笠原は、一瞬、沈んだ表情をして微笑んだ。
 
 なんか嬉しそうじゃない? あれ? 俺なんか変なこと言ったか?