俺は、見てしまったのだ。同じクラスで『家庭科部の貴公子』と呼ばれている小笠原 遼が、校舎裏で静かに泣いているところを____
悩みなんてなさそうなやつがなんで!?
俺こと、西里祐希は、バレーボール部のアウトサイドヒッターだ。
身長175cmの俺と比べて、小笠原は、190cmは超えているだろう身長と、手足の長さ、顔良し! スタイル良し! 俺とは正反対に属する生き物だ。
あの体格なら、迷わずバレーボール部に入るけどな……
ま、それがあったから、努力し今があるのだけれど____
*
昼休みの教室。いつものように『家庭科部の貴公子』は、女子達に囲まれていた。
「小笠原くん、今日のお弁当は?」
「ああ、大したものじゃないよ」小笠原は、弁当の蓋を開けた。
「え!? すごっ! これ全部作ったの?」女子達が驚きの声を上げた。
「昨日の残りモノだし……」
「へぇ〜〜どれどれ」俺は、小笠原の手作り弁当を覗き、卵焼きを指で摘んで口に放り込んだ。
「 うっま!」俺好みの味付けだった。
「ああ! 西里が小笠原くんの卵焼き食べた! まだ、食べたことないのに!」女子から猛攻を受ける。
「はぁ? 一つぐらいいだろ! な! 小笠原……」
ぎょ……えっ!? やべぇっ!
小笠原は、耳まで真っ赤になって泣きそうな顔していた。
「小笠原くんどうしたの?」
「西里! 小笠原くんに謝りなさいよ!」
「ご…ごめんて……なんか食ったらダメだったか?」
小笠原は、急に立ち上がり俺より十センチ、いや、二十センチ上から「……これ、良かったら弁当食べて!」と言った。
「え! いいの? ラッキー!早弁したから昼飯なかったんだよな〜〜」俺は、差し出された弁当を受け取った。
「小笠原くん! 何処行くの?」
小笠原は、何も言わず教室を出て行ってしまった。
「も〜〜西里が悪いんだからね!」一部の女子達は、小笠原を追いかける。
俺は、そんなのお構いなしに、貰った弁当を小笠原の席に座り食べた。
「ん〜〜! うっま!」
唐揚げは、分かったけど、その他の料理名は分からなかった。が! どれも美味しかった。
「私にも頂戴!」
「嫌だよ!」俺は、貰った弁当を女子達から守った。
「え! 狡い!」
俺は、羨む女子達が見る中、おかずにご飯、全て食べ切って「ああ〜〜旨かった!」弁当の蓋を閉じ、ご馳走様と手を合わせた。
小笠原のやつ戻って来ねぇな……
このまま弁当箱を置いとくのもなんだし、貰っておいて礼を言わないのもよくない。
もしかして……
俺は、弁当箱を持ってある場所へ向かった。
家庭科室の校舎裏。でっかい図体を縮めて、座っている小笠原が見えた。
「やっぱり!」
「え!? 西里!どうして……」小笠原は、鼻を啜り慌てて顔を隠した。
「……前にさぁここにいるの見かけたんだ」俺は、少し間を空けて小笠原の隣に座った。
「……うっ…恥ずかしい」更に小笠原は、顔を隠す。
「何があったか知らねぇが、弁当美味しかったよ」
小笠原は、それを受け取ると真っ赤な顔し更に泣き出した。
え!? 大泣きじゃねぇか!!
「なんで泣くんだよ」
「……お…美味しいって言ってくれたから」
「そんなことくらいで泣くなって……」
「だって、僕の作った料理食べたいって言われるけど……結局、皆んな遠慮して食べてくれないんだもん。食べてくれるのは家族だけ」小笠原は、しゃくり上げ愚痴を言った。
こんなに泣いて貴公子台無しだな……
「そうだ! 試しに一週間、俺が食うからお弁当作ってよ!」
「え! 食べてくれるの?」小笠原は、涙目をキラキラさせた。
「おう!いいぜ!」
「……うん、分かった」小笠原は、涙を拭い笑った。


