【平野春休、社畜だけど質問ある?】
熱い緑茶をすすって湯飲みを置いた。
「……でさぁ、いつ帰ってくれるの?」
「……………………おれは、まだ、かっぱ……たべて、ます」
「お前喋るのも食うのも遅いよ。社畜だったら死んでたぞ!」
俺は戦場をビシッと指差す!フッ、決まったぜ。
「ん……おすし、食べて……おふろ、入って……朝に、なったら……かえり、ます……」
「ハァ!?ふざけんな!お゛め゛ぇ゛の゛ベッ゛ドね゛ぇ゛がら゛あ゛! 」
「だ、だいじょぶ、です……て、てつや……します」
「ハァ!!?ミリしらだけどプロレスラーって『体が資本』の職業だろ!?徹夜するとか仕事ナメてんのか!!寝ろ!!!」
「す……すみま、せん……」
「いや、謝る相手俺じゃねーから!お客様だから!」
「ぅ……ありがと、ござます……?」
「いや……ぁの、お礼言われましても、俺のお調子がお狂いあそばせますわといいますか、ですね……そもそもなんで自宅に帰らねーんだよ、マンションで隣の部屋だろ。特に内部構造に違いがあるとも思えんが」
戦場剛力山はうつむいてヒザの上で拳をギュッてした(ああ、ギュッてしたな)
「……トイレ……」
「は?声が小さくて聞こえませーん」
「っ…………トイレ!!!!!!!」
「うぉっ!!バカ!深夜だろ!もっと小さな声で喋れよ!!!!」
戦場剛力山は一息つくと、ぽつぽつと話し始めた。
「と、トイレいけない……です」
「え?なんで?お前のデカケツで壊してトイレ修理中とか?」
「ちがッ!……ちがい、ます……その……ぅ……~~ッ……」
「はよ言え。俺、社畜。明日も仕事なんだけど質問ある?」
「……ぁの、おしごと……やすめない、です、か?」
「お前はBANされてるので質問受付けられませーん」
「……ッ……っ」
ふと見ると戦場剛力山が目のフチに涙を溜めてぷるぷると震えながらこの俺を上目遣いに見ている、この俺を……って……俺、なんかヤバくないか?……アブない世界というか泥沼に片足がタイタニックしている気がするのだが……気がするだけ、だよな?……『気のせい』だよな?『事実』じゃ、なくて。
「……な、泣くなよ……ほら、ハンケチだぞ、今治産繊維で涙拭けよ」
「……ゃ、やぁらかい……ッ」
ひとしきり涙を拭いて落ち着いた戦場剛力山に改めて俺はたずねた。
「……でさ、なんで『トイレに行けない』ワケ?もう茶化さないから、さ」
「……ぇと……プロレスラーの……ロッカールームで……『俺は強い』っていう『武勇伝』自慢になった、です……『俺はベンチプレス300kg挙げれる』とか……『俺は熊さんと闘った』とか……」
「どこの業界も同じだな……社畜も集まりゃ『俺は七徹なう』とか『納期10分の仕事を頼まれた』とか……似たようなもんよ」
「そ……そですか、ね?……で……誰かが言っちゃって……
……『俺は幽霊を倒したことがある』……って」
「ゆうれい」
唐突な怪奇現象ワードに俺は目を見開いた。
「そッ、そこからッ……どんどん、話が……『心霊スポットでイケ顔ダブルピース写真を撮った』とか……『ひとりかくれんぼがログインボーナス貰える俺のデイリーミッション』とか……は、はなしが、どんどん、どんどん……こわ、へ……へんなほうこう、に……」
「え?それでまさか?」
「……はい」
「いやナニ甘えてんだよ。ちゃんと言葉にするまで俺は認めねぇぞ」
「~~ッ……ぅ、あ……っ……
……おばけ、こわくて……トイレ、いけま、せん……ッ~~~」
言葉を失った戦場剛力山が『ぽかぽか』と俺を殴ってくる……いや本人的には『ぽかぽか』のつもりなのだろうが……実際は『ぼかすか』というレベルに力が強く……痛い痛い痛いって!
「サーセン、マジで痛いです勘弁してください」
「…………」
「なんだよ、やめろよ……おい……ねぇってば」
「……ほ、ほねを、折られたくなかったら……い、いっしょに……トイレに……行って、ください」
「はぁ!!?」
「ひ、平野さんがッ、い、いっしょに……トイレに行ってくれる、まで……おれは、なぐるのを、ゃ、やめない……ッ!」
「やめろダボが!!!おい、マジでやめ……ッ」
――正直、俺、舐めプしてました。
戦場剛力山は身長2m超えの屈強な悪役プロレスラーですが、実際に話してみるとかわ……いい、というよりは、愚鈍でノロマな口下手なので「どんくさい奴だなぁ」と勝手に俺がリードしている気でいました。
正直、自分より強い相手を屈服させるのは気分が良かったです。
でも、父さん、母さん、ごめんなさい。俺は調子に乗り過ぎました。
戦場剛力山が『ぽかっ』と俺を殴るたびに『ぐぉりっ』と骨が軋む音がします。
故郷の妹にも伝えて下さい。仕事が忙しくて新品未開封のままの『何天堂スゥイッチ2』と『もこ あ モケモン』をお前と一緒に遊びたかったですと――
「トイレ一緒に行くわ!!!!!!!!!!!」
戦場剛力山は俺をなぐる手を止めた――ここで死んでたまるかよ!!!!!!
熱い緑茶をすすって湯飲みを置いた。
「……でさぁ、いつ帰ってくれるの?」
「……………………おれは、まだ、かっぱ……たべて、ます」
「お前喋るのも食うのも遅いよ。社畜だったら死んでたぞ!」
俺は戦場をビシッと指差す!フッ、決まったぜ。
「ん……おすし、食べて……おふろ、入って……朝に、なったら……かえり、ます……」
「ハァ!?ふざけんな!お゛め゛ぇ゛の゛ベッ゛ドね゛ぇ゛がら゛あ゛! 」
「だ、だいじょぶ、です……て、てつや……します」
「ハァ!!?ミリしらだけどプロレスラーって『体が資本』の職業だろ!?徹夜するとか仕事ナメてんのか!!寝ろ!!!」
「す……すみま、せん……」
「いや、謝る相手俺じゃねーから!お客様だから!」
「ぅ……ありがと、ござます……?」
「いや……ぁの、お礼言われましても、俺のお調子がお狂いあそばせますわといいますか、ですね……そもそもなんで自宅に帰らねーんだよ、マンションで隣の部屋だろ。特に内部構造に違いがあるとも思えんが」
戦場剛力山はうつむいてヒザの上で拳をギュッてした(ああ、ギュッてしたな)
「……トイレ……」
「は?声が小さくて聞こえませーん」
「っ…………トイレ!!!!!!!」
「うぉっ!!バカ!深夜だろ!もっと小さな声で喋れよ!!!!」
戦場剛力山は一息つくと、ぽつぽつと話し始めた。
「と、トイレいけない……です」
「え?なんで?お前のデカケツで壊してトイレ修理中とか?」
「ちがッ!……ちがい、ます……その……ぅ……~~ッ……」
「はよ言え。俺、社畜。明日も仕事なんだけど質問ある?」
「……ぁの、おしごと……やすめない、です、か?」
「お前はBANされてるので質問受付けられませーん」
「……ッ……っ」
ふと見ると戦場剛力山が目のフチに涙を溜めてぷるぷると震えながらこの俺を上目遣いに見ている、この俺を……って……俺、なんかヤバくないか?……アブない世界というか泥沼に片足がタイタニックしている気がするのだが……気がするだけ、だよな?……『気のせい』だよな?『事実』じゃ、なくて。
「……な、泣くなよ……ほら、ハンケチだぞ、今治産繊維で涙拭けよ」
「……ゃ、やぁらかい……ッ」
ひとしきり涙を拭いて落ち着いた戦場剛力山に改めて俺はたずねた。
「……でさ、なんで『トイレに行けない』ワケ?もう茶化さないから、さ」
「……ぇと……プロレスラーの……ロッカールームで……『俺は強い』っていう『武勇伝』自慢になった、です……『俺はベンチプレス300kg挙げれる』とか……『俺は熊さんと闘った』とか……」
「どこの業界も同じだな……社畜も集まりゃ『俺は七徹なう』とか『納期10分の仕事を頼まれた』とか……似たようなもんよ」
「そ……そですか、ね?……で……誰かが言っちゃって……
……『俺は幽霊を倒したことがある』……って」
「ゆうれい」
唐突な怪奇現象ワードに俺は目を見開いた。
「そッ、そこからッ……どんどん、話が……『心霊スポットでイケ顔ダブルピース写真を撮った』とか……『ひとりかくれんぼがログインボーナス貰える俺のデイリーミッション』とか……は、はなしが、どんどん、どんどん……こわ、へ……へんなほうこう、に……」
「え?それでまさか?」
「……はい」
「いやナニ甘えてんだよ。ちゃんと言葉にするまで俺は認めねぇぞ」
「~~ッ……ぅ、あ……っ……
……おばけ、こわくて……トイレ、いけま、せん……ッ~~~」
言葉を失った戦場剛力山が『ぽかぽか』と俺を殴ってくる……いや本人的には『ぽかぽか』のつもりなのだろうが……実際は『ぼかすか』というレベルに力が強く……痛い痛い痛いって!
「サーセン、マジで痛いです勘弁してください」
「…………」
「なんだよ、やめろよ……おい……ねぇってば」
「……ほ、ほねを、折られたくなかったら……い、いっしょに……トイレに……行って、ください」
「はぁ!!?」
「ひ、平野さんがッ、い、いっしょに……トイレに行ってくれる、まで……おれは、なぐるのを、ゃ、やめない……ッ!」
「やめろダボが!!!おい、マジでやめ……ッ」
――正直、俺、舐めプしてました。
戦場剛力山は身長2m超えの屈強な悪役プロレスラーですが、実際に話してみるとかわ……いい、というよりは、愚鈍でノロマな口下手なので「どんくさい奴だなぁ」と勝手に俺がリードしている気でいました。
正直、自分より強い相手を屈服させるのは気分が良かったです。
でも、父さん、母さん、ごめんなさい。俺は調子に乗り過ぎました。
戦場剛力山が『ぽかっ』と俺を殴るたびに『ぐぉりっ』と骨が軋む音がします。
故郷の妹にも伝えて下さい。仕事が忙しくて新品未開封のままの『何天堂スゥイッチ2』と『もこ あ モケモン』をお前と一緒に遊びたかったですと――
「トイレ一緒に行くわ!!!!!!!!!!!」
戦場剛力山は俺をなぐる手を止めた――ここで死んでたまるかよ!!!!!!
