【執筆中】オバケ怖くて夜トイレ行けないプロレスラー(つよい)【間に合うのか!?】

【結界、決壊】

「ココアでいい?」
「………………………おかまいなく」
「え?俺のココアが飲めないっていうの?」
「………………………いただき、ます…………………」

 あつかましくもあがりこんだ巨大な戦場剛力山をぐいぐいぐいとソファのすみに追いやる。
 許されるだろ。これくらいの嫌がらせは。大体ここ俺の家だし。

「お湯割りがいい?牛乳割りがいい?」
「あの……………………………お酒はいらな」
「ココアの話です」
「………………………………お湯、で」

 ほぅ。さすがに深夜突然面識ナシの家上がり込みでコスパ割高の『牛乳割り』は頼めないと……それくらいのわきまえはあるってか。

「はい、どうぞ」
「………………………………」
「ど・う・ぞ」
「ぁ………………………………んくっ、んくっ、んくっ…………………」

 戦場剛力山は正直というかバカというか、 出されたココアを秒で飲み干した。

「………………………おかわり、いる?」
「………………………………い、いい?」
「よっしゃ、おかわりな」
「え……………ぁ…………その………もう」
「はい、どうぞ」
「ぁ……………………………んくっ」
「ゆっくり、飲んでな」
「……………………………は、い……」

 なんで涙目なの、コイツ
 ッカー!俺の淹れるココアが宇宙一美味いことに気付いちゃったか!

「………………………………」
「で、どうする?猫ミームでも、見る?」
「………………………………」
「大体なんで『猫ミーム』はあるのに『犬ミーム』はないんだろうな?」
「………………………………」
「それは『ワンチャンある』で『ネコチャンない』みたいな事なんだろうか?」
「………………………………」
「…………………………おい、戦場?」
「はッ………………………………」

 戦場剛力山の様子が、明らかに、おかしい。
 冷や汗をかいているし、目の焦点が、うつろだ。

「え、なに、これはこれで怖いんですけどwねぇ、大丈夫?」
「ちょっ、ゆす、らなっ…………!」
「えー?きーこーえーなーいー」
「っん、は、あぅ、ぁ、だめっ………」
 俺は無遠慮に戦場剛力山の巨体をゆさゆさと揺する。
「………ちょ、ほ、んとにっ……!」
「ほらほらーぶちまけろー」
「も、だめ、だからあっ!………………………っ!ぁ 」

しょろ……しょろろろろろろろ……………

 ハッキリ言う。
 時が止まった。
 俺、悪くないよね?
 戦場剛力山……悪いの、コイツだよね?

もらしたの、コイツだよね?


「ぁ………あ、ぁ、あ……………」
 もうなんか『尊厳決壊』のお手本みたいな顔で戦場剛力山は自分が粗相する様子を見ていた。
 目にはみるみる涙が浮かび、羞恥やら怒りやらで赤く染まった頬をぷるぷるわななかせている。眉毛は情けなく歪められ信じられないというように口は半開きで……って、なんでこんなに見てんだ、俺。

「……………………………えーと、大丈夫?」
 戦場剛力山がひとしきり『出すだけ出しきった』後、俺は気づかった。
「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「……………………………………」
「………えーと、被害者ヅラしないでくれる?100%完全加害者さん。ここ、俺んちですよ?」
「っひ、被害者ヅラ………………し、して、ないっ……………もん」
 大の屈強プロレスラー(悪役)が泣くなよ………。
「こ、ココアもっ、『いい』って、言ったのにっ、にっ、二杯目……」
「あー、それは日本語という高等原語の罠だわ………………『いいですね!頂きます!』だと思っちゃったのよ、俺………ちゃんと言わなきゃ『もういい。結構です』って」
「も………もう、いい………………」
「いや、今言っても時既におすしだろ………あー寿司食いてェ……お前寿司ネタ、何が好き?」
「………………………かっぱ」
「欲とかないんか」
「…………………っひ、平野、さん、は……………?」
「俺?サーモン一択」
「女子……………………………」
「うるせぇ、女も男も大好きサーモンだろうが……寿司頼むか……おい、お前おごれよ」
「え、あ」
「クリーニング代」
「はい…………………」
 俺は雑巾を取りに立ち上がった。
「あの…………おれも、手伝い」
「うるせぇ、足手まとい。寿司でも頼んでろ」
「…………………はい……………」
 戦場剛力山は、大きな体を縮こまらせて、『スシ口ー(すしくちー)』のWEBサイトを見始めた。