【屈強で凶悪な隣人】
「……おかえり、なさい」
黒い巨人はペコリ、と俺に向かってわずかに小さく会釈した。
黒い巨人――戦場 剛力山(いくさば ごうりきざん)は売り出し中のヒール(悪役)プロレスラーだ。
プロレスは格闘の試合に分かりやすいストーリー性を与えるため、プロレスラーには正義(ベビーフェイス)と悪(ヒール)の役割がある。正統派かつリングの上で正々堂々戦う正義(ベビーフェイス)のプロレスラーに対し、悪役プロレスラーは場外乱闘(怖い)、鎖のチェーンなど各種武器での攻撃(怖い)、パイプ椅子で殴る(超怖い)、フォークで頭を刺す(正気の沙汰じゃない)などが「暗黙の了解(お約束)」として認められている……と、引っ越し初日、俺は戦場さんから聞かされた……考えてみて欲しい。引っ越し初日、これから始まる新生活にワクワク胸をときめかせ、あぁ引っ越し蕎麦頼んでないや、近所のこじんまりとした、でも雰囲気の良い、窯焼きピッツァが食べれるオシャレな個人経営レストランでミートソースたっぷりボロネーゼでも頂こうかしらキャッキャウフフ(σ≧▽≦)σ……おや誰だろう、ピンポンが鳴った、お隣さん?はい、喜んで!なんなら一緒にイタリアン……からの脳天フォークぶっ刺しである。
戦場さんは俺にプロレス界のしきたりやルールを一方的に話すだけ話した後、最後に一言。
「……だから、怖くないです」
いや、怖ぇよ。目が笑ってないんだもん、この人。
……というワケで、さすがに俺も大人なので「露骨に無視」とかはしないが……なんとなく、戦場さんからは距離を置いている、というか、極力、避けている。
「あー……お疲れ様、ですぅ」
久々に一瞬で忌々しい記憶を思い出した俺は早くその場を立ち去りたいと戦場さんにペコリと頭を下げて立ち去
「ネコ、好きなんですか……?」
「ひっ」
立ち去ろうとした俺の腕を「がっし」と掴んで戦場さんが聞いてきた……なんて太い腕だ。プロレスラー距離感バグりすぎ。あの、パーソナルスペースって知ってる?逃がさねぇぞの構えかよ(泣)
「……嫌いじゃ、ない、デス、ね……」
「……………………………」
おい、なんだよ。離せよ。離してくれよ。
「………………………………イヌ、は」
「嫌いじゃ!ない、っすね……」
うわ。思わず食い気味で答えてしまった。殴られたらどうしよう。ぴえん。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
え?怖。何コレ、何待ち?何待ちの時間コレ?
「……………………………………あの」
戦場さんがいつもの控えめな調子で口を開く。俺はごくりと生唾を飲む。
「………………………おれは……………………犬派、です」
「すみません僕は猫派です」
ハッ。なんかやられっぱなしも癪なので言い返して?しまった俺のカバカバ。
「……………………………すみません」
「いえいえそれでは僕はこのへんで戦場さんも雨の中のランニングは結構ですが風邪をお引きになりませんよう帰宅後は即シャワーに入ってご飯を食べてゆっくりしっかり寝落ちしてくださいねさようなら」
なんか腕を離された安堵で色々言わなくて良いようなことまで言ってしまった気もするが俺は足早にその場を立ち去った。
振り返るとポツンと取り残された戦場さんはどこか寂しそうだ。
雨に打たれていることもあり、哀愁がハンパない。
……ちょっとかわいそうだったかな。
いやいや、俺だって雨に打たれてたし!
大体なんでこんな雨の夜中にランニングしてるんだよ体力オバケが!謎すぎるだろ!
ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜんぜんぜんかわいそうじゃない!
そう言い聞かせて俺は家路を急いだ。
「……おかえり、なさい」
黒い巨人はペコリ、と俺に向かってわずかに小さく会釈した。
黒い巨人――戦場 剛力山(いくさば ごうりきざん)は売り出し中のヒール(悪役)プロレスラーだ。
プロレスは格闘の試合に分かりやすいストーリー性を与えるため、プロレスラーには正義(ベビーフェイス)と悪(ヒール)の役割がある。正統派かつリングの上で正々堂々戦う正義(ベビーフェイス)のプロレスラーに対し、悪役プロレスラーは場外乱闘(怖い)、鎖のチェーンなど各種武器での攻撃(怖い)、パイプ椅子で殴る(超怖い)、フォークで頭を刺す(正気の沙汰じゃない)などが「暗黙の了解(お約束)」として認められている……と、引っ越し初日、俺は戦場さんから聞かされた……考えてみて欲しい。引っ越し初日、これから始まる新生活にワクワク胸をときめかせ、あぁ引っ越し蕎麦頼んでないや、近所のこじんまりとした、でも雰囲気の良い、窯焼きピッツァが食べれるオシャレな個人経営レストランでミートソースたっぷりボロネーゼでも頂こうかしらキャッキャウフフ(σ≧▽≦)σ……おや誰だろう、ピンポンが鳴った、お隣さん?はい、喜んで!なんなら一緒にイタリアン……からの脳天フォークぶっ刺しである。
戦場さんは俺にプロレス界のしきたりやルールを一方的に話すだけ話した後、最後に一言。
「……だから、怖くないです」
いや、怖ぇよ。目が笑ってないんだもん、この人。
……というワケで、さすがに俺も大人なので「露骨に無視」とかはしないが……なんとなく、戦場さんからは距離を置いている、というか、極力、避けている。
「あー……お疲れ様、ですぅ」
久々に一瞬で忌々しい記憶を思い出した俺は早くその場を立ち去りたいと戦場さんにペコリと頭を下げて立ち去
「ネコ、好きなんですか……?」
「ひっ」
立ち去ろうとした俺の腕を「がっし」と掴んで戦場さんが聞いてきた……なんて太い腕だ。プロレスラー距離感バグりすぎ。あの、パーソナルスペースって知ってる?逃がさねぇぞの構えかよ(泣)
「……嫌いじゃ、ない、デス、ね……」
「……………………………」
おい、なんだよ。離せよ。離してくれよ。
「………………………………イヌ、は」
「嫌いじゃ!ない、っすね……」
うわ。思わず食い気味で答えてしまった。殴られたらどうしよう。ぴえん。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
え?怖。何コレ、何待ち?何待ちの時間コレ?
「……………………………………あの」
戦場さんがいつもの控えめな調子で口を開く。俺はごくりと生唾を飲む。
「………………………おれは……………………犬派、です」
「すみません僕は猫派です」
ハッ。なんかやられっぱなしも癪なので言い返して?しまった俺のカバカバ。
「……………………………すみません」
「いえいえそれでは僕はこのへんで戦場さんも雨の中のランニングは結構ですが風邪をお引きになりませんよう帰宅後は即シャワーに入ってご飯を食べてゆっくりしっかり寝落ちしてくださいねさようなら」
なんか腕を離された安堵で色々言わなくて良いようなことまで言ってしまった気もするが俺は足早にその場を立ち去った。
振り返るとポツンと取り残された戦場さんはどこか寂しそうだ。
雨に打たれていることもあり、哀愁がハンパない。
……ちょっとかわいそうだったかな。
いやいや、俺だって雨に打たれてたし!
大体なんでこんな雨の夜中にランニングしてるんだよ体力オバケが!謎すぎるだろ!
ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜんぜんぜんかわいそうじゃない!
そう言い聞かせて俺は家路を急いだ。
