ボニー・バタフライ・エフェクト

 自慢の長い髪に櫛を通して、お気に入りの白いリボンでまとめる。

 リボンは大好きな彼が、高校に入学してすぐにプレゼントしてくれたもの。
 君の綺麗な髪によく似合うよと、頭を撫でながら褒めてくれたから。だからどこへ行くにも、私はいつもこのリボンばかりつけている。

 制服のスカートは膝丈で。
 あまり短くすると、彼に嫌そうな顔をされてしまう。

 彼は私が一人で電車に乗ることすら不安がるほど心配性だし、ヤキモチ焼きだ。クラスメイトの男子の話をするだけで、すぐにムッとした顔をする。

 年上なのに、時々ちょっと子供みたい。私はしょうがない人だなって思いながらも、そんな彼の態度につい嬉しくなってしまう。

 あんまり束縛が激しいと、嫌がる子もいるんだろうけど。
 私は平気。それだけ愛されてるんだって思えるから。

「もうすぐ私たち、パパとママになるんだね」

 自室の姿見の前で、ブレザーの制服を着た私は両手を下腹にそっと押し当てた。
 ここには芽吹いたばかりの、小さな命が宿ってる。彼と愛し合った、確かな証が。

 だけど、お父さんとお母さんにはまだ内緒。彼氏がいることすら、まだ言ってない。

 だってきっとすごく怒られるし、反対されるに決まってる。もしこの子を堕ろせなんて言われたら、私はきっと生きていけない。

 いつまでも隠し通せるわけじゃないってことは分かってる。お腹が大きくなってくるのも、時間の問題だと思う。そうしたら、きっと学校にも行けなくなるんだろうな。

 でも、彼と一緒なら大丈夫。

 このことを打ち明けたとき、彼はとても喜んでいた。
 私のことを抱きしめながら、必ず守るって誓ってくれた。両親のことも、絶対に説得してみせるから。だから、卒業したら結婚しようって。指切りをして、約束してくれた。

「心配しなくていいからね。パパがきっと守ってくれるから」

 もう少しこの子が大きくなってきたら、お腹を蹴ったりするのだろうか。安定期に入ったら、つわりで苦しむこともなくなるのかな。

 もし女の子だったら、たくさんオシャレをさせてあげたい。お化粧のしかたも、私がちゃんと教えてあげる。

 だけどもし男の子だったら、どんな遊びをしたらいいのかな。姉がいるだけで男兄弟はいなかったし、私にはよく分からない。だからパパに任せよう。

 どちらにしても、彼にそっくりな子になるといい。
 笑顔が綺麗で、みんなから愛される、春風のように優しくて、頭のいい子供に。

「大好きよ。はやくあなたに会いたいな」

 お腹の中で、可愛い赤ちゃんがくすぐったそうに笑った気がした。