きみに会うためのデスゲーム

「あいつら、仲良かったっけ?」
 背後からそんな声が聞こえて、僕の向かいに座る佐久間蓮が、不安げに僕の顔を見た。
「どうしたの?」
 と僕は聞く。
「俺と仲が良いって、思われたくないだろ?」
 僕が兄弟と認めてから、佐久間の態度は大きく変わった。卑屈で無愛想な態度から、僕の機嫌を伺うような、オドオドとした態度に変化した。
 まるで、僕に嫌われるのを恐れているような。
「そんなことないよ。僕たちは兄弟だろ?」
 言うと、佐久間は驚いたように目を見開いた。そしてキョロキョロと周囲を見回す。
「あまり、兄弟だって、言わない方がいい」
 佐久間は「兄弟」の部分を小声で言った。
「俺と兄弟なんて知られたら、室井くんの立場が悪くなる」
「僕の立場なんて守るほどのものじゃない。もともと友達だっていないし」
 不思議だった。彼との血縁をあんなに否定したがっていたのに、広められることを恐れていたのに、今はそんなことどうでもいい。
 逆に、僕に迷惑が掛かるからと、佐久間は僕との血縁をひた隠しにしようとした。
「室井くんは作ろうと思えばすぐに作れる。俺と友達になりたがる奴はいない」
「室井くんっていうの、やめようよ。僕たち兄弟なんだし」
 僕が言うと、佐久間の瞳がわかりやすく揺らいだ。
 彼が「兄さん」と呼びたいのなら、それでも良いと思った。
「じゃあ……綾人」
 佐久間は僕の顔色を窺いながら言った。
「じゃあ、僕は蓮って呼ぶね」
 佐久間は……蓮は恥じらうように俯いた。
「あ、綾人は……優しいな」
 寮室で僕を襲った人間と、同一人物とは思えなかった。
 兄弟だと認めて、寄り添っただけで、彼は僕に従順になった。見た目は誰が見ても美男の彼が、おどおどと僕の顔色を伺う。彼が僕に向ける眼差しは唯一無二で、僕は自分が何か特別な存在になったように錯覚する。
「そうかな」
 ふと、彼の料理が全く減っていないことに気づいた。
「食べないの?」
「……あとで食べる」
 汚い食べ方を気にしているのかもしれない。
「僕は気にしないよ」
 と言っても、彼は箸を持とうとしない。
 僕は自分の皿にある唐揚げを指でつまんで食べた。
「っ……どういうつもりだよ」
 彼は少し怒ったように言った。
「……わからない」
 彼を見ると、戸惑っているような、悲しんでいるような顔をしていた。
「……こうすれば、気にせず食べられると思って」
 でも冷静になったら、すごく失礼なことだと気づいて、僕は「ごめん」と謝った。
「やめてくれ。綾人が周りに変なふうに見られるのは嫌なんだ」
 蓮はそう言って眉根を寄せた。
 蓮は箸を掴んで、ぎこちない動作で唐揚げをつまみ上げようとする。うまくいかず、唐揚げが皿に落ちると、彼は箸で唐揚げを突き刺した。
「箸の持ち方、教えようか?」
「……」
「嫌だったらいいよ。僕は気にしないから」
「……教えてほしい」
 彼の白い頬がほんのりと赤くなる。箸の使い方すら教えてもらえなかった彼の過去を思うと胸が苦しくなった。
「鉛筆を持つのと同じだよ」
 と言って、僕は箸を一本、鉛筆を持つように握った。蓮が真似をする。美しい男が僕に従う。僕の心臓が早鐘を打つ。