きみに会うためのデスゲーム

「室井を探そう。佐久間は室井のために戦ってんだ。室井が死ねば、あいつがロボットを勝たせる理由はなくなる」
 桐谷の声が言った。
「室井……一体どこにいるんだ……」
 三崎の声。
 ふたりの足音が近づいてきて、体がガクガクと震え出した。
「うわっ……なんだこの臭い」
 臭い?
「近づかない方がいい。こんな場所、5分だっていられないさ。他を探そう」
「……そうだな」
 カン
 銃声に、体がビクッと跳ねた。
「嵐士っ!」
「うっ……」
「くそっ……あの野郎っ!」
 カン
 蓮が、戻ってきたのか?
「佐久間っ! 絶対許さないっ……お前だけは許さないっ!」
 階段を駆け上がる音。
 僕はそっとドアの隙間を開けた。すぐ目の前に桐谷が倒れていた。頭から血を流していて、びくともしない。
 体育館を見回して、2階通路に蓮と三崎の姿を見つけた。5メートルほどの間隔で、向かい合ってロアを構えている。ふたりは血まみれだった。怪我をしているのか、返り血なのかはわからない。
 ふいに蓮はガクッと膝を落とした。
「蓮っ!」
 蓮に銃口を向けていた三崎が、僕の声に振り返った。
 カン
 蓮はその隙を見逃さなかった。すかさず三崎に向かって発砲する。
 けれど三崎の反応も速かった。三崎は咄嗟に身を引くと、蓮に向かって発砲した。
「っ……」
 銃弾は蓮の頬を掠った。
 三崎は5メートルの距離を蓮に詰め寄ると、蓮の胸ぐらを掴んで手すりに押しやった。
「ふざけんなっ……人間殺してっ……人間を殺してまでっ、室井を助けたいのかっ! 所詮はロボットだろうっ!」
 蓮の胸ぐらを掴みながら、三崎が怒鳴った。
「人間同士が殺し合ってどうするっ! 俺たち仲間じゃないのかっ!」
 蓮は、ふっと力なく笑った。
「きっと次は仲間になれるさ」
「……次?」
 三崎が怪訝に眉根を寄せた。
 蓮の両手が、三崎の体を包み込む。三崎の切長の目が大きく見開かれた。蓮は全身を使って手すりから身を乗り出すと、三崎を道連れにして、落下した。
 ドスン、と地響きのような大きな落下音。
「蓮っ……」
 僕は急いでそこへ向かった。途中、何度もよろけて、思うように足が動かなかった。
 頭から落下した三崎は、あらぬ方向に首が曲がっていた。即死だった。
「蓮っ……」
 蓮はまだ意識があった。大の字に仰向けに倒れ、頭からじわじわと血液が流出している。
「蓮っ……ああっ……どうしようっ……」
「大丈夫」
 蓮は、うつろな目で天井を眺めながら言った。もうその目は何も映していないかもしれない。
「俺には……次があるから」
 次。
「俺……次は、勝つ。綾人……」
 僕は、蓮の手を握った。
「綾人に会うために……また……」
「また、こんなひどい試験をやるっていうの……? 僕に会うために」
 蓮は「うん」と微笑んだ。大人びた顔に似合わない、幼い笑顔だった。
『卒業、試験、が、終了、しました』
 先生が言った。
「あ、……ああ……蓮っ……蓮っ……」
『生存者は、校庭で、待機。バス到着まで、お待ち、下さい。生存者は、校庭で、待機。バス到着まで、お待ち、下さい』