きみに会うためのデスゲーム

 小学2年生のとき、宿泊していたホテルで火災が起きた。ベルは鳴らなかった。俺たち家族は、宿泊客の「火事だっ!」という声で火災に気づいた。
 廊下に出ると、ボウッと激しい炎が襲いかかってきた。
「こっちだっ!」
 俺と母は父に従い、廊下を走った。階段に差し掛かった時、天井から何かが落ちてきて、母と父が押し潰された。
「パパっ! ママっ!」
 その場で泣きじゃくっていた俺は、ふいに誰かに抱き抱えられた。
「パパとママがっ!」
 俺は手を伸ばした。母と父がいた場所はすっかり炎に包まれていた。
 しばらく走った後、俺を抱えたその人はドンドンと扉を叩いた。
「くそっ……」
 その人は俺を置いて、扉に体当たりした。でも扉はびくともしない。その間にも、炎は勢いよく迫ってきていた。
 扉がどうにもならないとわかると、その人は困ったような、諦めたような表情で、俺に微笑みかけた。中性的な、端正な顔をした青年だった。
「大丈夫だよ。きっとすぐに助けが来るから」
 青年はそう言って、炎から庇うように、俺を抱きしめた。
 俺は恐怖でどうすることもできなかった。ただひたすら、彼の言葉を信じて、腕の中で助けを待った。子供ながらに、ここが一番安全な場所だと感じた。
 視界が赤く染まっていく。青年の背中が燃えていた。彼は苦しそうに顔を顰めていたが、俺と目が合うと、懸命に微笑みを返してくれた。
 それから間も無く、助けが来た。
「生存者っ! 男の子一名っ!」
 身を挺して俺を炎から守ってくれたその人は、もう動かなかった。
「なんだ、これは」
 救助隊員の不思議そうな声が忘れられない。でも、あれは本当に現実だったのだろうか。あの美しい青年は、本当に存在したのだろうか。救助隊員があの炎から救い出したのは俺だけで、青年には声も掛けなかった。
「ロボット……?」
 炎に焼かれ、皮膚が溶けたその人は、銀色のロボットだった。