第4章:『修学旅行』
みんな好き放題やっているでしょ?!
僕があいつにキスを迫るまで。
──────
秋、紫苑学院(しおんがくいん)の2年生は修学旅行のシーズンだ。
みんなソワソワと浮き足立っている。
「修学旅行楽しみ〜!! ねぇ、歩夢、佳太くん、同じ班になろうね?」
四季はウキウキだ。もちろん歩夢も佳太も大はしゃぎだ。
「もっちろん! 僕は彼氏と一緒だなんてちょー嬉しい! 佳太だぁい好き!」
「あ、ずるい! 僕も混ぜてよっ!」
四季は二人の中に飛び込んだ。
この光景を理系男子は指を咥えて見ている。
何せこの高校を誇る美少女……もとい、美少年たちが戯れあっているのだ。
「文系男子良いよな……まじあの三人天使だわ……あ、聞いた? 西山(歩夢)と細貝(佳太)って付き合いはじめたらしいぜ?」
「は? まじかよ? あいつら二人ともゲロゲロに可愛いんだけど……やばいっしょ。何でそことそこがくっ付くの(笑)?」
「俺ちょっと細貝良いな〜と思ってたのに……」
「俺だって西山のこと……くそっ! 早く告っとくんだったぜ」
「いやいやいや、あいつら互いが好みなんだろ? 可愛い子が好きなんだろ? 俺らムサイじゃん(笑)無理じゃん(笑)」
「だな。まぁ、文系男子は俺らの目の保養ですよ」
──────
「なあ、坂田、俺ら同じ班で同室でいいよな? はあ〜お互い恋人が別クラってさみしいよなぁ……まあ、自由行動までのお楽しみか」
「それなんだけどさ、どっか一日で良いからみんなで一緒に回らん? 玲ちゃん、これまでずっと一人だったっぽいし、最近楽しそうだからみんなと一緒なの喜びそうでさ。歩夢ちんたちも誘ってさ。あ、中里ちゃんと二人が良いなら全然それで良いけど……」
蒼士は大賛成とばかりに答えた。
「あー、俺もそのつもりだった! 細貝もみんなでいるの喜ぶじゃん。絶対みんな良いって言うよな」
「よし、昼休みに発表な?」
昼休みには四季の教室にいつメンで集まって弁当を広げた。
「みんなさ、今度の修学旅行で一日自由行動一緒に回らない?」
「おーっ! まじいいねそれ! 蒼士にしては良いこと思いついたねっ?!」
「──四季さぁ、最近俺の扱い酷くない? 俺はこんなに愛してんのに……」
「はいはい、僕も愛してますよ。それで、佳太も玲くんも構わないよね?」
「僕は、誘ってくれて嬉しいよ。中里くんありがとう」
佳太は嬉しそうに微笑んだ。
玲は仕方なさそうに、でも嬉しそうに言った。
「一緒に回るけど、あんたたちうるさいんだから、周りに迷惑かけないでよね!!」
昨日の敵は今日の友。今ではすっかり仲良しだ。
──────
──修学旅行の行き先は京都・大阪。
東京の高校生の定番だ。
新幹線の中は貸切で宴会騒ぎ・大騒ぎ。
これぞ男子校の修学旅行、といったところか。
──────
「僕抹茶ソフトクリーム食べたい!」
「僕は湯葉が……」
「俺、甘いもん」
「俺は甘くないもん」
「──こいつらってまじ……はぁ、じゃあさ、昼は甘くない昼食にして、午後に甘味食べるよ? それで良いね?」
「玲くん頼りになる〜やっぱ僕たちまとまらないね。えへへ」
京都の観光名所を街ぶらしているとこの集団はやたら目を引く。
「ねぇ!! 見て!! あそこの六人組の男子!! やっば、顔面最強じゃん?!」
「うっわ、こんな光景見たことない。イケメンに、美人に、可愛い子たち……逆に誰もナンパ出来んよ〜」
「制服……高校生かな? 何? その高校レベルたっか……」
普段からこの面々はモテモテなので、周りから騒がれるのには慣れている。しかし、今回は彼らに免疫のない外部の人間が、まとめて六人を目の当たりにするのだ。美しさに驚くのも当然だ。
歩夢は露店のアクセサリーに目が行くと圭太の袖を引いた。
「あ! 佳太見て! この指輪可愛いよ?! 一緒にピンキーリングにどお?」
「かわいいっ! このピンク綺麗な色! オレンジもかわい〜! 僕たちの色だね! 歩夢とおそろ、嬉しい!」
佳太と歩夢は買い物に夢中になり、輪を外れた。その一瞬の間にナンパされた。
「ねえ、君らめっちゃ可愛いね? さっきから見てたんだー。俺らと一緒に回らない?」
他校の修学旅行生のようだ。
「ねえ、あんたら見えてる? 僕たちが男子の制服着てるの。早くよそ行きなよ」
「うっわ?! まじ? 二人とも男なの? 理不尽!! ……ねえ、男の子でも良いから一緒に遊ばない? 遊ぶ金出すからさ……てか、やば……めっちゃ可愛いね。俺らの高校の女子に君らみたいに可愛い子いない」
「──僕たち二人付き合ってて、今デート中なんだよね? 邪魔だから。食い下がっても無駄。そして僕、空手黒帯だから」
ナンパ師たちはボヤきながら退散した。
佳太は潤んだ目、赤らめた頬で歩夢を見た。
「歩夢ってカッコいいんだね……」
「お? 惚れ直した? もっともっと好きになって〜!」
「うんっ!! もっともっともっと好きになったよ!!」
佳太は歩夢に飛びついて何度も頬にキスをした。
──────
一行は念願の甘味処で小休止だ。
「蒼士〜僕にもちょっと頂戴! あーーーーん!!」
四季は蒼士の後ろから抱きつき、食べている黒蜜きな粉ソフトクリームを強請った。
「四季、一口でけーな。可愛いから許す……チューして」
『チュッ…… 』
この二人はフリーダムだ。場所がどこだろうと、誰が見てようとお構いなし。
亮司と玲は目が泳いだ。
──実はまだこの二人、意外にもキスを済ませてはいない。
そりゃあ、亮司は玲の頬や額に何度か軽く触れたことはある。しかし玲の恥ずかしがるやら、怒るやらで大騒ぎなのだ。
亮司は蒼士が羨ましい……しかも最近付き合い出したばっかりの歩夢と佳太に関して言えば、付き合うその瞬間にチューしていたのだ。
だが亮司は玲が一番だと思っている。玲は奥手だが、そこが可愛らしくもある。
──────
夜、玲と四季は歩夢と佳太の部屋に集まった。
「どうしたの? 玲くん……何か話があるって……何か悩み?」
「──あんたたちに相談するなんて非常に不本意なんだけどこの際仕方ない。あの……」
玲が言い淀んだ。
「──坂田くんと何かあったの?」
「ゔっ……あーもうっ!! 僕たちまだキスしてないんだ!! 多分亮司くんしたいと思ってる。
けど僕が恥ずかしくって……どうしたら……」
玲はポロポロと泣き出した。
「わぁ! 玲くん、泣かないで!」
「歩夢くん、佳太くん、君たち付き合っていきなりキスした。何でそんなこと出来んの?
そして中里くん、君、いつでもどこでも矢田くんとキスしてる……本当はみんなが羨ましい……」
「玲くん……そんなに悩んでたんだね……」
「こればっかりは頑張る? ものでもないし……成り行き、というか雰囲気? もあるし……何かお互いにしたそう……とか?」
「あ! 僕良いこと思いついた! 明日も京都自由行動じゃん? みんなで八坂神社行かない? あそこ縁結び有名なの!! 観光スポットだし、縁結びしてぇ……でどうしようか……えへへ」
「もう! 四季ってば。肝心のとこどうすんのさ? うーん……僕たちの場合、佳太が恥ずかしがりだけど、僕が無理矢理チュッっていっちゃうかな……ねえ、玲くんは初めてはロマンチックにしたい派? シチュとか無視でとにかくキスする?」
玲は頬を赤らめた。
「あ……最初だけはロマンチックにしたいな。だから京都っていいタイミングだと思ってみんなに相談して……」
「坂田くんとさりげなく二人にしてあげるとして……あ! 嵐山にある渡月橋のとこ! 今紅葉も見れて綺麗らしいよ! 広めの場所だから周り気にせずに、そこでちょっとくっついてキスおねだりしてみても良いかも」
「え……あ……僕から迫るの……?」
「あはは……そういうムードにして……極力良い感じのスポットになったら二人にしてあげるから、明日頑張ってみなよ!」
──────
「ねえー蒼士! もう僕たち縁結んじゃってるけど、可愛いから縁結びの御守りおそろで欲しい! このピンク欲しいっ!」
四季はストレートに蒼士に甘える。
「どれどれ……可愛いじゃん。四季にピッタリのピンク! 俺、どっちがいい? 青? 黄色?」
「蒼士青がいい〜やったー! ペアが増えたね?」
「ねえ、玲ちゃんも御守り欲しい?
俺たちもとっくに結んじゃってるけどさ(笑)おそろ持ってないじゃん?」
「あ……この花模様可愛い。一緒に持ってたい……」
「それ良いね! 色も同じにしよっか」
亮司は優しい。いつもわがままで怒っている玲に付き合ってくれている。こんな自分のどこを好いてくれているのだろう……キスくらい早くしてあげたい。
次のスポット、嵐山に到着だ。渡月橋のバックには見事な紅葉が映えていた。
みんな思う存分写真撮影をした。四季たちは玲と亮司から少し離れて、これでもかという様に二人に見せつけ、いちゃつきはじめた。
「おーい、お前ら。ここ公共の場だからな!
よく考えろよ?」
亮司は揶揄いながら言った。
玲は意を決して亮司に言った。手にはお揃いの花模様のお守りを握りしめた。大丈夫……!
「──亮司くん……僕たちもしない? あの……その……キ、キスとか……」
「玲ちゃん? どうしたの? あー、しまった。俺がいつも迫るからだよな? ごめんね? 無理させたくは無いし、無理矢理も嫌なんだよ。まだ良いからね?」
「あ、ちが……」
亮司はサッと玲から離れて蒼士の元へと行ってしまった。
四季はオロオロと困ったような顔で玲を見た。玲は下を向き表情を見せない。しかし涙が足元を濡らしたのがわかった。四季は玲に駆け寄り抱きしめた。
「ごめん! 玲くんとトイレ! この辺適当にしてて」
二人は集団から離れると、玲が話し出した。
「キスしようって誘ったんだ……けど、拒否された。無理するなって言ってくれたんだけど……。もう、これが僕の精一杯で……もうこれ以上は……」
四季は再び玲を抱きしめて言った。
「頑張ったね? 玲くん。でも今無理することもないよ? 亮司くんだって無理させたくないってのは本当だろうしね? ……そうだね、あとは玲くんがどうしたいのか次第だよ」
「……うん。ありがとね。中里くん」
玲は心を決めた。
ロマンチックもへったくれもあるか!!
自分は亮司とキスがしたいんだ。
あいつらを見てみろ!!
好き放題キスし放題ではないか?!
──────
その日はやたらと月が大きい。玲は空を見上げながらぼんやりと思った。
後でみんなを誘って眺めるのも悪くない。
「亮司くん、いる?」
玲は亮司と蒼士の部屋を訪ねた。
「あれ? 玲ちゃん、どうしたの? 俺に会いたかったの〜?(笑)可愛いなぁ」
いつもならここで怒られる、ところだが……
「……うん、亮司くんに会いたかった。ずっと一緒に居たい」
「へ? は? ちょっ?!……蒼士!! ちょっと部屋出ててっ!!」
「わ、わかった!!何かようわからんけど……がんばれ!」
「──玲ちゃん? 一体どうしたの? 何かあった?」
「ぼ、僕が会いたいとか、一緒に居たいとか言ったらおかしい?! そりゃみんなみたいに素直じゃないけど……僕だって本当は……ふっ……ひっくっ……すなおに……かわいくな……てごめん……」
「玲ちゃんっ?! 何言ってんの?! 俺の玲ちゃんが世界一可愛いに決まってるじゃん?! いつもの照れ隠しも可愛すぎるんだよ?? 俺だってもっとイチャイチャしたい……けど、やっぱり玲ちゃんに負担はかけたくない。玲ちゃんのペースで行きたいんだ。」
「──そんなんじゃ、ほんとは僕足りないっっ!!」
玲は亮司の胸ぐらを掴み、引き寄せた。
そして唇を重ね合わせた。
……亮司は驚きすぎて硬直していた。
──どれくらいそうしていただろうか?
『ガラガラガラ……』
「あのー? 亮司くん? 入ってもよろしいでしょうか……? って、わぁ?! お前ら何やってんの?!」
唇を離すと玲が答えた。
「っぷっは……何って……キスだけど? 矢田くん、見たことないの? ふんっ」
玲は毒づいた。
亮司は放心状態から抜け出せずにいた。
「なぁ、坂田が固まってるぞ……? 大丈夫?」
「──僕がキスしたら動き止まっちゃった。そんなに驚くことかな……? そりゃ……普段の僕の行いっていうか……可愛げがないっていうか……」
「いや、坂田ってさ、まじでお前の話しかしなくて、大好きなんだよ。キスとかしたいって騒いだりもしてるけど……三枝の嫌がることだけは絶対にしないって言ってて……」
玲は亮司の方を見ると抱きしめて、もう一度キスをした。
「れ、れいちゃ……おれ、世界一幸せ」
「ふっ。僕もだよ。今までごちゃごちゃ考えててごめんね? 行動に移すとシンプルだった。
ただただ亮司くんが好き。だからキスしたい。沢山沢山したい。もっともっと一緒に居たい。もっともっと抱きしめて欲しい……!!
亮司くん、好き、大好き」
──────
四季たちはみな蒼士と亮司の部屋に集まった。
「玲くんおめでとう〜!! 初キッス!! どっちからいったの? 教えて〜」
「……僕からしちゃった
……今思うとヤバい。ドキドキする」
「玲ちゃんのキス、熱かったのよ〜まじ可愛いし……俺幸せすぎ」
「わかる! キスって熱いよね! お互いの熱を感じて愛しくなるっていうか……幸せが溢れてくる! ね? 佳太!」
「僕も歩夢とのキス、大好き。世界一の幸せ者だと思えるよ」
「玲くんも亮司くんも世界一の幸せを感じたんだね?! うんうん。僕は感無量だよっ!!」
「俺、四季が良くする軽いチュッてやつも好き〜四季が倍増しで可愛く見える」
「わかる! 僕も歩夢に突然すると驚いてくれてちょー可愛いの!!」
亮司は頷きながら発言した。
「ほー。みなさん経験豊かですね。
玲ちゃん、俺らも沢山キスしよ?」
玲の頭を引き寄せて音の出るキスをした。
『チュッ……』
玲は真っ赤になった。
「と、突然みんなの前でっ!!……嬉しいけど」
玲は亮司の肩を鷲掴みにすると派手にキスをやり返した。
「玲ちゃん?!」
「あはは! 何かキス合戦になってるし〜いいぞ〜」
「お前ら〜もう消灯だぞ〜! 部屋に戻りなさ〜い!!」
「はーい! 先生!」
修学旅行の夜は賑やかだ。
みんな好き放題やっているでしょ?!
僕があいつにキスを迫るまで。
──────
秋、紫苑学院(しおんがくいん)の2年生は修学旅行のシーズンだ。
みんなソワソワと浮き足立っている。
「修学旅行楽しみ〜!! ねぇ、歩夢、佳太くん、同じ班になろうね?」
四季はウキウキだ。もちろん歩夢も佳太も大はしゃぎだ。
「もっちろん! 僕は彼氏と一緒だなんてちょー嬉しい! 佳太だぁい好き!」
「あ、ずるい! 僕も混ぜてよっ!」
四季は二人の中に飛び込んだ。
この光景を理系男子は指を咥えて見ている。
何せこの高校を誇る美少女……もとい、美少年たちが戯れあっているのだ。
「文系男子良いよな……まじあの三人天使だわ……あ、聞いた? 西山(歩夢)と細貝(佳太)って付き合いはじめたらしいぜ?」
「は? まじかよ? あいつら二人ともゲロゲロに可愛いんだけど……やばいっしょ。何でそことそこがくっ付くの(笑)?」
「俺ちょっと細貝良いな〜と思ってたのに……」
「俺だって西山のこと……くそっ! 早く告っとくんだったぜ」
「いやいやいや、あいつら互いが好みなんだろ? 可愛い子が好きなんだろ? 俺らムサイじゃん(笑)無理じゃん(笑)」
「だな。まぁ、文系男子は俺らの目の保養ですよ」
──────
「なあ、坂田、俺ら同じ班で同室でいいよな? はあ〜お互い恋人が別クラってさみしいよなぁ……まあ、自由行動までのお楽しみか」
「それなんだけどさ、どっか一日で良いからみんなで一緒に回らん? 玲ちゃん、これまでずっと一人だったっぽいし、最近楽しそうだからみんなと一緒なの喜びそうでさ。歩夢ちんたちも誘ってさ。あ、中里ちゃんと二人が良いなら全然それで良いけど……」
蒼士は大賛成とばかりに答えた。
「あー、俺もそのつもりだった! 細貝もみんなでいるの喜ぶじゃん。絶対みんな良いって言うよな」
「よし、昼休みに発表な?」
昼休みには四季の教室にいつメンで集まって弁当を広げた。
「みんなさ、今度の修学旅行で一日自由行動一緒に回らない?」
「おーっ! まじいいねそれ! 蒼士にしては良いこと思いついたねっ?!」
「──四季さぁ、最近俺の扱い酷くない? 俺はこんなに愛してんのに……」
「はいはい、僕も愛してますよ。それで、佳太も玲くんも構わないよね?」
「僕は、誘ってくれて嬉しいよ。中里くんありがとう」
佳太は嬉しそうに微笑んだ。
玲は仕方なさそうに、でも嬉しそうに言った。
「一緒に回るけど、あんたたちうるさいんだから、周りに迷惑かけないでよね!!」
昨日の敵は今日の友。今ではすっかり仲良しだ。
──────
──修学旅行の行き先は京都・大阪。
東京の高校生の定番だ。
新幹線の中は貸切で宴会騒ぎ・大騒ぎ。
これぞ男子校の修学旅行、といったところか。
──────
「僕抹茶ソフトクリーム食べたい!」
「僕は湯葉が……」
「俺、甘いもん」
「俺は甘くないもん」
「──こいつらってまじ……はぁ、じゃあさ、昼は甘くない昼食にして、午後に甘味食べるよ? それで良いね?」
「玲くん頼りになる〜やっぱ僕たちまとまらないね。えへへ」
京都の観光名所を街ぶらしているとこの集団はやたら目を引く。
「ねぇ!! 見て!! あそこの六人組の男子!! やっば、顔面最強じゃん?!」
「うっわ、こんな光景見たことない。イケメンに、美人に、可愛い子たち……逆に誰もナンパ出来んよ〜」
「制服……高校生かな? 何? その高校レベルたっか……」
普段からこの面々はモテモテなので、周りから騒がれるのには慣れている。しかし、今回は彼らに免疫のない外部の人間が、まとめて六人を目の当たりにするのだ。美しさに驚くのも当然だ。
歩夢は露店のアクセサリーに目が行くと圭太の袖を引いた。
「あ! 佳太見て! この指輪可愛いよ?! 一緒にピンキーリングにどお?」
「かわいいっ! このピンク綺麗な色! オレンジもかわい〜! 僕たちの色だね! 歩夢とおそろ、嬉しい!」
佳太と歩夢は買い物に夢中になり、輪を外れた。その一瞬の間にナンパされた。
「ねえ、君らめっちゃ可愛いね? さっきから見てたんだー。俺らと一緒に回らない?」
他校の修学旅行生のようだ。
「ねえ、あんたら見えてる? 僕たちが男子の制服着てるの。早くよそ行きなよ」
「うっわ?! まじ? 二人とも男なの? 理不尽!! ……ねえ、男の子でも良いから一緒に遊ばない? 遊ぶ金出すからさ……てか、やば……めっちゃ可愛いね。俺らの高校の女子に君らみたいに可愛い子いない」
「──僕たち二人付き合ってて、今デート中なんだよね? 邪魔だから。食い下がっても無駄。そして僕、空手黒帯だから」
ナンパ師たちはボヤきながら退散した。
佳太は潤んだ目、赤らめた頬で歩夢を見た。
「歩夢ってカッコいいんだね……」
「お? 惚れ直した? もっともっと好きになって〜!」
「うんっ!! もっともっともっと好きになったよ!!」
佳太は歩夢に飛びついて何度も頬にキスをした。
──────
一行は念願の甘味処で小休止だ。
「蒼士〜僕にもちょっと頂戴! あーーーーん!!」
四季は蒼士の後ろから抱きつき、食べている黒蜜きな粉ソフトクリームを強請った。
「四季、一口でけーな。可愛いから許す……チューして」
『チュッ…… 』
この二人はフリーダムだ。場所がどこだろうと、誰が見てようとお構いなし。
亮司と玲は目が泳いだ。
──実はまだこの二人、意外にもキスを済ませてはいない。
そりゃあ、亮司は玲の頬や額に何度か軽く触れたことはある。しかし玲の恥ずかしがるやら、怒るやらで大騒ぎなのだ。
亮司は蒼士が羨ましい……しかも最近付き合い出したばっかりの歩夢と佳太に関して言えば、付き合うその瞬間にチューしていたのだ。
だが亮司は玲が一番だと思っている。玲は奥手だが、そこが可愛らしくもある。
──────
夜、玲と四季は歩夢と佳太の部屋に集まった。
「どうしたの? 玲くん……何か話があるって……何か悩み?」
「──あんたたちに相談するなんて非常に不本意なんだけどこの際仕方ない。あの……」
玲が言い淀んだ。
「──坂田くんと何かあったの?」
「ゔっ……あーもうっ!! 僕たちまだキスしてないんだ!! 多分亮司くんしたいと思ってる。
けど僕が恥ずかしくって……どうしたら……」
玲はポロポロと泣き出した。
「わぁ! 玲くん、泣かないで!」
「歩夢くん、佳太くん、君たち付き合っていきなりキスした。何でそんなこと出来んの?
そして中里くん、君、いつでもどこでも矢田くんとキスしてる……本当はみんなが羨ましい……」
「玲くん……そんなに悩んでたんだね……」
「こればっかりは頑張る? ものでもないし……成り行き、というか雰囲気? もあるし……何かお互いにしたそう……とか?」
「あ! 僕良いこと思いついた! 明日も京都自由行動じゃん? みんなで八坂神社行かない? あそこ縁結び有名なの!! 観光スポットだし、縁結びしてぇ……でどうしようか……えへへ」
「もう! 四季ってば。肝心のとこどうすんのさ? うーん……僕たちの場合、佳太が恥ずかしがりだけど、僕が無理矢理チュッっていっちゃうかな……ねえ、玲くんは初めてはロマンチックにしたい派? シチュとか無視でとにかくキスする?」
玲は頬を赤らめた。
「あ……最初だけはロマンチックにしたいな。だから京都っていいタイミングだと思ってみんなに相談して……」
「坂田くんとさりげなく二人にしてあげるとして……あ! 嵐山にある渡月橋のとこ! 今紅葉も見れて綺麗らしいよ! 広めの場所だから周り気にせずに、そこでちょっとくっついてキスおねだりしてみても良いかも」
「え……あ……僕から迫るの……?」
「あはは……そういうムードにして……極力良い感じのスポットになったら二人にしてあげるから、明日頑張ってみなよ!」
──────
「ねえー蒼士! もう僕たち縁結んじゃってるけど、可愛いから縁結びの御守りおそろで欲しい! このピンク欲しいっ!」
四季はストレートに蒼士に甘える。
「どれどれ……可愛いじゃん。四季にピッタリのピンク! 俺、どっちがいい? 青? 黄色?」
「蒼士青がいい〜やったー! ペアが増えたね?」
「ねえ、玲ちゃんも御守り欲しい?
俺たちもとっくに結んじゃってるけどさ(笑)おそろ持ってないじゃん?」
「あ……この花模様可愛い。一緒に持ってたい……」
「それ良いね! 色も同じにしよっか」
亮司は優しい。いつもわがままで怒っている玲に付き合ってくれている。こんな自分のどこを好いてくれているのだろう……キスくらい早くしてあげたい。
次のスポット、嵐山に到着だ。渡月橋のバックには見事な紅葉が映えていた。
みんな思う存分写真撮影をした。四季たちは玲と亮司から少し離れて、これでもかという様に二人に見せつけ、いちゃつきはじめた。
「おーい、お前ら。ここ公共の場だからな!
よく考えろよ?」
亮司は揶揄いながら言った。
玲は意を決して亮司に言った。手にはお揃いの花模様のお守りを握りしめた。大丈夫……!
「──亮司くん……僕たちもしない? あの……その……キ、キスとか……」
「玲ちゃん? どうしたの? あー、しまった。俺がいつも迫るからだよな? ごめんね? 無理させたくは無いし、無理矢理も嫌なんだよ。まだ良いからね?」
「あ、ちが……」
亮司はサッと玲から離れて蒼士の元へと行ってしまった。
四季はオロオロと困ったような顔で玲を見た。玲は下を向き表情を見せない。しかし涙が足元を濡らしたのがわかった。四季は玲に駆け寄り抱きしめた。
「ごめん! 玲くんとトイレ! この辺適当にしてて」
二人は集団から離れると、玲が話し出した。
「キスしようって誘ったんだ……けど、拒否された。無理するなって言ってくれたんだけど……。もう、これが僕の精一杯で……もうこれ以上は……」
四季は再び玲を抱きしめて言った。
「頑張ったね? 玲くん。でも今無理することもないよ? 亮司くんだって無理させたくないってのは本当だろうしね? ……そうだね、あとは玲くんがどうしたいのか次第だよ」
「……うん。ありがとね。中里くん」
玲は心を決めた。
ロマンチックもへったくれもあるか!!
自分は亮司とキスがしたいんだ。
あいつらを見てみろ!!
好き放題キスし放題ではないか?!
──────
その日はやたらと月が大きい。玲は空を見上げながらぼんやりと思った。
後でみんなを誘って眺めるのも悪くない。
「亮司くん、いる?」
玲は亮司と蒼士の部屋を訪ねた。
「あれ? 玲ちゃん、どうしたの? 俺に会いたかったの〜?(笑)可愛いなぁ」
いつもならここで怒られる、ところだが……
「……うん、亮司くんに会いたかった。ずっと一緒に居たい」
「へ? は? ちょっ?!……蒼士!! ちょっと部屋出ててっ!!」
「わ、わかった!!何かようわからんけど……がんばれ!」
「──玲ちゃん? 一体どうしたの? 何かあった?」
「ぼ、僕が会いたいとか、一緒に居たいとか言ったらおかしい?! そりゃみんなみたいに素直じゃないけど……僕だって本当は……ふっ……ひっくっ……すなおに……かわいくな……てごめん……」
「玲ちゃんっ?! 何言ってんの?! 俺の玲ちゃんが世界一可愛いに決まってるじゃん?! いつもの照れ隠しも可愛すぎるんだよ?? 俺だってもっとイチャイチャしたい……けど、やっぱり玲ちゃんに負担はかけたくない。玲ちゃんのペースで行きたいんだ。」
「──そんなんじゃ、ほんとは僕足りないっっ!!」
玲は亮司の胸ぐらを掴み、引き寄せた。
そして唇を重ね合わせた。
……亮司は驚きすぎて硬直していた。
──どれくらいそうしていただろうか?
『ガラガラガラ……』
「あのー? 亮司くん? 入ってもよろしいでしょうか……? って、わぁ?! お前ら何やってんの?!」
唇を離すと玲が答えた。
「っぷっは……何って……キスだけど? 矢田くん、見たことないの? ふんっ」
玲は毒づいた。
亮司は放心状態から抜け出せずにいた。
「なぁ、坂田が固まってるぞ……? 大丈夫?」
「──僕がキスしたら動き止まっちゃった。そんなに驚くことかな……? そりゃ……普段の僕の行いっていうか……可愛げがないっていうか……」
「いや、坂田ってさ、まじでお前の話しかしなくて、大好きなんだよ。キスとかしたいって騒いだりもしてるけど……三枝の嫌がることだけは絶対にしないって言ってて……」
玲は亮司の方を見ると抱きしめて、もう一度キスをした。
「れ、れいちゃ……おれ、世界一幸せ」
「ふっ。僕もだよ。今までごちゃごちゃ考えててごめんね? 行動に移すとシンプルだった。
ただただ亮司くんが好き。だからキスしたい。沢山沢山したい。もっともっと一緒に居たい。もっともっと抱きしめて欲しい……!!
亮司くん、好き、大好き」
──────
四季たちはみな蒼士と亮司の部屋に集まった。
「玲くんおめでとう〜!! 初キッス!! どっちからいったの? 教えて〜」
「……僕からしちゃった
……今思うとヤバい。ドキドキする」
「玲ちゃんのキス、熱かったのよ〜まじ可愛いし……俺幸せすぎ」
「わかる! キスって熱いよね! お互いの熱を感じて愛しくなるっていうか……幸せが溢れてくる! ね? 佳太!」
「僕も歩夢とのキス、大好き。世界一の幸せ者だと思えるよ」
「玲くんも亮司くんも世界一の幸せを感じたんだね?! うんうん。僕は感無量だよっ!!」
「俺、四季が良くする軽いチュッてやつも好き〜四季が倍増しで可愛く見える」
「わかる! 僕も歩夢に突然すると驚いてくれてちょー可愛いの!!」
亮司は頷きながら発言した。
「ほー。みなさん経験豊かですね。
玲ちゃん、俺らも沢山キスしよ?」
玲の頭を引き寄せて音の出るキスをした。
『チュッ……』
玲は真っ赤になった。
「と、突然みんなの前でっ!!……嬉しいけど」
玲は亮司の肩を鷲掴みにすると派手にキスをやり返した。
「玲ちゃん?!」
「あはは! 何かキス合戦になってるし〜いいぞ〜」
「お前ら〜もう消灯だぞ〜! 部屋に戻りなさ〜い!!」
「はーい! 先生!」
修学旅行の夜は賑やかだ。
