僕たちの恋は、いつだって予想外。~強気で不器用な美少年たちは今日も恋に全力投球……顔面偏差値100超えの6人が織りなす、甘くて痛い初恋の記録~

第3章:『恋の迷宮(歩夢・佳太)』
SNSの全肯定してくれる「匿名くん」の正体は、意地悪で自信満々なあいつだった!?


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助けてくれたあの日から、本当に好きだったのだ。
別にあいつ──中里に喧嘩を売るつもりもなかった。でもやっぱり目の前で自慢されて、頭にきた。必死で涙を堪えて文句を言ってしまった。

「あんたに矢田くんの何がわかるの? 僕の方が知ってる! どうせ顔だけで好きになったくせに!! 良い気になるな! お前なんか矢田くんに相応しく無いっ!」

「はあ? 何突然? そもそもあんた蒼士に告ってもいないじゃん? 意気地なしが何言ってんの? 勝負にもならない。
やれるもんならやってみれば? 蒼士は僕のこと大好きだから」

そうなのだ。この細貝佳太(ほそがいけいた)は蒼士に告白すら出来ないでいた。
やはり四季との間に割っていく勇気はなかった。

佳太が蒼士を好きな理由はカッコいいからだけではない。入学式の後に、2年生に絡まれていたところを助けてもらった。その時からずっと蒼士のことが好きなのだ。

この佳太もかなりかわいい。
男子からの人気も高いし、告白されることも日常茶飯事だ。
自分の容姿にそこそこ自信もあった。

すぐに泣いてしまうのだが、それ以上に、うじうじするのは性に合わない。
佳太は蒼士に思い切って友達になってくれと頼んでみた。

『──友達って、あれだよな……? 別の意味もあるよな?』

あぁ、やはり友達すら無理なんだ。
……中里のくそ野郎。

佳太は蒼士のことを吹っ切れずにいた。
相変わらず蒼士は昼休みの度に佳太と同じクラスである四季に会いに来るし、嫌でも目に入る。

佳太にはクラスに数名だが友達がいる。けれど、みんな表面上の付き合いでしかない。なので本音ではぶつからない。

佳太は元々いじめられっ子体質で、俗に言う高校デビューといったところだ。

中学までは男女(おとこおんな)だとか、男子から告白されて女子からはやっかまれて嫌われた。
あまり良い思い出は無い。
性格が悪い……訳ではない。
根は優しいが少し我儘だ。可愛い外見のせいか、この『我儘』な部分が強調されてしまう。

高校に入り、インスタに自分の写真を投稿する様になった。はじめは寂しさを埋める為、いいねをもらうと自己肯定感が増した。そして、すぐに人気のアカウントに発展し、服装や髪型、人気のショップの紹介など、あらゆる分野でもいいねをもらえるようになった。

そんな中で、アカウントを始めたての頃からコメントをくれる『匿名くん』がいた。
恐らく書き方からすると男の子だろう。いつも見ていてくれてるのだ。

『かわいい服ですね! 僕も同じのが欲しいです。佳太くんかわいいから似合うけど、僕じゃ無理かな……』

『美味しそうなアイス! かわいい佳太くんと一緒にこんな映えるとこで写真撮りたいっ!』

『その髪型かわいい!! 長いのも良かったけど、短いのも似合う〜! ほんとおしゃれ!!』

『匿名くん』は沢山の欲しかったコメントをくれる。そのコメントは佳太を全肯定してくれる。とても気持ちが良い。自分に自信が持てた。


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四季には西山歩夢(にしやまあゆむ)という友達がおり、こいつもまた四季同様に鼻につくやつだ。
自分に堂々と自信を持っている。
しかもよく佳太の方を鋭い目で見ている。
本当のところは文句を言ってやりたい。

だけどもう四季たちには関わりたくない。
不服だが、我慢していた。

しかしその鬱陶しい視線に、ついにイライラが爆発した。

「西山くん? 何か僕に用でもあるのかな? いつも僕の事睨んでるよね? 中里くんにも矢田くんにも、もう興味はないし、こっちを見ないでもらえるかな?」

「は? 僕が誰を眺めようと勝手だよね? あと、自意識過剰なんじゃない? だから周りから嫌われるんだよ──ごめん、今のは言い過ぎた」

佳太は自分から噛みついて行くものの強くはない。
目から涙が溢れ(あふれ)出るのを我慢しながら教室を飛び出した。

校舎の裏に大きな木がある。
そこが1年生の時からの佳太の居場所である。

「ふぇ……ひっく……ふぇぇん……」

「──うるせえなあ……何なの?」

佳太はビクッと体を震わせた。人が寝ていることに全く気が付かなかった。

柳聡一郎(やなぎそういちろう)、佳太の一つ年下で1年生だ。

「なっ……こんなとこに……」

「せっかくいい昼寝場所見つけたんだから、邪魔すんなよな?」

佳太は我が物顔の1年生にイラッとした。

「ここは元々いつも僕の場所なのっ!! お前がどっか行けよ!!」

「おーー、かわいい顔して良く吠えるね……絶対友達いないっしょ?」

「ふぁーーーーん……あ……たには……かんけな……のに……ひっ……ひっ」

「げ? まじ? ごめん……ここいていいから……俺も静かにしとくし……な? まじごめんな?」

佳太は聡一郎の目も気にせず盛大に泣いた。

「……落ち着いた? あんた2年生?……こんな時に言うなって感じだけど、あんためっちゃかわいいな……え? 男だよな?」

「……いつものことだけど、その反応に今すごいムカつく。男子校なんだから、男に決まってるでしょ?」

「ごめん、ごめん。俺、柳聡一郎って言うんだ。1年」

「……細貝佳太。2年。出来ればもう来ないで。ここ僕の場所」

「そんなこと言うなよ? 俺は静かにしてるし。な?」

聡一郎は佳太に一目惚れしてしまった。

この学校の2年生にはやたら綺麗どころが多く、中里四季を筆頭に三枝玲、西山歩夢……といった見事な顔ぶれだ。

けれど、総一郎にはいまいちピンとこなかった。

しかし……この佳太の泣き顔にグッときた。
決して泣かせたい訳じゃない……けれどとてつもなくかわいい。

聡一郎にはこれまでに彼女もおり、皆それぞれかわいかった。
だけど、この佳太のかわいさは尋常じゃない。

聡一郎は男が好きな訳でもない。しかし、これは……

「──仕方ない。まじで、静かにしててよ?」