第2章:『プライドと偏見(亮司・玲)』
~二人の関係は「不健全」から始まった~
氷の女王と偏見男(のち、束縛男)
──────
春になり、蒼士(そうし)たちは二年生になった。
四季(しき)は何かが吹っ切れたようだ。
もちろん毎日蒼士に甘えて愛の言葉を強請ってくる。
蒼士も惜しみない愛情で四季を甘やかす。二人は上手くいっていた。
そんな中、蒼士が最近亮司(りょうじ)を心配しているようなのだ。
「坂田、あいつ最近何かおかしいんだよ。ああ見えてあいつめっちゃ繊細なとこあるから、少し心配してんだ」
「……へえ? 蒼士には何も話してくれないの?」
「あいつ秘密主義っぽいからな。色々謎でさ、俺最近知ったんだけど、緑化委員会とかに自分から入ってたんだぜ? ちょー意外だろ?」
「へえー! でも坂田くんは優しいよ。僕たちのこともずいぶん応援してくれたし。何か力になれると良いんだけどね……」
「〜っ! 四季は優しいなあ! ほら、チュウして!!」
「蒼士〜大好き!!」
──二人は校内一の名物バカップルと化していた。
──────
蒼士と亮司の教室は1階にある。そこからは校庭と中庭がよく見えた。
亮司はボーっと校庭を見ていた。
あ……あいつ……またいる。そこに居れば蒼士が見えるからか……? 無駄なのに。
──────
俺は緑化委員会とやらに立候補した。
意外かもしれないが、花が好きなのだ。母親の影響かもしれない。
家中に花を飾って、庭の花壇には沢山の花々がある。
俺は委員会のない日でも一人で世話をしたり眺めたりしていた。
ある時からそこのベンチに居着いた男。
いつも俺のクラスの方を眺めていた。
……多分蒼士を見てるのだろう。
毎日毎日馬鹿みたいに眺めているので声をかけてみた。
「あんた蒼士が好きなの? やめとけよ。あいつには恋人がいる。あいつらは絶対に別れねえよ」
「?! ……そんなこと言われなくってもわかってるよ! 余計なお世話だ。 クソやろーっ!!」
おーおー口が悪い(笑)
あ、コイツどえらい美人さんだな。
中里ちゃんとは違い、女の子には見えない。
背も175センチくらいはあるか?
けれど……清楚で、禁欲的で……
あれ? ミスコン無理矢理出さされて怒って騒いでた美人な奴じゃん(笑)
この子確か二位だったよなー。
俺は興味を持った。
「なぁ、蒼士なんかじゃなくて、俺にしない? 俺もモテるよ? かっこいいっしょ?」
亮司はチャラケて軽口を叩いた。
「は? 誰がお前みたいなチャラい奴。相手にする訳ない。二度と話しかけないで」
そう言うとその美人は帰って行ってしまった。
「何あれ? ちょー高飛車。おもろ……」
美人の名前は『三枝 玲(さえぐされい)』と言った。
意外にも同じ理系だったのに今まで気が付かなかった。
あんなに美人なのに。
そりゃそうだ。俺は男には興味がない。知っているのはかろうじて同クラのメンツくらいだろう。
──────
次の日も三枝は花壇の前のベンチに居た。
「よお、また来てたんだな。なぁ、楽しいのか?
──おい、今あいつらキスしてるぞ? 見てるの辛くないのか?」
「別に楽しくはない。こんな場面も見たいわけじゃない。
けど……他に眺められる場所もなくって。
中里くんといつも一緒だけど……しょうがなくって……ふっく……ふっ……」
三枝は泣き出してしまった。
「おいおい、勘弁しろよ……泣くなよ。な?」
三枝の頭をポンポンと優しく撫でた。
「あいつのことは忘れろって。もっと良い男も女もいくらでもいるから。お前すげーイケメンだし、悲観すんなよな?」
三枝は静かに声を殺して頷き、泣き続けた。
「ありがとう……少しスッキリした。でも、何で僕に構うの?」
「そりゃ……傷つくってわかってるのに、そのまま見てるだけなんて出来ないだろ?
俺なんか役に立たなくても、話聞くくらいは出来るからさ? ね?」
「ふんっ。余計なお世話っ!! でも見かけによらず優しいね。ありがとう」
俺たちは長いこと他愛のないおしゃべりをした。
次の日、三枝は中庭へはやって来なかった。
亮司は少し寂しい様な、安心したような、複雑な気持ちになった。
けれど、穏やかな気持ちで春の花を植えていった。
一週間ほど経った日、三枝が久しぶりに訪れて言った。
「坂田亮司くん、今までありがとうね。
僕は、三枝 玲っていうんだよ。
サボってたけど、僕も緑化委員なんだ。これから毎日一緒にお花植えよ?
そして……とっくの昔に矢田くんのことなんて忘れてた。
亮司くん、僕は君のことが好きなんだ。これから僕のこと好きになってもらうから、よろしくね」
「は? お前何言ってんだよ? 俺? いやいやいや……」
「?? だって君が言ったじゃない? もっと良い男がいるって! だから僕は見つけたんだよ? 良い男。
僕は絶対に君に好きになってもらうからね!」
このやたらときれいな男、『三枝 玲』はどうやら俺に惚れたらしい……
出会った頃はあんなにボロクソに罵っておいて……
──はあ、波乱の予感しかしない。
──────
「──最近、坂田、いつもあのやたら顔のきれいな奴と話してんだよな……
坂田に聞いてもはぐらかすし。
どういう関係なんだろう? なぁ、四季。どう思う?」
四季は昼休みに、理系の蒼士の教室を訪れていた。
「ぷぅ。蒼士がきれいって言ったのはムカつくけど、それはひとまずおいといて……
あの人、理系の三枝玲くんだよ。
めちゃくちゃ美人で、結構誰にでも冷たいらしいの。告白されてもこっ酷く振っちゃうとか……
氷の女王らしいよ?」
「へぇ? 何でそんな奴が坂田と?
チャラい坂田なんて眼中になさそうなのにな」
「──僕三枝くんに話しかけてみようかな……」
「四季……無茶すんなよ?」
四季は親指を立ててウインクして見せた。
──────
四季は廊下で玲に駆け寄り、呼び止めた。
「三枝くん! 僕、中里四季っていうんだ。突然ごめんね? ちょっと……坂田くんについて……」
それを聞くと玲の顔が歪んだ。
「あんた何? 何様? 亮司くんと僕のことはほっといてよ。
あんたみたいな奴だいっっ嫌いなんだよ。
矢田くんにお姫様みたいに守られてればいい。
二度と目の前に現れるなっ!!」
四季は呆気に取られた。
「四季! 大丈夫かよ?! 三枝? あいつの叫び声、教室の中まで聞こえたぞ?」
「……かなりびっくりした。話しかけただけで大嫌いって叫ばれた……
ぷっ。ぷはっ。あの人可愛いーー!!
坂田くんのこと好きなんだね、きっと」
「ええ? そういうこと? あ、坂田が氷の女王追っかけて行った。
坂田そういうのは面倒くさがりそうだけどな……」
亮司は玲を追いかけて手首を掴んだ。
「三枝、お前どうした? 教室までお前の声聞こえたぞ? 中里ちゃんと何話したの?」
「その中里ちゃんっていうのもやめてよ! 気持ち悪い!
亮司くん、何で僕は名前で呼んでくれないの? あいつばっかりみんな可愛がって……そりゃ僕はでかいし、可愛くないし、性格悪いけど……」
「ふはっ。お前自覚あるんじゃん。
はは。大丈夫。お前は可愛いよ」
坂田は玲の頭をポンポンっとした。
玲は顔を赤らめて言った。
「お願い……少しだけ……抱きしめて……お願い」
「ったく、俺、男好きじゃないんだよ? お前と付き合う気もないんだよ? それなのにこんなことしてたら辛いだろ?」
亮司は玲を抱きしめて言った。
「うん……今、この幸せを噛み締めとく……亮司くん、好き」
「不思議とお前には鳥肌立たないなぁ。うん、可愛いよ」
~二人の関係は「不健全」から始まった~
氷の女王と偏見男(のち、束縛男)
──────
春になり、蒼士(そうし)たちは二年生になった。
四季(しき)は何かが吹っ切れたようだ。
もちろん毎日蒼士に甘えて愛の言葉を強請ってくる。
蒼士も惜しみない愛情で四季を甘やかす。二人は上手くいっていた。
そんな中、蒼士が最近亮司(りょうじ)を心配しているようなのだ。
「坂田、あいつ最近何かおかしいんだよ。ああ見えてあいつめっちゃ繊細なとこあるから、少し心配してんだ」
「……へえ? 蒼士には何も話してくれないの?」
「あいつ秘密主義っぽいからな。色々謎でさ、俺最近知ったんだけど、緑化委員会とかに自分から入ってたんだぜ? ちょー意外だろ?」
「へえー! でも坂田くんは優しいよ。僕たちのこともずいぶん応援してくれたし。何か力になれると良いんだけどね……」
「〜っ! 四季は優しいなあ! ほら、チュウして!!」
「蒼士〜大好き!!」
──二人は校内一の名物バカップルと化していた。
──────
蒼士と亮司の教室は1階にある。そこからは校庭と中庭がよく見えた。
亮司はボーっと校庭を見ていた。
あ……あいつ……またいる。そこに居れば蒼士が見えるからか……? 無駄なのに。
──────
俺は緑化委員会とやらに立候補した。
意外かもしれないが、花が好きなのだ。母親の影響かもしれない。
家中に花を飾って、庭の花壇には沢山の花々がある。
俺は委員会のない日でも一人で世話をしたり眺めたりしていた。
ある時からそこのベンチに居着いた男。
いつも俺のクラスの方を眺めていた。
……多分蒼士を見てるのだろう。
毎日毎日馬鹿みたいに眺めているので声をかけてみた。
「あんた蒼士が好きなの? やめとけよ。あいつには恋人がいる。あいつらは絶対に別れねえよ」
「?! ……そんなこと言われなくってもわかってるよ! 余計なお世話だ。 クソやろーっ!!」
おーおー口が悪い(笑)
あ、コイツどえらい美人さんだな。
中里ちゃんとは違い、女の子には見えない。
背も175センチくらいはあるか?
けれど……清楚で、禁欲的で……
あれ? ミスコン無理矢理出さされて怒って騒いでた美人な奴じゃん(笑)
この子確か二位だったよなー。
俺は興味を持った。
「なぁ、蒼士なんかじゃなくて、俺にしない? 俺もモテるよ? かっこいいっしょ?」
亮司はチャラケて軽口を叩いた。
「は? 誰がお前みたいなチャラい奴。相手にする訳ない。二度と話しかけないで」
そう言うとその美人は帰って行ってしまった。
「何あれ? ちょー高飛車。おもろ……」
美人の名前は『三枝 玲(さえぐされい)』と言った。
意外にも同じ理系だったのに今まで気が付かなかった。
あんなに美人なのに。
そりゃそうだ。俺は男には興味がない。知っているのはかろうじて同クラのメンツくらいだろう。
──────
次の日も三枝は花壇の前のベンチに居た。
「よお、また来てたんだな。なぁ、楽しいのか?
──おい、今あいつらキスしてるぞ? 見てるの辛くないのか?」
「別に楽しくはない。こんな場面も見たいわけじゃない。
けど……他に眺められる場所もなくって。
中里くんといつも一緒だけど……しょうがなくって……ふっく……ふっ……」
三枝は泣き出してしまった。
「おいおい、勘弁しろよ……泣くなよ。な?」
三枝の頭をポンポンと優しく撫でた。
「あいつのことは忘れろって。もっと良い男も女もいくらでもいるから。お前すげーイケメンだし、悲観すんなよな?」
三枝は静かに声を殺して頷き、泣き続けた。
「ありがとう……少しスッキリした。でも、何で僕に構うの?」
「そりゃ……傷つくってわかってるのに、そのまま見てるだけなんて出来ないだろ?
俺なんか役に立たなくても、話聞くくらいは出来るからさ? ね?」
「ふんっ。余計なお世話っ!! でも見かけによらず優しいね。ありがとう」
俺たちは長いこと他愛のないおしゃべりをした。
次の日、三枝は中庭へはやって来なかった。
亮司は少し寂しい様な、安心したような、複雑な気持ちになった。
けれど、穏やかな気持ちで春の花を植えていった。
一週間ほど経った日、三枝が久しぶりに訪れて言った。
「坂田亮司くん、今までありがとうね。
僕は、三枝 玲っていうんだよ。
サボってたけど、僕も緑化委員なんだ。これから毎日一緒にお花植えよ?
そして……とっくの昔に矢田くんのことなんて忘れてた。
亮司くん、僕は君のことが好きなんだ。これから僕のこと好きになってもらうから、よろしくね」
「は? お前何言ってんだよ? 俺? いやいやいや……」
「?? だって君が言ったじゃない? もっと良い男がいるって! だから僕は見つけたんだよ? 良い男。
僕は絶対に君に好きになってもらうからね!」
このやたらときれいな男、『三枝 玲』はどうやら俺に惚れたらしい……
出会った頃はあんなにボロクソに罵っておいて……
──はあ、波乱の予感しかしない。
──────
「──最近、坂田、いつもあのやたら顔のきれいな奴と話してんだよな……
坂田に聞いてもはぐらかすし。
どういう関係なんだろう? なぁ、四季。どう思う?」
四季は昼休みに、理系の蒼士の教室を訪れていた。
「ぷぅ。蒼士がきれいって言ったのはムカつくけど、それはひとまずおいといて……
あの人、理系の三枝玲くんだよ。
めちゃくちゃ美人で、結構誰にでも冷たいらしいの。告白されてもこっ酷く振っちゃうとか……
氷の女王らしいよ?」
「へぇ? 何でそんな奴が坂田と?
チャラい坂田なんて眼中になさそうなのにな」
「──僕三枝くんに話しかけてみようかな……」
「四季……無茶すんなよ?」
四季は親指を立ててウインクして見せた。
──────
四季は廊下で玲に駆け寄り、呼び止めた。
「三枝くん! 僕、中里四季っていうんだ。突然ごめんね? ちょっと……坂田くんについて……」
それを聞くと玲の顔が歪んだ。
「あんた何? 何様? 亮司くんと僕のことはほっといてよ。
あんたみたいな奴だいっっ嫌いなんだよ。
矢田くんにお姫様みたいに守られてればいい。
二度と目の前に現れるなっ!!」
四季は呆気に取られた。
「四季! 大丈夫かよ?! 三枝? あいつの叫び声、教室の中まで聞こえたぞ?」
「……かなりびっくりした。話しかけただけで大嫌いって叫ばれた……
ぷっ。ぷはっ。あの人可愛いーー!!
坂田くんのこと好きなんだね、きっと」
「ええ? そういうこと? あ、坂田が氷の女王追っかけて行った。
坂田そういうのは面倒くさがりそうだけどな……」
亮司は玲を追いかけて手首を掴んだ。
「三枝、お前どうした? 教室までお前の声聞こえたぞ? 中里ちゃんと何話したの?」
「その中里ちゃんっていうのもやめてよ! 気持ち悪い!
亮司くん、何で僕は名前で呼んでくれないの? あいつばっかりみんな可愛がって……そりゃ僕はでかいし、可愛くないし、性格悪いけど……」
「ふはっ。お前自覚あるんじゃん。
はは。大丈夫。お前は可愛いよ」
坂田は玲の頭をポンポンっとした。
玲は顔を赤らめて言った。
「お願い……少しだけ……抱きしめて……お願い」
「ったく、俺、男好きじゃないんだよ? お前と付き合う気もないんだよ? それなのにこんなことしてたら辛いだろ?」
亮司は玲を抱きしめて言った。
「うん……今、この幸せを噛み締めとく……亮司くん、好き」
「不思議とお前には鳥肌立たないなぁ。うん、可愛いよ」
