僕たちの恋は、いつだって予想外。~強気で不器用な美少年たちは今日も恋に全力投球……顔面偏差値100超えの6人が織りなす、甘くて痛い初恋の記録~

「俺らのクラス、背高い奴多いし、いけてる奴も結構多い方だから安易にホストクラブなんてやったけど……こんなに他校の女子来るなんて思わんかったな。女であふれかえってる……」

待ってました! 一週間後の文化祭。大勢の一般客も訪れる。

蒼士たちのクラスはホストクラブをやっている。これまた、皆ビシッとスーツで決めている。

「マジだぜ……めっちゃ忙しいじゃん? これ……四季来てくれるかなー? あっ!! 来たっ!! 四季!! こっち! 席取ってる」

「うわぁ! 蒼士かっこい〜! ホストだぁ! 写真撮りたいっ!!」

「もちろん、四季が来るの待ってたんだからなぁ!」

四季は蒼士に抱きつき、蒼士はギュッと抱きしめた。

「うわっ?! 矢田と中里じゃん?! お前ら何? ナチュラルに抱き合ってんの? なになに〜? 羨ましいんですけど〜」

「おいおい吉村、こいつらのことはほっといてやれー」


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蒼士の営業トークが始まった。

「お姫様、今日は来てくれてありがとう。こんなに可愛いお姫様見たことない。俺、君のこと好きになっても良いかな?」

「蒼士っ!! 僕のことほんとに好きになってっ!!」 

「四季可愛いなぁ! ずっと大好きだよ〜」

──四季の言葉は本気だ。例えホストのフリだとしても他の子に『好き』って言って欲しくない。
自分を本当に好きになって欲しい。
……けど、こんなことでもなければ口に出して言うことも出来ない。

……意気地なし。

蒼士は、他校の女子はもちろん、同じ高校の文系男子からも人気で、写真撮影にも列が出来ている。連絡先を渡す子、その場で告白する子までいる始末だ。四季はその様子を無言で見つめていた。


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「うわぁ〜きっついなこれ。やっと休憩〜」

「お、おう……四季今何してんのかな……」

蒼士は休憩時間になり、四季のクラスへ行きたくてウズウズしていた。
それを見兼ねた亮司が声をかけた。

「中里ちゃん……行っても怒んないと思うけどな? 照れ隠しだよ。行こうぜ?」

亮司に誘われて四季のクラスへと出向いた。

廊下を進んで行くと圧倒的にひとクラスの前だけ人だかりができている。四季のクラスだ。

蒼士はギョッとした。何と、クラスの男子全員が短いスカート丈の、可愛い可愛いメイド姿になっていたのだ……。

「は? 四季は? 四季もこんな格好を? は? 俺聞いてない……てか許さない……」

「お前はお父さんか!! だから中里ちゃんも嫌だったんだろ? 見つけても怒んなよ? 意味わかんねーし」

「いや、そーだけど……」

「蒼士っ!!」

蒼士は振り向いた。そこには可憐な美少女がメイド服を着て立っていた。

四季?! 
かわいっ……いや、エロいぞ?! 萌える!!

四季は顔を赤くして、プルプル震えながら言った。

「来ないでって言ったのにっ!! こんな格好恥ずかしい!!」

「は、恥ずかしくないっ!! ってか世界一、いや、宇宙一可愛い! 四季、可愛い! 抱っこさせて! 写真撮らせて! 俺にもお給仕して!」

四季は不服そうだったが、お茶やお菓子を提供してくれて、写真を撮らせてくれた。膝にも乗ってくれた。蒼士は悶絶した。かわいい……

「もうっ! 恥ずかしいから来ないでって言ったのに、蒼士の馬鹿っ!」

「他の男には見せといて、俺には見せないつもりだったの……? そんなの許さないよ?」

「う〜……。そんなこと言われても……恥ずかしいものは恥ずかしい……こんなにスカート短いし、お化粧までしてるんだよ? ほんとにかわいい??」

「何言ってんの? マジでかわいいに決まってるじゃん?! 俺は見れて良かったよ〜。危うく見逃して、一生悔やむとこだった……早速ホーム画面にしたから。これでいつでも眺められる……あ、また俺変態くさい?」

四季は赤くなって黙り込んでしまった。

……四季のホーム画面もカッコ良いホスト姿の蒼士になっていることは誰にも内緒だ。


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二人の距離はどんどん縮まる。バイト、休日の買い物に、登下校。昼休みになると蒼士が会いに来た。

「ねぇ、また矢田くんが中里くんのクラスに会いに来てるよ? あの二人どうなってるの?」

「バ先が同じで仲良しなだけって言ってるらしいけど……特に矢田くんって中里くんのこと好きすぎだよね? バレバレ。いつもお菓子とか持ってきてあげてるらしいよ。しかも手作り。餌付けだよね(笑)」

「僕矢田くん良いなあと思ってたのに、ショック〜! 中里かぁ。圧倒的に負けだよね〜コレばっかりは仕方ないか」


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「よっ! お二人さん、ちょー噂の的だな。」

亮司は言った。

「二人付き合ってるって噂、後夜祭の後からすごいよ?」

四季は顔を真っ赤にして叫んだ。

「違うよっ!! 蒼士とはすごく仲良いけど、そんなんじゃないんだから!! 蒼士そんなこと言われたら困るじゃん……」

そこまでハッキリと拒否されて蒼士はショックを受けた。

「あ、あのさぁ……四季、落ち着いて……そんなに嫌なんだ……ちょっとショック」

「ち、違うよ! 蒼士が嫌かなって……僕男だし、蒼士モテるし……」

蒼士は四季以外にモテても無意味なのだ。
亮司は呆れた。ただのじゃれ合いだ。

「……ふーん……なんか、アホらしくなってきた。まぁ、二人仲良く喧嘩してな?」


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世間はすっかりクリスマスムードだ。
まあ、だから何だというのだが……

蒼士は四季と過ごしたかった。
当然四季も蒼士と一緒に居たかった。

幸か不幸か二人は24日はバイトだ。
というか社員もアルバイトもスタッフ総出だ。
チキンの販売があるため大忙しなのだ。

「四季、バイト終わったらどっかでケーキでも一緒に食わねぇ?」

「わー!! それいい!! バイトで忙殺されて、更にその後クリぼっちなんて嫌だもんね〜じゃ、約束ね!!」


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「いらっしゃいませ〜!! チキンのお受取りの列はこちらでーす!! 当日のお客様はこちら……」

バイトは想像を軽く超えてくる忙しさだった。四季もよく動き、蒼士も笑顔を絶やさず頑張った。

「はい、今年も大忙しだったね〜まだ明日も残ってるからよろしく〜」


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制服を脱ぎ、ロッカーを閉めた。

「あー、疲れた。蒼士、これからどこ行く? 僕その辺のカフェとか……」

「俺、予約してる店があるからついて来て」

「?? わかった……?」

四季は言われるがままについて行くと、有名なホテルの豪華なレストランに連れられた。
四季は呆気に取られて、開いた口が塞がらない。

「そ、蒼士……ここって……」

「ああ、ここおじさんが働いてるホテルなんだよね。ちょっとコネで予約取ってもらっちゃった」

蒼士はVサインをしてみせる。
四季は相変わらずポカンとしている。

「あ……ここスイーツ美味しいし、クリスマスの特別メニューあるらしいから良いかなって思って……勝手にごめんね? 他の場所にする?」

「!! いや、違う!! 想像よりもあまりにも凄いことするなって思って……嬉しい!! 凄いよ!!」

蒼士は内心ガッツポーズだ。
やべぇ、四季驚いてる……ちょー可愛いんですけど……


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「いつも思うけど、四季ってすっげー食うよな。どこに入んの(笑)?」

「お料理すっごく美味しかったから!! 満足〜!! ケーキどれにしようかなぁ。スタンダードにいちごのたっぷり乗った生クリーム? それともチョコホイップクリーム? 迷っちゃう……」

「気になるの全部頼めば良いよ。俺も沢山食べたい」

「わーい!! じゃあ、いちごのやつと、チョコのやつ、フルーツタルトにチーズケーキ……プリンにアールグレイ、ザッハトルテ!!」

「おお、そうしよう」

運ばれてきたケーキに四季は感動した。

「蒼士、今日は今までで一番最高のクリスマスだよっ!! 本当にありがとう!!」


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二人は店を後にして、街にある大きなツリーの下に腰掛けた。

ケーキも堪能したし、お別れの時間が近づく。

「あ、あのね! 僕……プレゼント用意してるんだ……い、いらなかったら捨てても、誰かにあげちゃっても良いから……」

「え? なになに? 勿体ぶらないでよ!」

「……マフラーなんだけど……蒼士似合うかなって思って……ごめんね、好みもわかんないのに」

「いや、すげえ……まさかプレゼントもらえるなんて……俺ブルー好きだよ? 寒色系が似合うって言われる。ありがとう。似合う?」

「うんっ!! よく似合うよ!! かっこいい!!」

うっわ……四季にかっこいい言われた。
どうしよ?

「四季、ごめんね。俺プレゼント用意してなくて……」

「そんな! ディナーご馳走してくれたじゃない! 人生で一番最高だよ! ありがとう!!」

四季は蒼士の胸に飛び込んだ。
二人にとって最高のクリスマスだ。


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「ってことがあってさあ、このマフラー四季からのプレゼントなんだよ。羨ましいだろー?」

亮司は答えた。

「おうおう、羨ましいぜ。マジ良かったな、蒼士。付き合ってもないのに最高じゃん? まだ告白せんの?」

「──告白はするけど……タイミングが見つからないっていうか……四季もよく懐いてくれてると思うし、可能性ゼロじゃないと思うんだけど……」

「まあ、焦らずともいいんでは? もっと仲良くなってからでも……

──既に仲は良すぎると思うけどな、あは」


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バレンタイン当日、男子校だというのに校内はこの特別なイベントにざわついていた。

ハッキリ言うとキモい……はずだった。

しかし、蒼士にとって今年は違う。
好きな子にチョコを渡すのだ。

四季の好きなケーキにたっぷりとチョコのホイップクリームを乗せ、可愛く飾りつけた。もちろんスポンジから手作りでイチゴも沢山乗っけた。極め付けはチョコプレートで告白を……我ながら可愛く仕上がった。

「うっわ、お前遂にそこまできたか〜
いくら好きだからって本格的な菓子作りまで……」

「黙れよ、坂田。俺は四季に惜しみない愛を注ぎたいの!……あと、今日告白するつもりなんだ。結果がどうであれ、受け止めるよ」

「中里ちゃんと上手くいくといいな」

「おぅ、サンキュ」

蒼士と亮司が教室にいると後ろから話しかけられた。

「あの、矢田くん……お話しがあります……えっと……」

蒼士を訪ねていかにもというような可愛らしい男子がやって来た。

「あぁ……良いけど……。何? 話って」

二人は廊下に出て話し始めた。

「好きです!! 入学式で初めて見てからずっと好きでした……付き合っている人がいないなら、僕と付き合ってくれませんか……? 

手作りなんです。チョコ、受け取ってください!」

「ごめん……俺、好きな奴がいるんだ。
だから好きな奴以外からもらってもハッキリ言うと迷惑だし、嬉しくない。
酷いこと言うようだけど……それが事実なんだ。ごめん」

「……好きな人がいることはわかってました。
中里くん、ですよね?……ハッキリ言ってくれてありがとうございました」

その男子はペコっと頭を下げて走り去って行った。

蒼士が教室に戻ると亮司がやれやれという感じで言った。

「お前、男子校でもモテるねー。さっきから何人断った?」

「お前も人のこと言えんだろうが、坂田。お前の振り方ひでぇよ?……いくら男同士でも気持ち悪いとか……」

「何で? お前何とも思わないの? 好きでもないホモの男に告られて、手作りチョコもらってキモいとか」

「そりゃ……思うけど……でも」

『カターンッ!!』

二人が音のした方を振り返ると、青ざめて小刻みに震える四季が立っていた。

「あ、四季……何してるの? こっちにおいで?」

四季はポロポロと涙を流した。そしてその場を走り去った。

「あっ?! おい! 四季? 何だよ……あいつ?」

「──おい、蒼士。中里ちゃんが落として行ったのって、多分チョコだぞ……俺らの話し聞いてたんじゃない……?」

『「何で? お前何とも思わないの? 好きでもないホモの男に告られて、手作りチョコもらってキモいとか」

「そりゃ……思うけど……でも」』

「あっ……嘘だろ? 話聞いてたら最悪じゃん……四季のクラスに行ってくるっ!!」

「蒼士、ごめんな! 俺があんな言い方してお前巻き込んだ。悪かった」

蒼士はニヤッとして返事をした。

「大丈夫! こんなことじゃへこたれない」

蒼士は四季からのチョコ、そして四季へ贈るために作ったケーキを持って四季の元へと急いだ。


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四季はウキウキしながら蒼士のクラスへ急いだ。

なんたって今日はバレンタイン!

……入学式で見かけてから蒼士のことがずっとずっと好きだったのだ。何の接点もないままで終わるはずだった。けれど、バイトも一緒で、とても可愛がってくれる。
自分に都合の良いように勘違いしてしまいそうになる。
『好き』になってくれているかもしれない……
気持ちが抑えきれない。

蒼士が好き……頑張ってチョコ作った!! 
食べてもらいたい! 
好きになってもらいたい! 
一年で一日だけ……
告白するチャンスを僕にください……!

息を切らしながら蒼士のクラスに向かった。
中は蒼士と坂田の二人だけのようだ。他に人がいない。都合が良い。

「あっ!蒼士……」
その後、四季は言葉を失った。

『「何で? お前何とも思わないの? 好きでもないホモの男に告られて、手作りチョコもらってキモいとか」

「そりゃ……思うけど……でも」』

……四季は目の前が真っ暗だった。

『カターンッ!!』

その音で蒼士と坂田は四季の方を振り返った。

『「あ、四季……何してるの? こっちにおいで?」』

そこで、普段通りに話に加わって、義理チョコだよ! って渡せば良かったのだ。
何の問題もない……はずなのに……出来なかった。

息を切らし教室に戻ると机に突っ伏して泣き崩れてしまった。

『バタバタバタバタ……』

「四季っ!! 待って!! ……四季?! どうしたの? ……話、聞こえてたの?」

蒼士は四季の元へ駆け寄り、うつ伏せになっている四季を引き起こし、自分の膝に乗せた。

「う〜っ……ひっく……うぇ……ふぇ……ひっく……そうし……ホモきらい? ふぇ……ん……ぼく……そうしにチョコ……つくっちゃっ……きもいよね……」

「なっ?! 何言ってんだよ?!
そりゃ、好きでもない子からの手作りは困るけど……
四季からのは大歓迎!! てか嬉しいっ!! え? 何? 手作りなのっ?? まじ? やば……嬉しすぎて……死ぬ」

蒼士は四季を思いっきり抱きしめた。

「?? 蒼士、キモくないの? 僕からのチョコ……ひっく……くすん」

「ねぇ、俺四季からの手作りチョコの意味、四季の口から聞きたいんだけど……」

「あ……あのね、僕、入学式で蒼士のこと初めて見て、その時から大好きなの……ふぇ〜ん……ひっく……好き……蒼士、好き……」

「……まじか、俺死にそう。……なぁ、四季。……俺もお前にチョコケーキ作ったんだ。お前に喜んで受け取って欲しくて……
……なあ? 受け取ってくれる? 食べてくれる? キモくない?」

「ふぇ……そ……しい……キモくない、キモくない……そーしぃ……うわぁん……」

「俺、初めて会ったバイトの日から四季が好き。好きだ」

蒼士は四季を抱きしめた。
そして頬に羽根のような軽いキスをした。


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蒼士は膝に乗せた四季の向きを変えると、後ろから抱えるようにして座らせた。

「四季は何を作ってくれたの? チョコ?」

「えっとね、生チョコだよ! 初心者でも意外と作りやすいって書いてあったから。蒼士は……ケーキって何事?!」

「お前チョコとケーキ好きだろ? だからチョコホイップたっぷり、イチゴたっぷりのケーキにした。スポンジから作ったんだぜ? すげーだろ?」

そう言うとケーキを箱から出して見せた。

「うわぁ!! 思ったよりすご(笑)!! かわいい!! でっかい!! イチゴいっぱい!!
美味しそ〜っっ!!
──嬉しい。
プレートの文字、“SOSHI ♡ SHIKI”だって……嬉しいよ……」

「四季が喜んで良かった。俺も四季の生チョコ食べて良い?」

「蒼士のケーキの後だと恥ずかしいけど……どうぞ、召し上がれ」

「……!! うまい! コレうまいよ! 四季、上手じゃん! うっま! また作ってよ」

「そんなに褒めちゃう(笑)? 嬉しいからまた作ってあげる!」

四季は勢い良く立ち上がり、蒼士に飛びついた。
四季も蒼士お手製のチョコケーキを頬張った。

「……スポンジふわふわ〜!! チョコホイップ絶妙〜何コレうまぁ!! 蒼士天才!! 僕にたまにくれる手作りのお菓子も蒼士が作ってたんでしょ? すごぉい!! 僕幸せ!!」

「大袈裟だなあ、四季は。そんくらいいつでも
作ってやるよ。俺、何て言われてるか知ってる? 四季に餌付けしてるって言われてる(笑)」

「あは、あながち間違いでもないかもね。お菓子持って蒼士が来てくれること、すごく楽しみだったんだ〜」

「──なあ、俺たち付き合おう?
ってことで良い? 四季、俺の恋人になって欲しい」

「う〜っ……蒼士〜くすん……大好き……ふぇぇん……僕も恋人に……なりたかっ……うわぁん……」

蒼士は四季を抱きしめて、抱え上げると音を立てて額にキスをした。

『チュッチュッ……』

後を追いかけて来ていた亮司は二人に声をかけた。

「中里ちゃん、ごめんね。俺のせいで誤解させちゃって……そいつまじで中里ちゃんのこと好きすぎるからよろしく頼むよ」

四季は頬を染めると答えた。

「僕の方が絶対好きだよっ!! ずっと好きだったんだから!!」

そして蒼士を引き寄せて何度も頬にキスをした。

その日、蒼士と四季はお互いにしっかりと手を繋いで帰った。


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すったもんだのバレンタインの末、二人は無事に恋人になった。
けれど、元々仲の良すぎた距離感の二人にはあまり変化はなかった。

「しっかし、お前ら元々甘々だったから変わり映えしねぇなぁ……なんか恋人らしいこととかしないの? 中里ちゃん?」

「ん……とね、蒼士が告白される時には僕もついて行って相手に文句を言っていい!! とか?」

「四季……それは……けど気持ちはわかる。俺も四季の恋人として周りを牽制したい。四季可愛すぎて心配が尽きない」

「お前ら何だよ……そんなことを聞いてんじゃねぇよ……この馬鹿ップル」


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蒼士は言った。

「でもさ、四季。坂田の話しじゃないけど、俺も何か変わり映えが欲しい気もする。

てか、みんなに交際宣言したいんだけど
……まじで四季が告られるのが不安すぎる。
裏切るとか、そんなんじゃなくて、四季が狙われる、そういう目で見られること自体が嫌」

「僕だって嫌だよ! 蒼士いつも告白されてるじゃん! 女の子だけじゃなくて男の子からも! 不安だよ……蒼士の言うように、疑う訳じゃない。嫌なの」

「……ペアリング、する?」

「へ? ……ペアリングって指輪? するっ!!するよ!! 僕ね、今までのバイト代何にも使ってないんだ。だから僕がお金出す!」

「奇遇だな、四季。俺もバイト代は貯金してんだよ。じゃあお互いにプレゼントする?」

「それが良い!! 明日!! 指輪買いに行こ?」

蒼士は四季を抱きしめた。

「かわいいなぁ、四季……よし、明日行くぞ!」


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次の日の朝、四季はウキウキしながら準備をしていた。
外は生憎の雨模様だったが、四季の心は晴れやかだった。

♪ 〜

「あ、蒼士からだ。もしもし? 蒼士? もうすぐ準備……」

『四季、本当にごめん! 今日家族のことで急に行けなくなっちゃって、明日の日曜にずらしてもらえる? 明日は必ず大丈夫だから! 本当にごめん!』

「……うん。わかった。仕方ないよね。また明日」

四季は落胆した。一人家でモヤモヤしながらゴロゴロしていた。
やはり居ても立っても居られなくなり、少しだけ、一目だけでも会いに行こうと決めた。

スニーカーを履き、家を出る時には雨は止んでいた。傘は要らない。運が良いと思った。

蒼士を驚かせようと連絡をせずにやってきた。
蒼士の家の前でタイミングよく蒼士を見つけた。

「あ! 蒼士……」

タクシーから降りてきた蒼士は、女の人と抱き合っていた。女の人は泣いているようだ。

……元カノかな? ……浮気?

どちらにしろ、蒼士は自分以外の人を抱きしめている。

なーんだ。やっぱ女の人の方が良いんじゃん。

雨が降り始め、二人は蒼士の家へ入って行った。

……僕は家に入ったことないのに。

本格的に雨が降り始めたが、四季は傘も持たず、何時間もその場に立ち尽くしていた。

家に帰る間も、帰ってからも蒼士からメッセージと着信が沢山来た。
……出ることは出来なかった。

次の日、四季は連絡をせずにすっぽかすことになった。