特に何か問題が発生するなんてこともなく、夏休みは過ぎ去り。
母さんが退院して帰ってきたこと。体力が戻ったわけではないから、まだ俺が買い出しや料理を続けている。他の家事も同様だけどこれは昔から大抵やっているから変わらない。でも病院にお見舞いに行く時間がなくなったからかなり余裕ができた。
甚鉄の何ひとつ手をつけてない夏休みの宿題を終わらせるために俺が格闘するという毎年の恒例行事も問題なかった。俺と湊が疲れたということ以外は。
壁に耳ありの不審者ムーブもしてしまった。アパートの隣人のことが知りたくて。壁が厚いのか居なかったのかわからないが音を聞き取ることはできなかった。妹に何してるの?と言われたときは、手に持っていた高いアイスに言及することで難を逃れた。
思考が危うくなってることに気づかせてくれた妹には感謝して、一度だけの犯行で済んだ。
夏休み中はほとんどすれ違わなかったんだよな。長期休暇でバイトの時間を変更していたのか。逆にバイトを全く入れてなかったのか、知る由はない。
「富貴、呼んでるよ」
「え? 誰?」
昼休み終わりそうな時間だぞ。
「あの人。富貴が気にしてる人でしょ?」
湊がちょいちょいと軽く指差した先を視線で追う。教室のドアの先に見慣れない姿の、久しぶりに見る見慣れた顔が。
制服着てる! バイトの制服じゃなくて、学校の……!
「サンキュー!」
湊に礼を言い、机の間を縫って神白のところまで駆けていく。
「神白!」
「及木。おはよう」
「あぁ、おはよ」
昼だけど。やっぱこんにちはって挨拶はなんか違うよな。
顔を見合わせて、何を話せばいいのか、話したいことはたくさんあるような気がするけど、形にならない。
まだ廊下にまばらにいる他の生徒にチラチラ見られるのも鬱陶しくて落ち着かない。背の高い美形は目立つんだな。
「場所移動しよう。こっち」
頷いた神白をついて来させ、屋上手前の踊り場まで移動する。
屋上の鍵は開いてないから人気がなくて静かな場所だ。入学して早々に甚鉄たちとガチャガチャやって確認した。開いてなくて残念。
「学校来てたんだな」
「うん。今日から」
やっぱり何を言えばいいか、言葉に詰まる。
俺は神白が学校に来るようにするために何かしたわけでもないし。
学校に来てこいつから俺に会いにきてるわけだから、それについて何も言わないのも変なので話題を振った。でもそれ以上言うことってないよな……。
「ね、昼休みに及木に会いに来ていい?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。少しして脳に言葉が届いて意味を理解すると、よくわからない嬉しさがじわじわと込み上げてくる。
「もちろん……!」
俺が返事をすると、よかった……と小さく呟いてふわりと顔を綻ばせる。
……そう、この顔! ユラユラ溶ける目。神白が破顔する瞬間が好きだな。なんだろう、守りたいこの笑顔ってやつ? この顔見ると俺も釣られて自然と笑顔になってる。
「あ、一緒に——」
一緒に登校しよう、朝迎えに行くから。と言いたかった。隣だし、
隣の部屋に迎えに行くことを想像して、ドア越しの記憶がフラッシュバックした。
——必要ないから……もう来なくていいよ。
「どうしたの?」
う……。求められてないことをやるのはやめておこう。
これは自分の勝手な欲か。なら言わない方がいい。
俺が特に何もしなくても学校に来る気になったんだ。余計なことして何か迷惑がかかったり、拗れたりしたら嫌だし……。
隣人だからって朝から会いたいってのはおかしいよな。昼に会うことになったし、夕方もうまくすれば会えるんだ。
「あー、一緒に飯食ったときのこと思い出しちゃって……」
これはこれで気まずいことを口走った。恥ずかしさというか、照れるというか、そわそわする感じがしてくる。同時にいろいろな記憶が戻ってきてポイッと向こうに投げておく。
「またここに集合でいいか? クラス違うしな」
会うのは全然良い。ただクラスが遠いのはやっぱネックだよな。授業が合同になることもないし。廊下で会うこともほとんどない。
「うん。静かでいいね」
なんで突然来る気になったんだろうか。
出席日数やばすぎてさすがに危機感でも出てきたのか。
でも、メモを渡さなかったの後悔してたから来てくれて良かった。まだ出席日数とか問題ないってことだよな。
余計なことしない方がいいって思っているのに、わかっているのに、こうしたいなという欲求が湧いてくる。
自分のしたいことを棚に置いて、すぐに先生に聞くくらいなら、と。
せっかく来たんだ。留年にも退学にもなってほしくない。また不登校に戻るのも本意じゃないだろ。神白も俺も。
◆
「二星先生」
「おっ! 及木。お前の方から来てくれたのか!」
放課後、職員室に行くと満面の笑みで迎え入れられた。
「いやー、ありがとな! 神白から学校行くって連絡してきてな。実際に来てたし安心したわ。説得してくれたんだな」
「いえ」
「期末も保健室だけどちゃんと受けに来たんだ。授業受けてないのに軒並み点数が高かったんだよなー」
期末テストもちゃんと受けに来てたのか。保健室ってことは一応校舎内に入ってきてたんだな。全然知らなかった。棟が違うから仕方ないか。
点も取れたみたいだし、ここは安心していいのかな。というかあいつ頭も良いのか。ノートなんて最初から要らなかったんだな……。
「お前が教えてやったのか? さすがだな!」
「いや、してないですけど」
「え? お前謙遜できたの?」
「は?」
「え?」
互いに理解ができないという顔を押し付け合う。そのまま数秒見つめ合った。しかしこのままでは埒があかない。俺はそのまま押し付け続けて、先生が折れた。
「してないって何をしてないんだ」
「何って何もしてないんですよ。拒否されたんで、俺は何もしてないですね」
「拒否? 誰にだ?」
神白の話をしているんだから神白に決まってるだろ。それ以外で先生と話すことなんてないですよ。つい胡乱げな目を向けてしまった。
「先生に最初から最後までわかるように説明してみろ。ちゃんと聞いてやるから」
「あー、かくかくしかじかで」
「ちゃんと言え」
「……」
嫌すぎて顔を背けてしまった。
その間に隣の席の椅子をパクってきて座るように促される。帰りたい。座らされた。
座席がクルクルと回るタイプのキャスターのついた椅子だったので、左右に遊ばせつつ距離を取った。心ばかりの抵抗だ。受け取ってほしい。
掻い摘んで、先生に頼まれたその日に様子見に行って拒否られた。それ以降何もしてない。ただ生活圏が被っているから挨拶したりちょっと話したりした、というのをしどろもどろに伝えた。
俺が風邪を引いて看病してもらった事が九割九分九厘端折った。いいだろ、看病されたという事実がわかれば。
生活圏被ってるのがわかってるからお前に頼んだんだよ、というツッコミをいただいた。そうだったな。前にも言われたわ。つまり先生のせい。
「何もしてないとは言わないと思うなぁ先生は」
「はぁ」
俺の両肩をポンポンと叩きながらしみじみと言ってくる。
何もしてないとは言わない。勝手なことをしたってことか?
「なんだどうした。いつもの勢いはどこに行ったんだ? また風邪か?」
「引いてません」
「なんでそんなに嫌そうな顔するんだ。すごい顔だぞ」
思い出すからやめてほしい。
「まぁ俺のことはいいんで。不登校の生徒用になんかいろいろあるって前に言ってたじゃないですか。それについて教えてください」
それはそれ。これはこれとして、情報は欲しい。どうするかはそれから決めるでもいいだろう。
「先生、及木に頼んで良かったよ。ほろり」
「そういうのいいんで。あ、俺が聞いたとか話したとか言わなくていいですから」
「ノリ悪いな。調子が戻ってきたか?」
本当にハンカチを出して目元を拭く仕草をしてくる。随分と可愛らしいピンクのキャラクターもののハンカチで正直先生の仕草よりそっちの方が気になるな。
「不登校の生徒用の特別課題だけどな——」
◆
みっしりと詰められた文字が載るプリントの数々。
課題多いな……。全教科のプリント課題に、数学以外全ての教科のレポート課題。それに加えて学校貢献で美化活動など。最後のはパシリっぽいな……。学校に慣れることが目的であると書かれてるけど。
化学とか物理でテーマに沿ってレポートを書けとか俺には地獄すぎる。もう単純にやること多いし、普通に授業受けた方がマシじゃないか?
あ、なるほど。そうなってくれれば学校側も万歳か。
あいつ出席日数が既にギリギリ、ギリギリアウト……いや、セーフ……。だから、全部こなす必要があるはず。
図書室に行って、いい感じの資料がないか漁ってみようかな。
ついでにお見舞いに行ってた時間がぽっかり空いたし、本を借りてもいい。湊におすすめを聞けばピックアップもしてくれそう。
まぁ明日だな。
今日は買い出しに行きたいからな。鶏肉が安い!って広告が入ってた日だから買い出しに行っておくべきだろう。
つーか、先生にお礼だって言って缶コーヒーを渡されたけど、温いし押し付けられたのでは? 仕返しか?
どっちかって言うならブラックより甘いやつの方がよかった。
風邪引くと大変だからな、とのど飴を1つくれた。なんかお高いやつらしい。授業のお供にしている大切なやつだからここぞのときに使えと言われた。1つだけなんてケチだな。
キャラキャラと騒がしい声に思考を阻まれて意識を声のした前方に向ける。
神白が女子たちに囲まれていた。頭一個デカいからすぐわかるな。
女子たちの早速の食いつきにすごいな、となる。
妹もイケメン! 野菜のお兄さんメロい! って湧いていた。妹は見る目があるから、この状況も仕方ない。
なんかまた頭が霞がかった感じがする。
まさかまだ風邪が……? でも熱なかったし大丈夫。もう測ってないけど。
廊下塞がれてて通れないし、別の道から帰るか。
母さんが退院して帰ってきたこと。体力が戻ったわけではないから、まだ俺が買い出しや料理を続けている。他の家事も同様だけどこれは昔から大抵やっているから変わらない。でも病院にお見舞いに行く時間がなくなったからかなり余裕ができた。
甚鉄の何ひとつ手をつけてない夏休みの宿題を終わらせるために俺が格闘するという毎年の恒例行事も問題なかった。俺と湊が疲れたということ以外は。
壁に耳ありの不審者ムーブもしてしまった。アパートの隣人のことが知りたくて。壁が厚いのか居なかったのかわからないが音を聞き取ることはできなかった。妹に何してるの?と言われたときは、手に持っていた高いアイスに言及することで難を逃れた。
思考が危うくなってることに気づかせてくれた妹には感謝して、一度だけの犯行で済んだ。
夏休み中はほとんどすれ違わなかったんだよな。長期休暇でバイトの時間を変更していたのか。逆にバイトを全く入れてなかったのか、知る由はない。
「富貴、呼んでるよ」
「え? 誰?」
昼休み終わりそうな時間だぞ。
「あの人。富貴が気にしてる人でしょ?」
湊がちょいちょいと軽く指差した先を視線で追う。教室のドアの先に見慣れない姿の、久しぶりに見る見慣れた顔が。
制服着てる! バイトの制服じゃなくて、学校の……!
「サンキュー!」
湊に礼を言い、机の間を縫って神白のところまで駆けていく。
「神白!」
「及木。おはよう」
「あぁ、おはよ」
昼だけど。やっぱこんにちはって挨拶はなんか違うよな。
顔を見合わせて、何を話せばいいのか、話したいことはたくさんあるような気がするけど、形にならない。
まだ廊下にまばらにいる他の生徒にチラチラ見られるのも鬱陶しくて落ち着かない。背の高い美形は目立つんだな。
「場所移動しよう。こっち」
頷いた神白をついて来させ、屋上手前の踊り場まで移動する。
屋上の鍵は開いてないから人気がなくて静かな場所だ。入学して早々に甚鉄たちとガチャガチャやって確認した。開いてなくて残念。
「学校来てたんだな」
「うん。今日から」
やっぱり何を言えばいいか、言葉に詰まる。
俺は神白が学校に来るようにするために何かしたわけでもないし。
学校に来てこいつから俺に会いにきてるわけだから、それについて何も言わないのも変なので話題を振った。でもそれ以上言うことってないよな……。
「ね、昼休みに及木に会いに来ていい?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。少しして脳に言葉が届いて意味を理解すると、よくわからない嬉しさがじわじわと込み上げてくる。
「もちろん……!」
俺が返事をすると、よかった……と小さく呟いてふわりと顔を綻ばせる。
……そう、この顔! ユラユラ溶ける目。神白が破顔する瞬間が好きだな。なんだろう、守りたいこの笑顔ってやつ? この顔見ると俺も釣られて自然と笑顔になってる。
「あ、一緒に——」
一緒に登校しよう、朝迎えに行くから。と言いたかった。隣だし、
隣の部屋に迎えに行くことを想像して、ドア越しの記憶がフラッシュバックした。
——必要ないから……もう来なくていいよ。
「どうしたの?」
う……。求められてないことをやるのはやめておこう。
これは自分の勝手な欲か。なら言わない方がいい。
俺が特に何もしなくても学校に来る気になったんだ。余計なことして何か迷惑がかかったり、拗れたりしたら嫌だし……。
隣人だからって朝から会いたいってのはおかしいよな。昼に会うことになったし、夕方もうまくすれば会えるんだ。
「あー、一緒に飯食ったときのこと思い出しちゃって……」
これはこれで気まずいことを口走った。恥ずかしさというか、照れるというか、そわそわする感じがしてくる。同時にいろいろな記憶が戻ってきてポイッと向こうに投げておく。
「またここに集合でいいか? クラス違うしな」
会うのは全然良い。ただクラスが遠いのはやっぱネックだよな。授業が合同になることもないし。廊下で会うこともほとんどない。
「うん。静かでいいね」
なんで突然来る気になったんだろうか。
出席日数やばすぎてさすがに危機感でも出てきたのか。
でも、メモを渡さなかったの後悔してたから来てくれて良かった。まだ出席日数とか問題ないってことだよな。
余計なことしない方がいいって思っているのに、わかっているのに、こうしたいなという欲求が湧いてくる。
自分のしたいことを棚に置いて、すぐに先生に聞くくらいなら、と。
せっかく来たんだ。留年にも退学にもなってほしくない。また不登校に戻るのも本意じゃないだろ。神白も俺も。
◆
「二星先生」
「おっ! 及木。お前の方から来てくれたのか!」
放課後、職員室に行くと満面の笑みで迎え入れられた。
「いやー、ありがとな! 神白から学校行くって連絡してきてな。実際に来てたし安心したわ。説得してくれたんだな」
「いえ」
「期末も保健室だけどちゃんと受けに来たんだ。授業受けてないのに軒並み点数が高かったんだよなー」
期末テストもちゃんと受けに来てたのか。保健室ってことは一応校舎内に入ってきてたんだな。全然知らなかった。棟が違うから仕方ないか。
点も取れたみたいだし、ここは安心していいのかな。というかあいつ頭も良いのか。ノートなんて最初から要らなかったんだな……。
「お前が教えてやったのか? さすがだな!」
「いや、してないですけど」
「え? お前謙遜できたの?」
「は?」
「え?」
互いに理解ができないという顔を押し付け合う。そのまま数秒見つめ合った。しかしこのままでは埒があかない。俺はそのまま押し付け続けて、先生が折れた。
「してないって何をしてないんだ」
「何って何もしてないんですよ。拒否されたんで、俺は何もしてないですね」
「拒否? 誰にだ?」
神白の話をしているんだから神白に決まってるだろ。それ以外で先生と話すことなんてないですよ。つい胡乱げな目を向けてしまった。
「先生に最初から最後までわかるように説明してみろ。ちゃんと聞いてやるから」
「あー、かくかくしかじかで」
「ちゃんと言え」
「……」
嫌すぎて顔を背けてしまった。
その間に隣の席の椅子をパクってきて座るように促される。帰りたい。座らされた。
座席がクルクルと回るタイプのキャスターのついた椅子だったので、左右に遊ばせつつ距離を取った。心ばかりの抵抗だ。受け取ってほしい。
掻い摘んで、先生に頼まれたその日に様子見に行って拒否られた。それ以降何もしてない。ただ生活圏が被っているから挨拶したりちょっと話したりした、というのをしどろもどろに伝えた。
俺が風邪を引いて看病してもらった事が九割九分九厘端折った。いいだろ、看病されたという事実がわかれば。
生活圏被ってるのがわかってるからお前に頼んだんだよ、というツッコミをいただいた。そうだったな。前にも言われたわ。つまり先生のせい。
「何もしてないとは言わないと思うなぁ先生は」
「はぁ」
俺の両肩をポンポンと叩きながらしみじみと言ってくる。
何もしてないとは言わない。勝手なことをしたってことか?
「なんだどうした。いつもの勢いはどこに行ったんだ? また風邪か?」
「引いてません」
「なんでそんなに嫌そうな顔するんだ。すごい顔だぞ」
思い出すからやめてほしい。
「まぁ俺のことはいいんで。不登校の生徒用になんかいろいろあるって前に言ってたじゃないですか。それについて教えてください」
それはそれ。これはこれとして、情報は欲しい。どうするかはそれから決めるでもいいだろう。
「先生、及木に頼んで良かったよ。ほろり」
「そういうのいいんで。あ、俺が聞いたとか話したとか言わなくていいですから」
「ノリ悪いな。調子が戻ってきたか?」
本当にハンカチを出して目元を拭く仕草をしてくる。随分と可愛らしいピンクのキャラクターもののハンカチで正直先生の仕草よりそっちの方が気になるな。
「不登校の生徒用の特別課題だけどな——」
◆
みっしりと詰められた文字が載るプリントの数々。
課題多いな……。全教科のプリント課題に、数学以外全ての教科のレポート課題。それに加えて学校貢献で美化活動など。最後のはパシリっぽいな……。学校に慣れることが目的であると書かれてるけど。
化学とか物理でテーマに沿ってレポートを書けとか俺には地獄すぎる。もう単純にやること多いし、普通に授業受けた方がマシじゃないか?
あ、なるほど。そうなってくれれば学校側も万歳か。
あいつ出席日数が既にギリギリ、ギリギリアウト……いや、セーフ……。だから、全部こなす必要があるはず。
図書室に行って、いい感じの資料がないか漁ってみようかな。
ついでにお見舞いに行ってた時間がぽっかり空いたし、本を借りてもいい。湊におすすめを聞けばピックアップもしてくれそう。
まぁ明日だな。
今日は買い出しに行きたいからな。鶏肉が安い!って広告が入ってた日だから買い出しに行っておくべきだろう。
つーか、先生にお礼だって言って缶コーヒーを渡されたけど、温いし押し付けられたのでは? 仕返しか?
どっちかって言うならブラックより甘いやつの方がよかった。
風邪引くと大変だからな、とのど飴を1つくれた。なんかお高いやつらしい。授業のお供にしている大切なやつだからここぞのときに使えと言われた。1つだけなんてケチだな。
キャラキャラと騒がしい声に思考を阻まれて意識を声のした前方に向ける。
神白が女子たちに囲まれていた。頭一個デカいからすぐわかるな。
女子たちの早速の食いつきにすごいな、となる。
妹もイケメン! 野菜のお兄さんメロい! って湧いていた。妹は見る目があるから、この状況も仕方ない。
なんかまた頭が霞がかった感じがする。
まさかまだ風邪が……? でも熱なかったし大丈夫。もう測ってないけど。
廊下塞がれてて通れないし、別の道から帰るか。
