雑味ショート

わたし、駅前でティッシュを配るバイトをしてたことあるの。
春は大学名の入った紙袋を持つ子が増える時期でしょ? 新生活応援キャンペーンとかで不動産屋の広告入りティッシュを配ってた。

店長からは「とにかく若い女の子から若い女の子へ渡して」って指示。契約するのは親でも、部屋を決めるのは娘なんだって。

それでね、ティッシュを差し出したときのリアクションって受け取らない場合のほうが大きいんだよ。
会釈したり、目を合わさない、こちらを透明にしてみたり。いっそ貰っちゃえば楽なのにね、不思議じゃない?

ある日の夕方、制服姿の女の子がわたしを見つけて露骨に避けようとしたわけ。
だから先回りして、差し出したの。はい、どうぞ。
そしたら、無言でかっさらわれちゃった。珍しいなと思ったな。高校生はこういうの受け取ると反射で「アリガトウゴザイマス」って言うじゃん。

その子は少し歩いてから広告を抜き取り、QRコードを読み込む。で、ティッシュだけポケットへ入れる。
しかも、わたしの足元に丸めたゴミを転がしてさ。

ま、拾ってるうち女の子は見えなくなっちゃったんだけど。

「体験入店だけでも大歓迎!!」
あのチラシ、シワがついて時給のところだけ読めなくなっていたっけ。

いくらだったんだろう?

あ、やば! これからお客さんと会う約束があるんだ。
ごめん、また連絡するよ。
じゃあね!