雑味ショート

小学生の頃、かいこを育てるという授業があってさ。最終的に茹でて生糸をとるっていう、いわゆる命の授業ね。

クラス委員のAちゃんがリーダーとなって、お蚕様の飼育をしていたんだ。

Aちゃん、絵に描いた良い子ちゃん。先生からも大人からも覚えがいいうえ、かわいいの。

かいこの世話なんて、小学生がマメにやるはずないじゃん。幼虫のビジュ、厳しめだし。
だけどAちゃんだけは毎日かかさず様子をみて日誌つけてた。

幼虫気持ち悪くない?って聞いても全然大丈夫!と笑顔だった。

でもさ、わたしみたんだよねー。

Aちゃんね、日誌にお世話内容と一緒にかいこを茹でるカウントダウンを記入してた。

イラストやシールでポップに装飾する死へのカウントダウン。かいこを茹でるまであと3日!!」みたいな感じで。

わたし、Aちゃんはかいこが家畜であるのをきちんと正しく理解してると理解したよね。

で、かいこを茹でる当日、彼女は過呼吸をおこして保健室へ運ばれて、

「Aちゃん、かいこのお世話がんばってたから情が移っちゃたのかもね」

みんなは言う。もちろんAちゃんの涙が嘘だとはわたしも言わない。
だけどさ、Aちゃんとかいこの間には明らかな線引きがあったのに。誰もその線を跨がなかった。

Aちゃんの飼育日誌は学校で表彰されたよ。

そのあと生糸とAちゃんのピースサインの写真が添えられ、廊下に張り出されたんだ。

『かいこの涙』