透けるように現れた君に恋をした。
小説のそんな一フレーズに目が止まる。
(恋……)
俺には全く分からないものだ。未知の領域というもの。
恋をしたことも、好かれたこともないからだ。いつもこんな感じで暗い空気が出てしまうから。Yohaneという得体もしれない歌手に心を掴まれてしまっているから。
ときにこのことは悪となって俺を襲う。
『悠くんってきもち悪ーい』
小学校のとき、女子に言われたその一言。
俺はただ、好きなものの話をしていただけなのに。
『っ俺は…』
何も言い返せなかった。その女子の言葉が俺の体に鎖のように巻き付いたから。
(はは…嫌なこと思い出した………)
こういうことばかりやっているから暗くなるんだと自分を叱る。いくら教室で一人ぼっちだからって、こんなことをずっと考えていては、余計に悲しくなってしまう。
俺はほんの続きを開く。所詮、この中の話は夢物語だ。実現できやしないし、現実にはあり得ない。
「ふぅ…」
俺が息をつくと、社会の先生が教室に入ってきた。
「起立」
学級委員のいつもの挨拶が教室に響く。礼をして席に着くと先生が、
「今日はグループワークだ。一週間後の社会までに資料を作成するように」
そう言って先生は先生席についた。課題は「この地域の特色及び歴史」だ。班は先生がわけてくれていて、黒板に班決めの紙が貼られている。
(俺は…四班か……)
四班のメンバーを見ると、その中に日野朱音の名前があった。彼女は孤立していた。多分、友達と一緒じゃなかったからだろう。
「えと…日野さん」
俺が声をかけると、日野さんは先ほどまでの少し暗い表情をパッと消して、
「青瀬くん!一緒か!よろしく!」
と言った。俺はなんとなく違和感を感じつつつも笑顔を向ける。
「よろしく」
班は四人。他二人は偶然にも付き合っている人たちだった。
「鈴代咲です」
「西野広大です」
最初の自己紹介だけして二人はずっとイチャイチャしている。このせいで課題が全く進まない。
「日野さん…どうする?予定しているところまで全然進んでいないんだけど…」
俺がぼそぼそとそう伝えると、日野さんは「大丈夫大丈夫!」と言った。
「今日の放課後、図書室に行ってみない?あと……話したいことがある…かな…」
その時の日野さんはどう見ても寂しそうだった。
「失礼します…」
日野さんと一緒に図書室に入る。先生の許可は事前に得ているので問題ないだろう。
(あれ…?)
俺は日野さんと並んでたってあることに気づく。
(日野さん…座っているときよりも小さく見える…?)
当たり前のことだろう。男子は絶賛成長期だ。
(そういえば木野に連絡してない……)
俺は急いで連絡する。日野さんは窓から見える夕日(まだまだ沈まないけど)を見つめていた。
「日野さん、早く終わらせちゃおう」
俺がそう声をかけると、日野さんはパッと動く。
「こっち一緒に見てみよう」
日野さんにそう言われて俺はそこに行く。
少しだけ埃を被った本たちが棚に詰まっている。俺はそこの一冊を手に取り、資料を見る。すると、日野さんが話しかけてきた。
「青瀬くんさ…めっちゃ唐突に言うけどさ…」
そう言われて俺は「何?」と聞く。
日野さんは少しドキドキしているのか心配しているのか二言目を聞くのに30秒ほど時間がかかった。
「昔、この学校で亡くなった人がいるって知ってる?」
本当に唐突だった。
「知らない」
俺がそう答えると、日野さんはニコッと笑った。いつも見せているような笑顔ではなく、なんとなくわざとらしい笑顔。
「名前は…美優って言うんだって。その子は脳の病気で…その病気もあるのにいじめられて…いろいろ大変だったらしい…それでね」
「ふぅん」
(やべっ)
彼女の話を遮る形で相槌を打ってしまった。俺があわあわと焦っていると、彼女はまた笑った。そして、
「本当かどうかはわからないんだけどね…その子、死ぬ直前、体が透けて見えたらしい…」
そう言われて俺は黙ってしまった。なんと返事をしたらいいのかわからなくなってしまった。相槌の打ち方がわからない。
(嘘っぽいなぁ…)
そう思っていても、俺は口には出さなかった。
俺が喋らなかったのを察したのか、彼女は
「変なこと話しちゃってごめんね…気にしなくていいからね」
と言って、資料探しに戻って行った。
なんだか悪いことをしてしまった気持ちでいっぱいになる。
(気の利いたこと一つできないからなぁ……)
俺はさっきの自分の態度を後悔した。なぜだか、そんな態度をとってはいけない気がしてきたのだ。
「日野さん、今日調べたことは後日まとめるってことで」
俺がそう言うと、日野さんは頷いた。
俺は図書室をきれいに片付け、帰ろうとする。すると、日野さんが突っ込んできた。
「ごめんね。あと……私のことは朱音でいいよ」
少し顔を赤ながらそう言った彼女は図書室を出て行った。
俺は図書室の施錠をしっかりする。
「朱音……」
俺が呟くと、心の中に何かがすとんと落ちてきた。
小説のそんな一フレーズに目が止まる。
(恋……)
俺には全く分からないものだ。未知の領域というもの。
恋をしたことも、好かれたこともないからだ。いつもこんな感じで暗い空気が出てしまうから。Yohaneという得体もしれない歌手に心を掴まれてしまっているから。
ときにこのことは悪となって俺を襲う。
『悠くんってきもち悪ーい』
小学校のとき、女子に言われたその一言。
俺はただ、好きなものの話をしていただけなのに。
『っ俺は…』
何も言い返せなかった。その女子の言葉が俺の体に鎖のように巻き付いたから。
(はは…嫌なこと思い出した………)
こういうことばかりやっているから暗くなるんだと自分を叱る。いくら教室で一人ぼっちだからって、こんなことをずっと考えていては、余計に悲しくなってしまう。
俺はほんの続きを開く。所詮、この中の話は夢物語だ。実現できやしないし、現実にはあり得ない。
「ふぅ…」
俺が息をつくと、社会の先生が教室に入ってきた。
「起立」
学級委員のいつもの挨拶が教室に響く。礼をして席に着くと先生が、
「今日はグループワークだ。一週間後の社会までに資料を作成するように」
そう言って先生は先生席についた。課題は「この地域の特色及び歴史」だ。班は先生がわけてくれていて、黒板に班決めの紙が貼られている。
(俺は…四班か……)
四班のメンバーを見ると、その中に日野朱音の名前があった。彼女は孤立していた。多分、友達と一緒じゃなかったからだろう。
「えと…日野さん」
俺が声をかけると、日野さんは先ほどまでの少し暗い表情をパッと消して、
「青瀬くん!一緒か!よろしく!」
と言った。俺はなんとなく違和感を感じつつつも笑顔を向ける。
「よろしく」
班は四人。他二人は偶然にも付き合っている人たちだった。
「鈴代咲です」
「西野広大です」
最初の自己紹介だけして二人はずっとイチャイチャしている。このせいで課題が全く進まない。
「日野さん…どうする?予定しているところまで全然進んでいないんだけど…」
俺がぼそぼそとそう伝えると、日野さんは「大丈夫大丈夫!」と言った。
「今日の放課後、図書室に行ってみない?あと……話したいことがある…かな…」
その時の日野さんはどう見ても寂しそうだった。
「失礼します…」
日野さんと一緒に図書室に入る。先生の許可は事前に得ているので問題ないだろう。
(あれ…?)
俺は日野さんと並んでたってあることに気づく。
(日野さん…座っているときよりも小さく見える…?)
当たり前のことだろう。男子は絶賛成長期だ。
(そういえば木野に連絡してない……)
俺は急いで連絡する。日野さんは窓から見える夕日(まだまだ沈まないけど)を見つめていた。
「日野さん、早く終わらせちゃおう」
俺がそう声をかけると、日野さんはパッと動く。
「こっち一緒に見てみよう」
日野さんにそう言われて俺はそこに行く。
少しだけ埃を被った本たちが棚に詰まっている。俺はそこの一冊を手に取り、資料を見る。すると、日野さんが話しかけてきた。
「青瀬くんさ…めっちゃ唐突に言うけどさ…」
そう言われて俺は「何?」と聞く。
日野さんは少しドキドキしているのか心配しているのか二言目を聞くのに30秒ほど時間がかかった。
「昔、この学校で亡くなった人がいるって知ってる?」
本当に唐突だった。
「知らない」
俺がそう答えると、日野さんはニコッと笑った。いつも見せているような笑顔ではなく、なんとなくわざとらしい笑顔。
「名前は…美優って言うんだって。その子は脳の病気で…その病気もあるのにいじめられて…いろいろ大変だったらしい…それでね」
「ふぅん」
(やべっ)
彼女の話を遮る形で相槌を打ってしまった。俺があわあわと焦っていると、彼女はまた笑った。そして、
「本当かどうかはわからないんだけどね…その子、死ぬ直前、体が透けて見えたらしい…」
そう言われて俺は黙ってしまった。なんと返事をしたらいいのかわからなくなってしまった。相槌の打ち方がわからない。
(嘘っぽいなぁ…)
そう思っていても、俺は口には出さなかった。
俺が喋らなかったのを察したのか、彼女は
「変なこと話しちゃってごめんね…気にしなくていいからね」
と言って、資料探しに戻って行った。
なんだか悪いことをしてしまった気持ちでいっぱいになる。
(気の利いたこと一つできないからなぁ……)
俺はさっきの自分の態度を後悔した。なぜだか、そんな態度をとってはいけない気がしてきたのだ。
「日野さん、今日調べたことは後日まとめるってことで」
俺がそう言うと、日野さんは頷いた。
俺は図書室をきれいに片付け、帰ろうとする。すると、日野さんが突っ込んできた。
「ごめんね。あと……私のことは朱音でいいよ」
少し顔を赤ながらそう言った彼女は図書室を出て行った。
俺は図書室の施錠をしっかりする。
「朱音……」
俺が呟くと、心の中に何かがすとんと落ちてきた。



