「今、ちょっと時間ある?」
「四宮くん?ここにいるの珍しいね」
「うん、瑞季探してた」
「え、俺?」
意外さに、少しだけ間が空く。
「紫苑と仲良かったよね?最近あいつ昼休みのたびに消えるから、彼女できたのかって思ってたんだけど、何か聞いてない?何にも教えてくれないんだよ」
——彼女。
その一言が、やけに強く引っかかった。
彼女……?
喉の奥が、ひりつく。
榎本が、誰かに笑いかける。誰かの隣にいる。
俺以外の誰かの。
その光景が、勝手に浮かんで胸の奥がざわついた。
……やだ
理由なんて考える前に、感情だけが先に出る。
「瑞季?」
手が伸びてくる。反射的に、少しだけ身体が強張る。
触れられる——その直前。
パシッ
乾いた音が、空気を裂いた。
視線を上げると、榎本が四宮くんのてを掴んでいた。
「え、榎本…?」
「こいつ借りてく」
「え!?は!?ちょっと!」
榎本は俺の手を掴んで、ズンズンと進んでいく。掴まれる力が強くて、少し痛い。人通りの少ない校舎の裏まで来ると、榎本は足を止めた。
「榎本、ちょっと、何」
言い終わる前に、強く引き寄せられた。視界が揺れる。次の瞬間、胸にぶつかって、そのまま強く抱きしめられた。
「好きだ」
すぐ耳元で、低く落ちる声。
「……へ?」
「ずっと好きだった。楓じゃなくて、俺を選んで」
まっすぐな言葉に思わず全身の熱が顔に集まった。それと同時に、どくどくと心臓がこれまでにないくらい速く波打つのを感じる。
俺、いつの間にか榎本のこと好きになってたんだ。
強く抱きしめられ過ぎて苦しい。榎本の胸の音が聞こえる。俺と同じくらい、速い。
ふと、俺を抱きしめる榎本の手震えてるのに気づいた。俺は、ぎゅっと制服を握り返した。
「…ッ」
「俺も」
その一言で、抱きしめる力が少しだけ緩んだ。距離が、ほんの少しだけ空く。
続きの言葉を待つように、ゆっくりと榎本と視線が交わった。
緊張で声が震える。
「俺も榎本が好き。……隣にいるのは、俺がいい」
言葉にした瞬間、ずっと引っかかっていたものが形を持ったみたいに、胸の奥がすとんと落ち着いた。
榎本の顔がわかりやすく赤くなる。もう一度、意を決して言葉を紡いだ。
「俺と付き合ってください」
「うん、もちろん!」
弾んだ声と共に、潰れそうになるくらい強く抱きしめられた。
「えのもと、ぐるじい…」
「ごめん、つい」
名残惜しそうに、腕が離れる。
そのとき、視線の端に引っかかった。榎本のポケットから覗く、小さなキーホルダー。
「なぁ、それ」
俺の視線の先がキーホルダーであることに気づき、それを見せてくれる。
やっぱり以前どこかで……
「あ!去年、教室で拾った…」
可愛らしいキーホルダーだったから、記憶に残ってた。あの時、拾ったキーホルダーを届けた相手が、榎本だったのか。
「クラス替えの前から俺のこと知ってた?」
かあと榎本の顔が赤くなるのに気づいた。
「ずっと好きだった」という言葉が、頭の中で繋がる。ということは、もしかして…____
「めっちゃ俺のこと好き、じゃん」
「悪いか……」
そっぽを向くその仕草が、妙に可愛く見えた。
ああ、もう。こんな顔もするなんて。
「サイネリア、発芽してたぞ」
今度は、俺から手を取る。逃げられないように、少しだけ強く。
「見に行こうぜ、ほら」
俺は榎本の手を引いて歩き出した。
「うん」
照れ臭くて、顔は見れなかった。握り返された手がやけに熱かった。
この手を離したくない、そう強く思った。
「四宮くん?ここにいるの珍しいね」
「うん、瑞季探してた」
「え、俺?」
意外さに、少しだけ間が空く。
「紫苑と仲良かったよね?最近あいつ昼休みのたびに消えるから、彼女できたのかって思ってたんだけど、何か聞いてない?何にも教えてくれないんだよ」
——彼女。
その一言が、やけに強く引っかかった。
彼女……?
喉の奥が、ひりつく。
榎本が、誰かに笑いかける。誰かの隣にいる。
俺以外の誰かの。
その光景が、勝手に浮かんで胸の奥がざわついた。
……やだ
理由なんて考える前に、感情だけが先に出る。
「瑞季?」
手が伸びてくる。反射的に、少しだけ身体が強張る。
触れられる——その直前。
パシッ
乾いた音が、空気を裂いた。
視線を上げると、榎本が四宮くんのてを掴んでいた。
「え、榎本…?」
「こいつ借りてく」
「え!?は!?ちょっと!」
榎本は俺の手を掴んで、ズンズンと進んでいく。掴まれる力が強くて、少し痛い。人通りの少ない校舎の裏まで来ると、榎本は足を止めた。
「榎本、ちょっと、何」
言い終わる前に、強く引き寄せられた。視界が揺れる。次の瞬間、胸にぶつかって、そのまま強く抱きしめられた。
「好きだ」
すぐ耳元で、低く落ちる声。
「……へ?」
「ずっと好きだった。楓じゃなくて、俺を選んで」
まっすぐな言葉に思わず全身の熱が顔に集まった。それと同時に、どくどくと心臓がこれまでにないくらい速く波打つのを感じる。
俺、いつの間にか榎本のこと好きになってたんだ。
強く抱きしめられ過ぎて苦しい。榎本の胸の音が聞こえる。俺と同じくらい、速い。
ふと、俺を抱きしめる榎本の手震えてるのに気づいた。俺は、ぎゅっと制服を握り返した。
「…ッ」
「俺も」
その一言で、抱きしめる力が少しだけ緩んだ。距離が、ほんの少しだけ空く。
続きの言葉を待つように、ゆっくりと榎本と視線が交わった。
緊張で声が震える。
「俺も榎本が好き。……隣にいるのは、俺がいい」
言葉にした瞬間、ずっと引っかかっていたものが形を持ったみたいに、胸の奥がすとんと落ち着いた。
榎本の顔がわかりやすく赤くなる。もう一度、意を決して言葉を紡いだ。
「俺と付き合ってください」
「うん、もちろん!」
弾んだ声と共に、潰れそうになるくらい強く抱きしめられた。
「えのもと、ぐるじい…」
「ごめん、つい」
名残惜しそうに、腕が離れる。
そのとき、視線の端に引っかかった。榎本のポケットから覗く、小さなキーホルダー。
「なぁ、それ」
俺の視線の先がキーホルダーであることに気づき、それを見せてくれる。
やっぱり以前どこかで……
「あ!去年、教室で拾った…」
可愛らしいキーホルダーだったから、記憶に残ってた。あの時、拾ったキーホルダーを届けた相手が、榎本だったのか。
「クラス替えの前から俺のこと知ってた?」
かあと榎本の顔が赤くなるのに気づいた。
「ずっと好きだった」という言葉が、頭の中で繋がる。ということは、もしかして…____
「めっちゃ俺のこと好き、じゃん」
「悪いか……」
そっぽを向くその仕草が、妙に可愛く見えた。
ああ、もう。こんな顔もするなんて。
「サイネリア、発芽してたぞ」
今度は、俺から手を取る。逃げられないように、少しだけ強く。
「見に行こうぜ、ほら」
俺は榎本の手を引いて歩き出した。
「うん」
照れ臭くて、顔は見れなかった。握り返された手がやけに熱かった。
この手を離したくない、そう強く思った。
