今なんて言った?
イジメられている弱っちいあいつが……魔王って呼ばれているだと?
「待て待て待て待て!なんで魔王なんだ!?」
「だから、魔王は呪いで、たくさんの――」
「あんなに雑魚じゃない!訂正しろ!」
「そんなに怒らないでよ!私が名付けたわけじゃないし!」
「じゃ誰だよ?あいつのことを魔王って名付けたバカは?」
「分かんないわよ!」
ふざけるなよ。俺が魔王だぞ。
あんな雑魚3人組にやられているやつが魔王なんて風評被害も甚だしいぞ。
俺はむむむっと怒りを感じながら、床に倒れたまま動かない茶髪ショートカットの女を睨む。
立て!
魔王と呼ばれているなら立ち上がって、人間など抹殺してみせろ!
「おいおい!俺が憎たらしいだろ?ムカつくだろ?ほらほら俺を呪ってみろよ!」
男たちは挑発するが、女は何もせず、ただ床に伏せているだけだ。
それを見た男たちは嘲笑う。
「俺はまだピンピンしているぜ!ぎゃははははっ!魔王も大したことないな」
はぁ?
「ていうか、本物の魔王って、ほんとにスゴいやつだったのか?」
「案外雑魚だったんじゃないか?全人類が恐れたとか言われているけど、結局勇者に殺されたしよ」
「俺さ、一回街中で勇者を見たんだけど、なんか金髪の姉ちゃんに殴られていたぜ。それでしばらくのびてた」
「はははっ!女に負けるのかよ。勇者ダサすぎるだろ!」
「英雄ってチヤホヤされている割に、なんかパッとしないおっさんだったな。フツーに勝てそうだったし」
「えーマジかよ。じゃあその勇者に負けた魔王って、めっちゃくちゃ弱かったんじゃね?」
「ははっ! だな! そうだ、今度俺たちで勇者を袋叩きにしてボコボコにしてみようぜ。女にやられるぐらいなら俺たちでも楽勝だろ?」
「お、いいね~」
俺は男たちの馬鹿げた会話を聞きながら、体がカッと熱くなるのを感じた。
ふざけるな。
魔王が雑魚だと? めっちゃくちゃ弱いだと?
怒りで顔が真っ赤に染まっていく。
いくらイジメをしてもいい。勇者をバカにしてもいい
だが、人間風情が魔王を茶化すことだけは、絶対に許さんぞ。
「貴様らぁぁぁぁぁぁ!」
気づけば俺の身体は動いていた。
叫びながら奴らに向かって走ると、「うお!なんだよ!」と驚いたようにこちらを見た。
地面を全力で蹴り、一直線に飛び込んで、男の一人に飛び蹴りを叩き込んだ。
「ぐわっ!」
男は一撃で吹き飛び、勢い余って床を転がっていく。しかしそれだけでは俺の怒りは収まらなかった。
俺は立て続けに次の標的に向かって攻撃を繰り出す。
「小さき雷よ、我が命じるままに閃け……雷弾!」
手を広げ、詠唱する。
バチンッという乾いた音とともに、青白い稲妻が手のひらから放たれた。
「ぎゃあああああっ!」
稲妻が腕に直撃した瞬間、男はビリビリと震えてその場に崩れ落ちる。
手に残る電気の残響を感じながら、俺は息をついた。
だがまだ終わっていない。
最後の一人が怯えた目で後ずさりしていた。
「お、お前は勇者の息子っ!?」
「貴様らの罪はデカいぞ!」
魔王という偉大な存在を侮辱した罪がな。
「お前! 俺ら天翔組だぞ。お前より年上なんだぞ! 喧嘩売って、どうなるか分かってるんだろうな!?」
「知ったことか」
震えた声に、俺は冷たく返す。
「な、なら教えてやる! 俺らに喧嘩を売ったら、俺たちの仲間が——」
「小さき雷よ」
「お前を襲って……き……て」
「我が命じるままに閃け」
「やめてぇぇぇぇ! 俺、痛いの苦手だから! お前のパパをバカにしたことは謝るから許してぇぇぇ!」
俺に向かって土下座をするが、無視する。
「雷弾」と言いかけた途端、
「す、すみません、こいつバカなんです! ほんとに!」
ノノが俺の頭を叩き、必死に頭を下げている。
「何するんだ!? こっちはコイツを痛ぶるので忙しいんだよ!」
「邪魔するな」と怒鳴るが、ノノは「バカバカバカ」と俺の頭を何度も引っ叩く。
「本当にこいつの仲間が襲ってきたらどうするのよ?」
「そんなの倒せばいいだろ」
「できるわけないでしょ!天翔組なのよ!少しは考えてから行動しなさいよ!脳みそクルミくらいの大きさしかないんじゃない!?」
「はぁ!?俺の脳みそは銀河より大きいわ!なんで貴様はこんな雑魚にペコペコしてるんだ?だからお前は小物なんだよ!」
「なんですって!苗木枯らしたくせに!」
俺とノノは言い争いになる。やはりこいつとは本当に馬が合わない。
互いに睨み合っていると、その隙に「ひぃぃぃぃぃ!」と男が逃走した。
「おい! どこへ行く! 逃がさんぞ!」
追いかけようとするが、「やめなさい!」とノノが羽交い締めにして追跡の邪魔をする。
相手は逃げ足が速く、見失ってしまった。
くそ……仕留め損ねた。小物め、許さんぞ。
ノノを睨んでいると、ノノは床に倒れている茶髪ショートカットの女に手を差し伸べていた。
「大丈夫?……リルエットさん」
リルエット。どうやらこいつの名前らしい。
ノノの問いかけに、リルエットはこくりと頷いた。
「ありがとう……」
ゆったりとした口調で感謝する。
「お礼を言うなら私じゃないわ。ユウにしたら?」
「私何もしてないし」と言いながら、ノノは俺のほうを指差した。
するとリルエットがじぃーと俺を見つめてくる。俺もこいつのことをじっくり観察した。
肩まで伸びた茶髪はショートカットで、毛先がくるりと巻いている。髪と同じ色の瞳は瞼が少し落ちていて、なんだか眠たそうだ。
どこにでもいる普通の女で、美形で完璧な体躯を持つ魔王とは程遠い。
「ありがとう……ユウ君」
「勘違いするな。別にお前を助けたわけじゃない」
人間に感謝されるなんて不快だ。
「カッコつけちゃって。素直に『どういたしまして』とか言えないの?」
ノノはやれやれと肩をすくめながらため息をついた。
「俺たちには関係ないって言っておきながら、結局助けたじゃない?」
「何度も言わせるな。助けたんじゃなくて、イライラしたからあいつらを殴っただけだ」
「はいはい、そういうことにしてあげるわ」
「素直じゃないね~」とノノがからかっていると、足音が近づいてくる。そして背後から話しかけられた。
「お前ら! 何をしているんだ?」
振り向くと教師が立っていた。顔には明らかな不機嫌さが浮かんでいる。
周りには床に転がっている雑魚二人。
俺とノノは一瞬で状況を理解した。
ここで捕まればまた怒られる。これ以上面倒事は避けたいところだ。
「やばっ!ユウ、逃げるよ! リルエットさんも」
「お、おい」
ノノが焦った様子で俺とリルエットの腕を引っ張り、走り出した。意外に力が強く、俺はノノに引きずられながらその場を逃げ出した。
「あ、こら! 待ちなさい!」
「捕まったらまた怒られるわ! これ以上私の評価を落としてたまるもんですか!」
教師の呼び止めを無視して、俺たちは廊下を走る。
……あ、「俺が魔王だ」ってイジメっ子に言えばよかった。
イジメられている弱っちいあいつが……魔王って呼ばれているだと?
「待て待て待て待て!なんで魔王なんだ!?」
「だから、魔王は呪いで、たくさんの――」
「あんなに雑魚じゃない!訂正しろ!」
「そんなに怒らないでよ!私が名付けたわけじゃないし!」
「じゃ誰だよ?あいつのことを魔王って名付けたバカは?」
「分かんないわよ!」
ふざけるなよ。俺が魔王だぞ。
あんな雑魚3人組にやられているやつが魔王なんて風評被害も甚だしいぞ。
俺はむむむっと怒りを感じながら、床に倒れたまま動かない茶髪ショートカットの女を睨む。
立て!
魔王と呼ばれているなら立ち上がって、人間など抹殺してみせろ!
「おいおい!俺が憎たらしいだろ?ムカつくだろ?ほらほら俺を呪ってみろよ!」
男たちは挑発するが、女は何もせず、ただ床に伏せているだけだ。
それを見た男たちは嘲笑う。
「俺はまだピンピンしているぜ!ぎゃははははっ!魔王も大したことないな」
はぁ?
「ていうか、本物の魔王って、ほんとにスゴいやつだったのか?」
「案外雑魚だったんじゃないか?全人類が恐れたとか言われているけど、結局勇者に殺されたしよ」
「俺さ、一回街中で勇者を見たんだけど、なんか金髪の姉ちゃんに殴られていたぜ。それでしばらくのびてた」
「はははっ!女に負けるのかよ。勇者ダサすぎるだろ!」
「英雄ってチヤホヤされている割に、なんかパッとしないおっさんだったな。フツーに勝てそうだったし」
「えーマジかよ。じゃあその勇者に負けた魔王って、めっちゃくちゃ弱かったんじゃね?」
「ははっ! だな! そうだ、今度俺たちで勇者を袋叩きにしてボコボコにしてみようぜ。女にやられるぐらいなら俺たちでも楽勝だろ?」
「お、いいね~」
俺は男たちの馬鹿げた会話を聞きながら、体がカッと熱くなるのを感じた。
ふざけるな。
魔王が雑魚だと? めっちゃくちゃ弱いだと?
怒りで顔が真っ赤に染まっていく。
いくらイジメをしてもいい。勇者をバカにしてもいい
だが、人間風情が魔王を茶化すことだけは、絶対に許さんぞ。
「貴様らぁぁぁぁぁぁ!」
気づけば俺の身体は動いていた。
叫びながら奴らに向かって走ると、「うお!なんだよ!」と驚いたようにこちらを見た。
地面を全力で蹴り、一直線に飛び込んで、男の一人に飛び蹴りを叩き込んだ。
「ぐわっ!」
男は一撃で吹き飛び、勢い余って床を転がっていく。しかしそれだけでは俺の怒りは収まらなかった。
俺は立て続けに次の標的に向かって攻撃を繰り出す。
「小さき雷よ、我が命じるままに閃け……雷弾!」
手を広げ、詠唱する。
バチンッという乾いた音とともに、青白い稲妻が手のひらから放たれた。
「ぎゃあああああっ!」
稲妻が腕に直撃した瞬間、男はビリビリと震えてその場に崩れ落ちる。
手に残る電気の残響を感じながら、俺は息をついた。
だがまだ終わっていない。
最後の一人が怯えた目で後ずさりしていた。
「お、お前は勇者の息子っ!?」
「貴様らの罪はデカいぞ!」
魔王という偉大な存在を侮辱した罪がな。
「お前! 俺ら天翔組だぞ。お前より年上なんだぞ! 喧嘩売って、どうなるか分かってるんだろうな!?」
「知ったことか」
震えた声に、俺は冷たく返す。
「な、なら教えてやる! 俺らに喧嘩を売ったら、俺たちの仲間が——」
「小さき雷よ」
「お前を襲って……き……て」
「我が命じるままに閃け」
「やめてぇぇぇぇ! 俺、痛いの苦手だから! お前のパパをバカにしたことは謝るから許してぇぇぇ!」
俺に向かって土下座をするが、無視する。
「雷弾」と言いかけた途端、
「す、すみません、こいつバカなんです! ほんとに!」
ノノが俺の頭を叩き、必死に頭を下げている。
「何するんだ!? こっちはコイツを痛ぶるので忙しいんだよ!」
「邪魔するな」と怒鳴るが、ノノは「バカバカバカ」と俺の頭を何度も引っ叩く。
「本当にこいつの仲間が襲ってきたらどうするのよ?」
「そんなの倒せばいいだろ」
「できるわけないでしょ!天翔組なのよ!少しは考えてから行動しなさいよ!脳みそクルミくらいの大きさしかないんじゃない!?」
「はぁ!?俺の脳みそは銀河より大きいわ!なんで貴様はこんな雑魚にペコペコしてるんだ?だからお前は小物なんだよ!」
「なんですって!苗木枯らしたくせに!」
俺とノノは言い争いになる。やはりこいつとは本当に馬が合わない。
互いに睨み合っていると、その隙に「ひぃぃぃぃぃ!」と男が逃走した。
「おい! どこへ行く! 逃がさんぞ!」
追いかけようとするが、「やめなさい!」とノノが羽交い締めにして追跡の邪魔をする。
相手は逃げ足が速く、見失ってしまった。
くそ……仕留め損ねた。小物め、許さんぞ。
ノノを睨んでいると、ノノは床に倒れている茶髪ショートカットの女に手を差し伸べていた。
「大丈夫?……リルエットさん」
リルエット。どうやらこいつの名前らしい。
ノノの問いかけに、リルエットはこくりと頷いた。
「ありがとう……」
ゆったりとした口調で感謝する。
「お礼を言うなら私じゃないわ。ユウにしたら?」
「私何もしてないし」と言いながら、ノノは俺のほうを指差した。
するとリルエットがじぃーと俺を見つめてくる。俺もこいつのことをじっくり観察した。
肩まで伸びた茶髪はショートカットで、毛先がくるりと巻いている。髪と同じ色の瞳は瞼が少し落ちていて、なんだか眠たそうだ。
どこにでもいる普通の女で、美形で完璧な体躯を持つ魔王とは程遠い。
「ありがとう……ユウ君」
「勘違いするな。別にお前を助けたわけじゃない」
人間に感謝されるなんて不快だ。
「カッコつけちゃって。素直に『どういたしまして』とか言えないの?」
ノノはやれやれと肩をすくめながらため息をついた。
「俺たちには関係ないって言っておきながら、結局助けたじゃない?」
「何度も言わせるな。助けたんじゃなくて、イライラしたからあいつらを殴っただけだ」
「はいはい、そういうことにしてあげるわ」
「素直じゃないね~」とノノがからかっていると、足音が近づいてくる。そして背後から話しかけられた。
「お前ら! 何をしているんだ?」
振り向くと教師が立っていた。顔には明らかな不機嫌さが浮かんでいる。
周りには床に転がっている雑魚二人。
俺とノノは一瞬で状況を理解した。
ここで捕まればまた怒られる。これ以上面倒事は避けたいところだ。
「やばっ!ユウ、逃げるよ! リルエットさんも」
「お、おい」
ノノが焦った様子で俺とリルエットの腕を引っ張り、走り出した。意外に力が強く、俺はノノに引きずられながらその場を逃げ出した。
「あ、こら! 待ちなさい!」
「捕まったらまた怒られるわ! これ以上私の評価を落としてたまるもんですか!」
教師の呼び止めを無視して、俺たちは廊下を走る。
……あ、「俺が魔王だ」ってイジメっ子に言えばよかった。
