身支度に時間がかかったせいで教室に着くのがいつもより遅くなった。
何食わぬ顔で教室に入ったけれど、本当は「誰かに大智のネクタイだって気付かれたらどうしよう」とドキドキだった。
「おはよー」
「おはよ!」
「お、来た来た」
オレが席に着くと、木下と小原がオレのところに集まってきた。
「あれからどうした?」
「どうしたって?」
「ほら、央位の」
小原に聞かれて、オレはようやく思い出した。
そうだ、オレは大智がオレを好きなのかもしれないと悩んでいたんだった……!
「その顔は今まで忘れてたな?」
「あはは……」
笑ってごまかそうとすると、昨日オレの話に付き合ってくれた小原と木下は呆れ顔になった。
「なんか、大智は恋愛に興味ないっぽい」
「へえ」
「モテそうなのに、もったいねぇ~」
「だよな。恋人が欲しいオレとしては恋愛はいいぞって力説したいところなんだけどうまくできなくてさ」
「年齢イコール彼女いない歴だもんな」
「仕方ない仕方ない」
「おいっ! それは二人も同じだろ!」
「いいや、そうとは限らない」
木下はそう言って、なぜか余裕の笑みを浮かべた。
「は? 木下まさか彼女できたの!?」
オレが尋ねると数人のクラスメイトが振り返った。わかるぞ、その気持ち。恋人が欲しい気持ちと同じぐらい、他人の恋バナが気になる。そういうお年頃だ。
「美女高とナツる約束を取り付けた」
「えっ」
「マジで! すげえ」
オレより先に教室に来ていた小原もその話は初耳だったようで、オレの机に手を乗せて飛び跳ねている。
美女高というのは美山女子高校の略称だ。
制服が可愛くて偏差値が高いことで有名な中高一貫の女子高で、開久高校の最寄り駅から三駅離れたところに校舎がある。
そういえば、バイト先の本屋に美女高の二年生が入ったという話を少し前に木下から聞いた気がする。
「もしかして、バイト先の子を誘えたのか!?」
小原も同じ話を思い出したようだった。
「そうなんだよ! 向こうは友だちと三人で来るって。行くだろ?」
「当たり前だろ! なあ、佐野!」
「えっ、あ、うん」
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいよ! 急展開すぎて頭が追いつかなかった、ハハハ……」
なんでこのタイミングで誘われるんだ!?
オレの頭に浮かんだのは嬉しそうにネクタイを受け取った大智の顔だった。
内心で頭を抱えながら木下たちの話に相槌を打っていると、上履きの足音が聞こえて来た。
廊下を見ると、朝練を終えたスポーツクラスの生徒が教室に向かっていた。
その中には武田、藤井、南と一緒に歩いている大智の姿があった。
大智は教室の中にオレを見つけると、満面の笑みで手を振ってからネクタイを指さした。
オレも手を振り返したけれど、笑顔は完全に引き攣っていたと思う。
何食わぬ顔で教室に入ったけれど、本当は「誰かに大智のネクタイだって気付かれたらどうしよう」とドキドキだった。
「おはよー」
「おはよ!」
「お、来た来た」
オレが席に着くと、木下と小原がオレのところに集まってきた。
「あれからどうした?」
「どうしたって?」
「ほら、央位の」
小原に聞かれて、オレはようやく思い出した。
そうだ、オレは大智がオレを好きなのかもしれないと悩んでいたんだった……!
「その顔は今まで忘れてたな?」
「あはは……」
笑ってごまかそうとすると、昨日オレの話に付き合ってくれた小原と木下は呆れ顔になった。
「なんか、大智は恋愛に興味ないっぽい」
「へえ」
「モテそうなのに、もったいねぇ~」
「だよな。恋人が欲しいオレとしては恋愛はいいぞって力説したいところなんだけどうまくできなくてさ」
「年齢イコール彼女いない歴だもんな」
「仕方ない仕方ない」
「おいっ! それは二人も同じだろ!」
「いいや、そうとは限らない」
木下はそう言って、なぜか余裕の笑みを浮かべた。
「は? 木下まさか彼女できたの!?」
オレが尋ねると数人のクラスメイトが振り返った。わかるぞ、その気持ち。恋人が欲しい気持ちと同じぐらい、他人の恋バナが気になる。そういうお年頃だ。
「美女高とナツる約束を取り付けた」
「えっ」
「マジで! すげえ」
オレより先に教室に来ていた小原もその話は初耳だったようで、オレの机に手を乗せて飛び跳ねている。
美女高というのは美山女子高校の略称だ。
制服が可愛くて偏差値が高いことで有名な中高一貫の女子高で、開久高校の最寄り駅から三駅離れたところに校舎がある。
そういえば、バイト先の本屋に美女高の二年生が入ったという話を少し前に木下から聞いた気がする。
「もしかして、バイト先の子を誘えたのか!?」
小原も同じ話を思い出したようだった。
「そうなんだよ! 向こうは友だちと三人で来るって。行くだろ?」
「当たり前だろ! なあ、佐野!」
「えっ、あ、うん」
「なんだよ、嬉しくないのか?」
「嬉しいよ! 急展開すぎて頭が追いつかなかった、ハハハ……」
なんでこのタイミングで誘われるんだ!?
オレの頭に浮かんだのは嬉しそうにネクタイを受け取った大智の顔だった。
内心で頭を抱えながら木下たちの話に相槌を打っていると、上履きの足音が聞こえて来た。
廊下を見ると、朝練を終えたスポーツクラスの生徒が教室に向かっていた。
その中には武田、藤井、南と一緒に歩いている大智の姿があった。
大智は教室の中にオレを見つけると、満面の笑みで手を振ってからネクタイを指さした。
オレも手を振り返したけれど、笑顔は完全に引き攣っていたと思う。
