その夜、オレはなかなか寝付けなかった。
大智との恋人ごっこのことを考えていたからだ。
サッカーの大事な試合の前日みたいだなと思った。
ドキドキワクワクのワクワクがドキドキにギリで勝っている感じで、そこも試合前とよく似ていた。
隣から大智が寝返りを打つ音が聞こえて、もしかして大智も眠れないのかなと思ったけれど声を掛けることはしなかった。
翌朝も大智の音で目が覚めた。
ベッドから起き上がり、隣の部屋で朝練の支度をしている背中に「おはよ」と声を掛けると、練習着を着た大智が振り返った。
「おはよ、朝陽」
大智はまるで毎朝そうしていたかのようにオレを抱き寄せて、オレの心臓はウサギのように飛び跳ねた。
「起こしちゃった?」
「う、ううん、起きたかったから起きただけ」
オレも負けじと大智の腰に腕を回す。
大智は相変わらずオレに向かって微笑んでいたけれど、腰がきゅっと引き締まったのを練習着の薄い布越しに感じた。
「明日から遠征だっけ?」
「うん、だから今日は放課後の練習がないんだ。朝陽と一緒にいられる」
大智の言いそうなことなのに、今日はやけに甘く聞こえた。
負けず嫌いなオレは、大智をそんな風にさせたいと思った。
「昨日の夜、恋人っぽいことってなんだろうなぁって考えてみたんだけどさ」
「何か思いついた?」
「うん……制服のネクタイ交換するのはどう?」
小首を傾げてねだると大智の表情がピシッと固まった。
さすがにあざとすぎたか?
「嫌なら別のことに……」
不安になってそう言うと、大智にガッチリ肩を掴まれた。
「全然嫌じゃないよ、朝陽が天才すぎて頭が真っ白になっただけ。ネクタイ交換するとか最高だね。待って、すぐ出すから」
大智はその場にしゃがみ込み、リュックの中を漁り出した。
「オレもとってくる」
勉強机の横にあるハンガーラックの前に立ち、制服が掛けてあるハンガーからネクタイだけを引っ張ると、布と布が擦れる音がした。
「はい、交換」
オレが差し出したネクタイを大智が受け取り、オレも大智の手からネクタイを受け取った。
「……これはかなり恋人っぽいね」
「だろ?」
大智の反応はオレをいい気にさせた。
そうこうしているうちに大智が練習に行く時間になっていた。
「練習頑張って」
「うん」
大智はリュックを手に持つと、玄関で靴を履いた。
ドアを開けて、自然な様子でオレを振り返った。
「大好きだよ、朝陽」
何か言い返そうと思ったけれど、オレが何も言えないうちにドアは閉まっていた。
「そ、それは反則だろ……」
オレはその場にしゃがみ込んで悶えた。
後半アディショナルで一点を決めらた気分だった。
頬の熱が治まるのを待ってから食堂に行って朝食を食べた。
共有の洗面所で歯磨き顔洗いをしてから自分の部屋に戻り、制服に着替える。
毎日のルーティーンなのに、今日はなんだかフワフワして落ち着かなかった。
最後の仕上げにネクタイを手に取ると大智の「大好きだよ」を思い出してしまい、オレは春を迎えた雪だるまのように崩れ落ちた。
床にうずくまったままネクタイを結ぼうとしたが、上手くできなくて三回も結び直した。
交換したと言っても同じデザイン、同じ材質のネクタイなのに。
多分、ほのかに大智の匂いがしたせいだ。
大智もオレの匂いに気が付いたりしたのかな。
朝練が終わって部室で着替える時に、リュックから取り出したネクタイが自分のじゃないことに気が付いて落ち着かない気持ちになって欲しい。
それをチームメイトに悟られないように表情を無にしてネクタイを締める大智を想像すると、なんだか甘酸っぱい気分になった。
大智との恋人ごっこのことを考えていたからだ。
サッカーの大事な試合の前日みたいだなと思った。
ドキドキワクワクのワクワクがドキドキにギリで勝っている感じで、そこも試合前とよく似ていた。
隣から大智が寝返りを打つ音が聞こえて、もしかして大智も眠れないのかなと思ったけれど声を掛けることはしなかった。
翌朝も大智の音で目が覚めた。
ベッドから起き上がり、隣の部屋で朝練の支度をしている背中に「おはよ」と声を掛けると、練習着を着た大智が振り返った。
「おはよ、朝陽」
大智はまるで毎朝そうしていたかのようにオレを抱き寄せて、オレの心臓はウサギのように飛び跳ねた。
「起こしちゃった?」
「う、ううん、起きたかったから起きただけ」
オレも負けじと大智の腰に腕を回す。
大智は相変わらずオレに向かって微笑んでいたけれど、腰がきゅっと引き締まったのを練習着の薄い布越しに感じた。
「明日から遠征だっけ?」
「うん、だから今日は放課後の練習がないんだ。朝陽と一緒にいられる」
大智の言いそうなことなのに、今日はやけに甘く聞こえた。
負けず嫌いなオレは、大智をそんな風にさせたいと思った。
「昨日の夜、恋人っぽいことってなんだろうなぁって考えてみたんだけどさ」
「何か思いついた?」
「うん……制服のネクタイ交換するのはどう?」
小首を傾げてねだると大智の表情がピシッと固まった。
さすがにあざとすぎたか?
「嫌なら別のことに……」
不安になってそう言うと、大智にガッチリ肩を掴まれた。
「全然嫌じゃないよ、朝陽が天才すぎて頭が真っ白になっただけ。ネクタイ交換するとか最高だね。待って、すぐ出すから」
大智はその場にしゃがみ込み、リュックの中を漁り出した。
「オレもとってくる」
勉強机の横にあるハンガーラックの前に立ち、制服が掛けてあるハンガーからネクタイだけを引っ張ると、布と布が擦れる音がした。
「はい、交換」
オレが差し出したネクタイを大智が受け取り、オレも大智の手からネクタイを受け取った。
「……これはかなり恋人っぽいね」
「だろ?」
大智の反応はオレをいい気にさせた。
そうこうしているうちに大智が練習に行く時間になっていた。
「練習頑張って」
「うん」
大智はリュックを手に持つと、玄関で靴を履いた。
ドアを開けて、自然な様子でオレを振り返った。
「大好きだよ、朝陽」
何か言い返そうと思ったけれど、オレが何も言えないうちにドアは閉まっていた。
「そ、それは反則だろ……」
オレはその場にしゃがみ込んで悶えた。
後半アディショナルで一点を決めらた気分だった。
頬の熱が治まるのを待ってから食堂に行って朝食を食べた。
共有の洗面所で歯磨き顔洗いをしてから自分の部屋に戻り、制服に着替える。
毎日のルーティーンなのに、今日はなんだかフワフワして落ち着かなかった。
最後の仕上げにネクタイを手に取ると大智の「大好きだよ」を思い出してしまい、オレは春を迎えた雪だるまのように崩れ落ちた。
床にうずくまったままネクタイを結ぼうとしたが、上手くできなくて三回も結び直した。
交換したと言っても同じデザイン、同じ材質のネクタイなのに。
多分、ほのかに大智の匂いがしたせいだ。
大智もオレの匂いに気が付いたりしたのかな。
朝練が終わって部室で着替える時に、リュックから取り出したネクタイが自分のじゃないことに気が付いて落ち着かない気持ちになって欲しい。
それをチームメイトに悟られないように表情を無にしてネクタイを締める大智を想像すると、なんだか甘酸っぱい気分になった。
