ルームメイトの溺愛はちょっとズレてる

 その日の夜、オレはまた練習終わりの大智に呼び出された。
 今度は何だと思いつつ、スポーツクラスの寮に行くと、大智と武田がオレを待っていた。
「修学旅行のときに全員の言うことをひとつ聞くって約束したのは覚えてるよな?」
「わかってるから、早く用件を言え」
 またしても大智は椅子から足を放り出して、機嫌が悪いのを全身で表現している。
 修学旅行でオレと大智が付き合えたのは三人のお陰でもあるから、大智は「言うことを聞く」と約束したわけだが、約束した日にそれを使った南、のっぴきならない状況で使った藤井、今日までとっておいた武田。それぞれに性格が出ている。
 武田は一体、大智にどんなことをさせるのだろう。聞くのが、ちょっと怖い。オレが呼ばれているということはオレも関係あるのは間違いないからだ。
「央位、来年度からスポーツクラスの寮に移ってこい」
「わかった」
 大智はあっさりと了承した。
 話を切り出した武田のほうが驚いていた。大智がゴネると思っていたのだろう。
「話はそれだけか?」
「あ、ああ」
「帰ろう、朝陽」
「うん……」
 オレも武田と同じぐらい驚いていたけれど、顔に出ないように堪えた。
 それがいいとわかっているから。
 本来なら二年でスポーツクラスに転入した時点で、大智は寮を移るべきだった。
 当時は引越しを面倒くさがっているのだと思っていたけど、多分その頃からオレを好きだった。
 オレと離れたくなくて引っ越さなかったのに、来年からは別の寮に行くという。
 それをどう捉えたらいいか、わからなかった。
「朝陽は?」
「えっ?」
「オレにして欲しいことある?」
「ええ? なんだよ、急に」
「俺、朝陽の言うことなら何個でも聞くよ」
 これは……引き止めて欲しいのだろうか。
 それなら武田に「嫌だ」と言えばよかったのに。
 大智の考えていることがわからない。
 一緒の部屋で暮らしててもわからないなら、離れたらもっとわからなくなるだろう。
「考えておく」
「うん」
 そもそも三年になったら大智とオレは別々の部屋になる。
 受験勉強に専念するために寮は個室になり、学校のイベントにも参加できない。
 つまり、今年が最後の文化祭になる。