ルームメイトの溺愛はちょっとズレてる

 木下たちと別れて寮に帰り、風呂や食事を済ませて勉強していると大智も部屋に帰って来た。
「ただいま、朝陽」
「おかえり、お疲れ様」
 ハグをすると大智から化粧水の匂いがした。
 遠征前にオレがあげたのを気に入ったようで、大智はその後も同じのを買って使ってくれている。
 部屋着もオレが買ってきたネイビーのTシャルだった。
 オレが選んだものが大智を彩っているのが嬉しい。
「今日、練習を見に来てくれたんだね」
「うん。体育でサッカーしたら木下がサッカーに興味持ってくれたんだ」
「なんだ、朝陽が見たかったからじゃないのか」
 大智はわかりやすく拗ねた顔になった。
「オレも見たかったから一緒に行ったんだよ」
「本当に? じゃあ試合も見に来てよ」
「いいの? 恋人が見に来てるのに負けるとか結構ツラくない?」
 わざと意地悪を言うと、大智は「ふっ」と鼻で笑った。
「煽るじゃん」
「ははは、冗談だよ」
「許さない。このままベッドに連れてく」
 そう言うと大智はオレを軽々と抱き上げて、本当に寝室のほうへと歩き出した。
「こ、こら、降ろせって!」
「キスしてくれたら降ろす」
「えっ、寮ではしないって言っただろ!」
「じゃあベッドまで連れて行く」
 大智の腕の中で抵抗したものの、あの逞しい筋肉はびくともしなかった。
 身長差があるとはいえ、同じ男でこの力の差は悔しい。
 大智はオレを優しくベッドにおろした。まさに『姫扱い』だ。
「キスしよ」
 大智に見つめられて、思わず「いいよ」と言いそうになった。
「ダ、ダメ」
「なんで」
「それ以上がしたくなるから……」
「大丈夫だよ、我慢できるって」
 大智の唇があと一センチ動いたらキスしてしまいそうな距離で囁く。
「そこまで言うならヤッてみよう」
「えっ」
 一瞬、大智が固まった。
 そのタイミングで、オレは大智の足に挟まれていた太ももを引き抜き、逆にオレの足で大智の厚い胴体を挟んだ。
「こっち来て、大智」
「えっ、朝陽……本気?」
 戸惑いながらも、大智は素直にオレのほうに体を近づけた。
「もっと腰、こっち」
「これ以上近づいたら……」
 オレは腰を引こうとする大智を足でガッチリ挟み、引き寄せた。
 オレのソコと大智のソコがくっつくぐらい、ぎゅうっと。
「この体勢で『待て』できる?」
「……できない」
「だろう? キスも同じだよ。キスだけって思っても、きっともっと先のことがしたくなる……だって好きだから」
 今まで出したことがない甘い声で言うと、大智が「うう」と唸った。
「キスは今度デートした時にしよう」
「デート……?」
「そう、デート。映画見てクレープ食べて最後に公園でキスするんだ」
「めちゃくちゃベタだね」
「いいだろ?」
「うん、すごくいい……」
 そう言って大智はオレに向かってぐいっと腰を付きだした。
「朝陽……」
「あっ、だめだって」
「大好き……朝陽……」
 抱きしめられながら何度も名前を呼ばれた。
 オレを見下ろす大智の視線は一途で、エロくて……このまま抱かれるんじゃないかと思った。
 密着している下半身は、どちらもそれを期待するように熱く固くなっていた。
「しないって決めたのは朝陽だよ」
 大智は意地悪な顔で笑っていた。